マニュアル その2

 今日は、久しぶりに家族でごはんを食べに行く。

と、言っても特別に豪勢なものを食べに行くわけではない。

日曜日のレジャーのひとつとして、家族でお昼ご飯を食べに行って、ついでに平日には滅多に行かれない郊外の大型ショッピングセンターに行ってぶらつく。

なんだったらついでに夕ご飯の食材を買って帰るのもあり。

そんなゆる~い計画だ。

 

 『どの店に行く』も『何を食べる』かも計画しないまま、お父さんが運転する車に乗り込む。

運転手は、お父さん。助手席はナビがわりのお母さん。

後ろの座席に、私とおばあちゃんが乗り込む。

出発前に、お父さんが聞いてきた。

「まり。今日は何が食べたい?」

「う~ん。まりはなんでもいいけど。あ、トンカツはイヤ」

先に言っておかないと、揚げ物大好きなお父さんはトンカツを提案してくるからね。

「そうか。ばあちゃんは何がいい?」

「わたし?わたしは、量が少ないならなんでも」

「まあ。残ったらおれが食うから、そこはいいか。お母さんは、なにがいい?」

「私も、なんでもいいかな。あ、麺類以外で。ゆうべスパゲティしたでしょ?」

「そうだったな。じゃあ…カレーか、寿司か…。ああ!ファミレスはどうだ?あそこなら色々あるぞ」

「あ!まり、ファミレス行きたい。ねえ、お母さんもおばあちゃんもいいよね?」

「わたしは、かまわないよ」

「私も」

そういう会話があって、今日のごはんはファミレスに食べに行くことにした。

 

 日曜日だから混んでいるかと思ったけれど、あまり待たずに席に案内してもらえた。

メニュー表をひらく。

この、メニュー表を見てるときって、わくわくするから好き。

(お母さんはああ言ってたけど、カルボナーラ美味しそうだな。こっちのグラタンも捨てがたいし。このよくばりプレートも美味しそう。迷っちゃうよ)

私が、あれこれ悩んでいる間に他のみんなはサクサク決めちゃってたみたい。

「お父さんは、なんにするの?」

「お父さんは、ダブルハンバーグのライスセット」

「おばあちゃんは?」

「わたしは、和定食にしたよ」

「ふうん。お母さんは?」

「私は、きのこドリアのサラダセット。まりは?決まったの?」

「う~ん。やっぱりよくばりプレートにする。パンのセットで」

「じゃあ、みんな決まったな。注文するぞ」

ピ・ンポーン

お父さんが、テーブルに備えつけの呼び出しボタンを押した。

 

『お待たせいたしました。ご注文を承ります』

やさしそうなお姉さんが、注文をうける機械を片手に私の近くに立った。

お父さんがメニュー表を広げて注文していく。

「まずは、このダブルハンバーグのセット」

『ダブルハンバーグのセットですね。セットはライスとパンがございますが、どちらにいたしましょう』

「ライスセットで。あ、大盛りでね」

『ダブルハンバーグのライスセット。ライス大盛りですね』

お姉さんが復唱していく。

「それと、和定食。ごはんは小盛で」

『和定食。ごはんは小盛ですね』

「それから、よくばりプレート、これはパンのセットで」

『よくばりプレートのパンセットですね』

 全部復唱していくのって、大変そうだな。

「あと、きのこドリア。サラダセットで」

『きのこドリアのサラダセットですね。セットはライスとパンどちらにいたしましょう?』



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