第二陣。



「…………よっと」


 少しずつ装備の更新を進める俺。


 現在は防具もサバイバー装備を卒業して、レティの言う通りにレベル2まで上げたアサシネイトを素材としてサバイバーに突っ込み、両方の性質を持った進化装備に変えてある。


 サバイバー+アサシネイト派生進化装備、モンスターイェーガー。


 ……そこはハンターじゃ無いんだな。まぁドイツ語でも怪物をモンスターと言うから言語的には変じゃ無いんだけどな。


 怪物狩人モンスター・イェーガーって事か。


 当面、俺の目標はコイツをさらに強化してレベル3にして、それから新エリアへと行くことだ。早く新エリアのモンスター狩りたいぜ。


 そんな野望を胸に、俺は森の中でトリックスターの練習をしながら狩りをしてる。


 左手の仕込みガントレットからナイフを打ち出して木に打ち込み、ワイヤーの収縮を利用しての立体機動。


 これミスって地面に落ちると普通に骨折とか有るからな。ポーションの減りが増えたぜ。ふふ、減りが増えたって、矛盾したまま成立する単語すこ。


「……ふぅ、やっぱ現実寄りとはいっても、こう言うところはゲームなんだな」


 ゼル伝のフックショット的なアイテムであるトリックスターは、予めロックを外しておく必要はあるが、発射も収縮も俺の意思一つで操作可能というトンデモアイテムだった。


 確かに狩りの途中に煩雑な操作とかしたく無いし、そんな装備だと実戦で使えないかも知れないが、これだといささかゲーム的すぎやしないか?


『お言葉ですが、理解出来ない超技術は得てして「ゲームの様に見える」魔法ですよ』


「ああ、発達した化学は魔法と見分けつかないって奴か」


 そうか。俺がゲーム的なご都合主義装備やろって思うのは勝手だが、この装備には俺の頭じゃ欠片も理解出来ない超技術が使われてる可能性も有るのか。


 と言うか、そも俺達が遊ばされてるこのゲームだって超常の存在が組み上げた超技術の傑作なのだ。ゲーム的な処理なのか超技術なのかなんて、分かるわけが無いか。


『理解出来ないと気持ち悪いと仰るなら、ある程度の説明は可能ですよ? ご納得頂けるかは別問題ですが』


「一応聞こうかな」


『承りました。まず、フクリスの尻尾が伸び縮みする仕組みですが、カメレオンの舌と似た様な物だとお考え下さい』


「尖った骨を筋肉で絞って逆吹き矢みたい飛ばすんだったか? 飛ぶのは尖った骨内側の矢じゃなくて周囲の筋肉外側の筒だが」


 カメレオンの舌は確か、その付け根辺りに軟骨かなにかがあって、その周りに筋肉が詰まってるんだったか。


 で、その筋肉がギュッッと軟骨を締める事で圧力が発生し、軟骨を発射台して舌が飛んで行く。人が枝豆の房を摘んで口に豆を押し出すように、『舌本体の方が飛んで行く』仕掛けだったはず。


『解釈は正直どれでも構わないのですが、その機構に対してアキラ様の生体電気信号を装備がバイパスする事によって伸縮機能が動き、発射される仕組みです。細かい所に少し説明不足や違いも有りますが、概ねこの理解で大丈夫です』


「なるほどな」


 俺の精神波を読み取って〜、なんてトンデモ理論を語られるよりは理解出来たわ。


 要はこのトリックスターその物が、俺の筋肉とトリックスター内部に仕込まれた収縮機能を連動させてるんだな? その仕組みや信号の調整なんかには超技術が使われてるんだろうけど。


「……お、ガルガルだ」


 トリックスターの練習で木に登ったら、少し遠くにガルガルが見えた。すぐトリックスターをラックに収納して、代わりにレイヴンとリリーサーを出す。


「ついでに雷撃の練習もするか」


 レイヴンクローからレイヴンボルトに進化した相棒は、アクティブ式の電気属性を獲得した。これは俺のスタミナを消費して起動出来る能動的なスキルであり、矢に付与するか弓から直接電撃を撃ち出すかの二択だ。


 スタミナ消費は前者が軽く、後者が重い。威力も消費に比例してて、矢に付与すると麻痺矢代わりに出来るし、直接の雷撃はヘルヘルから撃たれたアレだ。


  どちらも雷撃だと紛らわしいので、麻痺矢はそのまま麻痺矢と呼んで、高威力の方を雷撃と呼ぶ事にした。


 ポーチから呼び出した矢をレストにつがえてリリーサーをストリングの引っ掛けるところノックポイントに掛けて引く。


 雷撃は威力が高過ぎて獲物をズタズタにしてしまう。今から使うのは麻痺矢だ。


 いつも通りに構え、いつも通りに射る。


 気負い無く放った矢は60メートルほど先に居たガルガルの胴体に見事突き刺さり、貫通し、そしてバチッと音を響かせて麻痺効果までキッチリ与えた。


 うん、良い感じだな。雑魚狩りはこれで安定しそうだ。


 そんな感じで狩りを続け、夕方まで時間を使ってから町に帰った。


「……ん? なんか騒がしいな。またトラブルか?」


 町に帰ると、大通りを歩くだけで分かるほどの喧騒が町を包んでた。何事だ?


『アキラ様。どうやら第二陣が到着した模様です』


 キョロキョロと辺りを見回し、トラブルの元はどこか、またミクちゃんなどが巻き込まれてないかを確認してると、ふいにレティが答えを口にした。


「第二陣?」


『ええ、第二陣です。つまりこのサーバーに、追加の新人プレイヤーが来たのですよ』


 

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