実戦編。
「じゃぁ、教えた事を元に今から全員で実践してみな。相談しながらで良いから。おかしな事をしたら都度注意してく」
足跡の読み方を教えた跡、糞が落ちてる場所の意味や爪痕が残ってる場所の考察など、様々な事を教えつつゆっくりと追跡をしてた俺達。
俺を除いた九人は相談しながらあれは違う、これが怪しいなんて会話を重ねながら少しずつ正解を手繰り寄せ、一歩一歩獲物に近づいて行く。ツヨシも居るけどあっちのパーティじゃないから今日は見学だ。
そうして昼を過ぎてさらに数時間、やっと七匹程のレベリアストの尻を捉える事に成功した。
「良くやったな。じゃぁこれから戦闘になる訳だが、俺には対モンスターの近接武器固定パーティ戦闘なんて教えられない。だから一つだけアドバイスだ」
コイツらが毎回三匹ほど獲物を仕留めてるのは、逆に言うとそれ以上が難しいという事に他ならない。
持って帰って来てるのが三匹であって、現地で売却した分などは知らないが、それでも俺に教えを乞うなら仕留める数を増やしたいのは間違い無いだろう。
「同数になったら逃げられるんだよな? なら、同数になる前に勝負を終わらせるんだ」
「…………どうやって?」
「足だけ潰せ。トドメを刺さずに戦闘力だけ奪え」
今は俺含め十一人居るからアイツらは逃げるが、こっちが戦闘に出す人数を絞れば問題無い。
「レベが七匹居るから、こっちは初期メンバーの二組六人で行け。それで、一匹ずつ足を潰して向こうの生存数が七匹のまま狩りを終わらせろ。戦闘不能の癖に元気だけはある有る感じだと完璧だ。アイツらに『仲間は減ってない』と勘違いさせたまま仕留め切れ。新参は此処で待機」
そのアドバイスで六人を送り出した俺は、残った三人の新参とツヨシを守りながら隠れる。
「あ、あれがモンスターですか……」
「あんなのが居る世界なの…………?」
「兄貴は、あんなバケモノと毎日戦ってるんで?」
「ん? ぶっちゃけ大したことは無いぞ。俺も初戦はちょっと危うかったけど、そんの時はミクちゃんが体張って助けてくれた。レベに噛み付かれようが引っ掻かれようが絶対に引かなかったあの子は頼もしかったなぁ……」
「み、ミクの姐さんパネェ……」
ツヨシの中で、料理上手でぽやぽやしてるミクちゃんが、仲間の危険に立ち向かう漢気タンクとして記憶が上書きされた事だろう。実際にあの時のミクちゃんは本当に頼もしかった。
そうだな。ミクちゃんに盾持たせてタンクにするか? ラスボスはソロで討伐したいが、ぶっちゃけると転生特典もそこまで強い興味は無いし。
俺はこの世界で遊んで居られたらそれで良い。モ○ハンだって、エンドコンテンツを倒したあとだって楽しめた訳だし。この世界だってラスボス倒した後でもきっと楽しく暮らせると思うんだ。
もしそうなら、ミクちゃんにタンクやってもらってコンビ組むのも悪くないかもな。
「……ん?」
前方の戦闘はまぁ、見るところがない。上手いことやってるが、射手の俺としては参考にならないから。
一人が抑え役でレベを一匹釘付けにし、もう一人が牽制役で他のレベを追い払い、最後の一人がアタッカーとして槍を突き入れて仕留める。
この形が二つ出来てるだけだし、レベの相手も慣れてるのか順当に勝ちそうだ。
そんな戦闘を見守ってると耳にノイズを感じて視線を巡らす。すると後方から別の群れが迫ってる様子が見れた。
こっちに気付かれないように身を隠しながらであるが、先に見付かって先制されようとしてる。狙いは俺達らしい。
「……六匹か」
俺は膝立ちのまま振り返ってレイヴンを取り出し、すぐに矢を番えて射撃を始める。
俺が突然攻撃を始めたから驚く新参達を今は無視して、感覚式照準器で驚くほど精度が上がった射撃でレベリアストの足を射抜いて転ばせていく。
ヘッドショット入れて即殺しても良いんだが、それだと一匹殺した時点で同数になるからアイツらは逃げる。そんなのは勿体無いので全てポイントに変える。
射手はシビアだ。だって外したら死ぬ。
よくファンタジーで「接近された時の為に近接攻撃もできた方が良い」とか言うセリフを見掛ける。
あれは半分正しいが、半分間違いだ。
射手は当てるのが仕事だ。殺すのが仕事だ。『外したら死ぬ』くらいの覚悟で矢を射るべきであり、外してもナイフで戦おうなんて気持ちで射ったら外してしまう。
接近されたら死ぬ。もちろんその時はその時でナイフを持ち出して抗うのでダブルスタンダードとも言えるが、それでも近付かれるその時までは『外したら死ぬ』気で殺る。
ミスれば死ぬ。だからこそ平常心で、近所のコンビニにでも行く程度の精神で、これが何時もの事とルーチンワークを
近づかれたら死ぬけど、気にせず、平常心で、フラットな気持ちで
すると気が付けば、
「………………すげぇ」
「ぜ、全部当たったの? この距離で?」
「……えっ、つよ」
「兄貴、パネェ……」
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