複数回の音。

『ぐぅ〜』


今日も鳴ってる。


『ぐぐぅぅー』


また鳴ってる。


見た目や性格とは裏腹に彼女の身体は正直なようで、ここ最近毎日彼女のお腹が鳴っているのを聞く。


そして、毎回少し照れた様子をこっちらを見て、俺にだけ聞こえる程度の声でこう囁く。


「聞こえた?」


俺は毎回こう返す。


「聞こえた」


そう答えると彼女は照れた様子で少し笑って、お腹をさすってお腹が減ったことを俺に向かってアピールする。


このアピールする姿がものすごく可愛い。


そして、ここ最近は鳴るたびに毎回授業後に俺に近況を聞いてくる。


「はるには、聞こえてたよね?」


はるは、俺の愛称だ。彼女もそう呼んでくれる。


「聞こえてた。昨日も鳴ってなかった?」


「はははっ」


彼女は俺の言葉を聞いて笑って誤魔化した。

最近少し意地悪が過ぎるのかもしれない。

なんで、こんな返しをするかというと、彼女の反応がかわいいからだ。


じゃなきゃこんなことしない。


「せ、成長期だから!」


彼女はお腹を抱えながらそう言い放った。

どういう主張??


「成長期なんだから仕方ないよ。恥ずかしがる必要もないよ」


俺はよくわからばいフォローをする。

この会話が周りに聞こえてたら嫌な内容だな。

まあ、本当に聞かれて嫌のは俺じゃなくて彼女の方だろう。


「朝は食べてこないの?」


俺はふと気になて問いかけてみた。


実は前々から気になっていた。

朝食を抜いていることが関係しているのではないかと。


給食は、皆と変わらない量を残すことなく食べきっているし、少食な印象はない。

だからこそ、朝食べていないのはと疑問が浮かんだ。


「そんなことないよ?ちゃんと毎日食べてるよ。それがどうかしたの?」


あてが外れた。まあ、俺としては今のお腹を鳴らしてかわいい反応をする彼女のままの方が都合がいいが。本人が本当のところどう思っているのかわからないから俺がどうにかすべきとか考えるべきことではないのだろう。


「いや、毎日お腹を鳴らすほど空腹の状態だから朝ごはん食べてないんじゃないかって心配になっただけ。ほら、無理なダイエットはダメっていうじゃん」


「ぷっ」


彼女は苦笑する。

俺なにか変なこと言ったか?


「心配してくれてたんだね。ありがとう。だけど大丈夫だよ。毎日三食ごはんはしっかり食べてるし。まず、ごはんしっかり食べないと部活持たないよ」


「はははっ。それはそうだ」


「そうだよっ。まず、私に過度なダイエットなんて必要ないし」


「あーたしかに」


彼女の取り組んでいる種目を考えれば至極当然のことだ。


「あっ、もう給食並び始めたよ。私たちもっ」


彼女と話しているうちに大分時間が経過していたようだ。

俺も彼女の後を追った。

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