3.カスパール

装填しながらあたりを見渡す。


もう敵はいない。


ミシオ「もう大丈夫そうね」


密偵の訓練を受けていたミシオが言った。


隣にいるアンバーが安堵のため息をつく。


開拓予定地の探索中に巨大な虻ジャイアントギャドフライが襲ってきた。


パーティを組んで初めての実践だったが、こちらは無傷だ。


仲間の実力に安心する。


癖で胸ポケットの煙草に手が伸びたが、我慢した。


レーゼル「やっぱり、すごい・・・すごいです、皆さん」


一番後ろで見ていた、依頼人が俺たちに声をかけてくる。


羨望、畏怖・・・、いや嫉妬か。


出発前に見せた時に少し見えた、影のある表情だ。


カスパール「役割が違うだけだ」


カスパール「あなたが真摯に向き合ってきた仕事は、沢山のひとを笑顔にしている」


今回の仕事で支給された品々や、村人たちへの接し方、反応を見ていればよくわかる。


ただ、彼女にとっての今は「何か」をあきらめた「結果」だ。


意味が変わってくるのには、時間がいるのかもしれない。


人間の彼女は、最初から目的や人格がある程度作られて生まれてきたルーンフォーク俺たちとは違う。


レーゼル「ありがとうございます、カスパールさん」


レーゼル「あ、さっきの青い花の名前思い出しました」


レーゼル「ウィスパーブルーって花です」


初めて聞いた。俺も薬草については勉強していたが、まだまだだな。


カスパール「ああ・・・そんな名前なのか」


響きが気に入った。・・・ん?


カスパール(そうか、花を・・・気にすることはあんまりなかったかもな)


俺自身も、少しずつ変わるのか。だが悪い気はしなかった。

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