整っていく装備。


 

 見付けたぜフクリス……。


 あまりにも心配を掛けたからか、家の皆から外出を渋られてる俺ではあるが、ポイントを稼がないと生活出来ないって言う現実的な問題を前にゴリ押しして外に出た。


 ちなみに、チビッ子五人はウチの隣のハウジングをBランクでシェアしてて、タケルは寝る時だけウチに来て俺の部屋に泊まったりしてる。


 飯食う時はチビッ子達も俺の家で食うか、自分達の部屋で食うかはまちまちだ。


 言うて小学生だから、四畳の部屋に男女二人ずつで何とか生活出来てる。


 寝る時だけタケルが俺の部屋へと来るのだが、それで家賃はチビッ子ハウジングの方に入れてるのは良いのだろうか?


 そんな生活環境なので、俺が二日も帰らずに一人で寝てたタケルの寂しがり方は凄まじく、オレが森へ行こうとすると「いっぢゃやだぁぁあ!」と泣き喚くので困った。


 しまいには「ぼくがポイントかせいでくるからおじちゃんはお家にいてっ!」と言われてしまう。止めてくれ、小学生に養われるとか心が死ぬ。


 そんなこんな、森へと来た俺は木を登ってポポコスとフクリスを探した。


 装備品をゼロから作る時はランク0の素材が元でも大丈夫だそうだ。


 レベル1装備を強化するのにランク1が必要なら、まだ実物が存在しないレベル1装備の作成はランク0でって事なんだろう。


 ランク1を素材にしても作れるけどな。アサシネイトみたいに。


 木の上でフクリスを見付けた俺は、その行動を観察して行動を始める。少しデカいリスだが、人の顔よりは小さい。


 あれなら金神威ゴールデ○カムイで学んだリス捕り用の括り罠で行けるだろ。


 利用率の高い木を探して探索し、漫画で学んだ通りに朽木を木に立て掛けて括り罠を取り付ける。


 更にこっそり木へと登って上の枝にも括り罠を設置した。もちろん俺の匂いを残して不審がられたらアウトなので、便利な臭い消しスプレーは使ってる。


「よし、フクリスはこれで良し。あとは罠に掛かるまで時間が勿体無いから、ガルガルとやらを探しつつレベも狩るか」


 どちらもA判定で5000ポイントのランク1モンスターだ。今は新しいエリアを買うための資金が欲しいので積極的に狩っていく。


 ランク3へ挑んでも良いんだが、あれ強過ぎるしまだ怖い。


 ドス鳥とか20万稼げるけど、ヘルヘルと同ランクなのにヘルヘルより高ポイントで売れて制空権持って行かれてるモンスターとか普通に嫌だ。


 だったらレベを四十匹仕留めた方が楽だろ。


 地上を歩くガルガルかレベを探しつつ、上も見る。もう見逃さねぇからなポポコス! 俺から隠れ切ってた事は褒めてやるが、豚なら肉も美味いやろ。絶対仕留めてやる。


 そうやって一日ずっと森を駆け回り、ガルガルとレベを合計で六十ほど仕留めたあと、罠を仕掛けた場所に行って九匹程のフクリスを回収した。


 レベ五匹とガルガル十匹を素材にすべく呼んだ追従ついじゅう設定のサソリくんに仕留めたフクリスも乗せて、いざ凱旋。




 夕暮れに町へと帰れば、サソリくんに乗ってる獲物を見て羨ましげな視線が集まるけど無視する。


 町の人はまだ殆どがポポポ狩りと薬草採集で生計を立ててる。例外も居るけど極小数だ。


 俺が知ってるのは三人組で槍や剣を持って森に行って、一日に三匹くらいレベを狩って帰ってくる大学生グループと社会人グループの二組だ。


 どっちも三人組で、特に問題もなく安定して稼いでいる様子だったな。


 三人でBランクのハウジングをシェアすれば一日1600ちょいで済むし、ハウジングは家賃さえ払えば光熱費要らないから、取り敢えず食費だけ確保してれば生きてられる。

 

「あ、おじちゃん!」


「ん? ああ、タケル達か」


 大通りを歩いてギルドへ向かう道すがら、後ろから声を掛けられて振り向く。


 チビッ子パーティも今帰りらしい。手ぶらなので獲物は即売却してるんだろう。


「稼げたか?」


「うん! おじちゃんにもらった弓矢でね、いっぱい倒したの!」


「おじちゃんありがとー!」


「今日はいっぱい倒したから、おかしかえるかなー?」


 子供達の弓もカスタム品を進化させたので、俺のレイヴン程とは言わないが感覚型照準器はついてる。あれさえ有ればポポポくらいは楽に狩れるだろう。


「お前たちもそのうち、森に来るか? レベの狩り方なら教えてやるぞ?」


「ほんとっ!?」


 自分の足で立つべき大人ならまだしも、大人の庇護が必要な子供にくらいは俺だって優しくする。


 レベが狩れればこの子達ももっと稼げるだろうし、お菓子だってたくさん食えるだろ。


「じゃぁ俺はギルドに行くから、また後でな」


「うん! 今日はね、おねーちゃんがシチュー作ってくれてるんだって!」


「おおマジか、楽しみだわ」


 子供達と別れてギルドへ。そして手続きをササッと終わらせる。


 俺は今、町で「ガチ弓さん」と呼ばれてアンタッチャブル的な扱いを受けてるので人混みが嫌なのだ。利用者が増えて来たギルドが利用しにくくなってる。


『モテる男は辛いですね?』


「確かにポイントは持ってるけどな。辛いと言えるほど支払いを便利な男には成りたくないねぇ」


『ひねくれてますね』


 素材を受け取ったらすぐに鍛冶屋へ。念願のフックショット的なアイテム、『トリックスター』を製造してそのまま強化まで終わらせる。


 トリックスター・レベル2。形はガントレット兼用の小盾バックラーみたいな装備で、盾の中にいかりの様な形をしたナイフが入ってる。


 盾を操作してナイフを発射すると、フクリスの尻尾から作られた謎の伸縮ワイヤーに繋がった刃が目標へと飛んでいく仕掛けになってる。


 盾としても使えるので、利便性は高いだろう。


「よぅし、このまま装備を更新してって、新エリアでは存分に暴れてやる」


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