給食を食べる。
今回は食レポ回みたいな感じである。
教室にいる全員の下に給食が配膳され、食べるだけの状態になっている。
机を向かい合わせて、班を作り皆で食べ始めようとしているところだ。
机を向かい合わせたということは、俺と凛瑚は真正面に向かい合った状況で給食を食べようとしている。
まあ、毎日のことだから慣れたが、彼女の顔をこんなに真正面から堂々と向かい合って会話を交わしたり、食事を取るのは少し照れる。
『いただきます』
「いただきます」
全員で手を合わせて、「いただきます」の声掛けと共に食事が始まる。
今日の給食のメニュー
米飯
照り焼きハンバーグ
野菜炒め
スパゲッティサラダ
きのこのスープ
彼女は、まずスパゲッティサラダから食べ始める。
『ツルツルっ』
野菜を箸でつかみながら、同時にパスタを口に運ぶ。
野菜とパスタをまとめて小さく口の中で咀嚼する。
スパゲッティサラダを食べるのは一口でやめ、次に白米を小さく橋取って口元に運んでいく。
『パクリッ』
と、音は鳴っていなかったが、口に入れよく嚙んで飲み込んでいる。
野菜炒めに手をつけながら、ご飯を口に運んで、照り焼きハンバーグを箸の先を使って食べやすい大きさに切り分ける。
切り分けたら、しっかりと口の中にあった食べ物を飲み込んで、少し間を置きながら箸で切り分けたらハンバーグを口の方へ持ってくる。
『パクリッ』
と、ハンバーグを小さな口に放り込みながら、箸で白米を少量つかんで口の中に運ぶ。
口に運ぶ時には無言で丁寧に所作で食事に取り掛かる。表情はなんとも言えない無言の集中。
表情を変えずに食事を進める中、たまにみせる食事への感謝と喜びの綻び。
美しいとしか表現できない、と俺は評価する。
満足そうにハンバーグを口に頬張る姿がすごくかわいい。頬張ると言っても、頬が膨らむほどでなく、自分が食べられる少量を見極めてしっかりと口の中へ運ぶのだから上手い。
「ね、ねぇ、どうしたの?私になにかついてる?」
あまりにも彼女のことをじっと見つめてしまったために彼女に不信がられる。
「もしかして、ご飯粒がどこかについてるとか?」
彼女はそう言って自身の周りをキョロキョロと見渡して、汚れていないか確認する。
「いや、そういうわけじゃ…」
俺が彼女に興味があって、見つめてただけだから、君がドジをやらかしたらした訳じゃないんだ。
そんな時だった。
『ボタっ』
「あっ」
「あっ」
俺が箸でつまみ上げていた米粒の塊をズボンに落とした。
彼女ではなく、俺がやってしまった。
「大丈夫?」
目の前でそんなことが起きたのだから、彼女は俺に心配の声をかけてくれる。
心配されるようなことではないから、俺の表現は間違っているかもしれない。
「大丈夫、大丈夫。このくらいなら」
「ティッシュいる?」
「ティッシュは持って…あれ?」
あれ、おかしいな。朝は持ってたはずなのに。ポケットに入ってない…
「これ使っていいよ」
彼女はそう言って優しくティッシュを渡してくれた。
「ありがとう」
俺は一言お礼を言って一枚ティッシュをいただいて、ズボンに落ちた米粒の塊を掴み拭ってティッシュに包み込んだ。
「ティッシュありがとう」
俺はそう言ってまたお礼を言って彼女にティッシュを返す。もちろん、使用済みの米粒の塊を包んだティッシュは自分が責任を持って処分する。
「うん、別にいいよ」
そう言いながら、彼女は受け取る。
こういう何気ないやり取りも中々いいものだなとこの時俺は思った。
トラブルって最高だ。
「それで私の顔になんかついてたりしない?」
あ、さっきの…
「何もついてないよ」
「そお?なら、どうしてこっちの方見てたの?」
彼女は首を傾げながら俺に純粋な趣で聞いてくる。
くっ、これら答えづらい。
その時だった。
「凛瑚があまりにも黙々と食べてるから、気になったんじゃない?」
隣の席に座る女子がそう指摘した。
「え、なんで?」
その問いは俺に聞いてるのか、それとも隣の指摘したこの人に聞いてのか、はっきりしてほしい。
なんで俺の方を向きながら、指摘した彼女の方へ視線を動かしてるんだ?
「どうして?」
そして、隣の指摘したあなたは、俺に最後繋げてくるんだね。
「いい食べっぷりだなって思って。お腹ぺこぺこだって言ってるだけあるなって」
「なーるほど」
「おっ、ほんとじゃん」
周りの男子や他の女子も反応する。
「なんか凛瑚最近すごく食い意地張ってるよねー」
「そんなことないよっ」
彼女は静かに否定するが、彼女の表情が明らかに否定に値するものでなかった。
まあ、それは当たり前だ。
毎日、『ぐぅ〜』ってお腹の音を鳴らしてるんだから。
こうして和やかな雰囲気の中給食の時間は終わった。
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