猟銃。
それからしばらく、俺は人に森での狩りを教える事になった。
困ったのが、初日の話しを聞いたチビ達が「え、ボクたちが一番弟子じゃないの……?」みたいな顔でショックを受けてた事だ。
いくら俺でもこれはやらかしたと思って、「弓を使った狩りを教えてるのはお前らだけだろ」と言ってすぐにご機嫌を取った。
結果、チビ達も森に入ってレベを相手にする事になり、危険度が増した。これは徹底的に教えてやらねばなるまいよ。
そんなこんな、教え始めてからもう一週間は経ってる。
「ふぅむ、教える時間取ってたら思うように遊べないぞコレ」
『後々を思えば、損して得取れといったところでは?』
「得になってくれるか分からねぇじゃん」
流石に連日連夜ずっとは無理なので、今日は授業も狩りもお休みとして、俺は広場で椅子を設置して座ってる。
適当な食べ物をショップで買い込み、広場に居る様々な人間を観察しながらパクついてるところだ。
何を見てるかと言えば、チビ達が二陣の新人達にポイントの安定した稼ぎ方などを教えて回ったりしてる様子がメインだな。
チビ達にありがとうと頭を下げる奴が大半だが、相手が子供だと侮って腕力でポイントを奪おうとするカスも居る。
そんな奴を射殺そうかと思えば、俺が手を下す前にチビ達が自分でカスの足を射抜いて無力化してた。
当然、悲鳴が上がる。しかしその悲鳴は殆どが二陣の新人からしか上がらない。一陣の俺達はこんな暴力沙汰に慣れてしまってるのだ。
俺の殺しだけじゃなくて、各々が起こしたトラブルも結局は腕力で解決する事だって少なく無かったんだろう。
もはや俺の事を殺人鬼のヤベー奴呼ばわりするプレイヤーは少なくなって来てる。
みんな、俺の弁が間違いじゃないと理解したんだろう。
実際この世界は良くも悪くも自分次第なので、最終的に暴力へ訴えかけるのは間違いじゃ無いんだ。絶対に正しいとも言えないけど。
「二陣まで来たから、そろそろ大きな組織とか生まれるかね?」
『それすらもプレイヤー様次第だと思いますが』
「でも予想は?」
『八割方、発生するでしょうね。まずクズの寄り合いが組織化した後に、それに対抗する形で自警団のようなものが生まれるでしょう』
くっだらないよなぁ。
みんな、派閥ごっこなんかしないで狩りに行けよ。ここはそう言うゲームなのにさ。
『──アキラ様。例の女が接近中です』
一瞬、なんの事か全く分からなかったが、少しして思い出した。前に声を掛けてきた娼婦だな?
『後方、距離30。猟銃で武装してます』
聞いた瞬間、俺はレイヴンを取り出して矢を番え、振り返りながらストリングを引き絞っていた。
俺が気が付いた事に気が付いた女は、俺に向かって急いで猟銃を構えて片膝を地面に付けた。
──銃声。
俺が矢を射るのと同時に、女はライフルを発砲した。
女は俺の矢を胸で受けて、ほぼ瀕死。たぶん肺に穴が空いて呼吸もままならない感じだろうか。
俺にはライフル弾は当たらず、しかしこんな町中で撃てばどうなるかなんて誰だも分かる。
「ぎゃぁぁあっ!?」
俺の代わりに、銃弾を受けた人が居る。俺が避けたと言うか、女が勝手に外したのだろう。
間髪入れず、
まず肩を
振り返れば、撃たれたのはチビに教わってる一般プレイヤーだった。チビに当たらなくて良かったと思う。
俺はチビに向かってポーションを投げ、被害者に使えと支持する。
「さぁて、この馬鹿はなんでこんな馬鹿な事をしたのか確かめなきゃなぁ」
『ふむ? アキラ様、馬鹿が馬鹿な事をする理由なんて、古今東西に於いて「馬鹿だから」以上の物は無いと思いますが』
「分からんだろレティ。もしかしたらアホになったのかも知れないじゃないか」
『程度の話でしたか? 方向性の事を指摘したのですが』
俺は馬鹿な事をした馬鹿の上に跨って、更に矢を射って地面に縫い止めた。両腕、両脚に刺さった矢が貫通して石畳に刺さるように。
それから胸の矢を抜いてポーションを振り掛け、取り敢えずの延命をする。
「なんだレティ、知らないのか? 馬鹿ってのは方角も分からない物なんだよ」
『当事者が言うと説得力が違いますね』
ノリで喋ってたら随分と辛辣な返しが来てしまった。心が折れそうだ。
さて、俺は折れたく無いから、代わりにこの女をへし折って身代わりとしようかね。なんでこんな事したのか、キッチリ吐いてもらおうか。
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