洞窟。
集めた素材でチビッ子達の暗殺者装備、アサシネイトって名前らしいセットを人数分作ってやった翌日、俺は森に入った。目的はヘルヘルって奴のツラを拝んでやろうと思って。
一応、余ったジャゴミンの素材でアサシネイトシリーズのケープマントを作ってサバイバーの上から装備してる。見た目の狩人感が上がって俺のモチベも上がったぜ。
カラスの羽っぽい物が連なって出来てるケープマントとかカッコイイに決まってんだよなぁ。しかも
別にギターに首ったけになるアニメじゃないぞ。スキル名は音楽と関係ない。
常時の補正は正直『影が薄くなる』程度の些細なものだが、この装備を身に付けたままガチスニークするとその補正効果は跳ね上がると言う。
誤差レベルの補正から、行動の結果を一割か二割ほど助けるそうだ。全身セットならその力も強く、五割くらい補正されるらしい。マジかよチート装備じゃん。
そうして準備万端。森を歩いて奥へ奥へ。
目的地までの途中で、群れからはぐれたレベを見付けたので100メートル程の距離から頭を射抜いて置いた。
ふふ、今のレイヴンと進化した感覚型スコープなら、100メートルまでなら自信を持って射抜けるぞ。死後の世界スキルと言うか、異世界スキルと言うか、とにかくヤバいな。
100メートルでヘッドショット余裕って言うのは相当な事だ。銃でさえ出来ない人は出来ないぞ。
コンパウンドボウは最大射程がそもそも1キロほどあるが、それも山成に射ってそれだ。そして山成に射ってちゃ狙撃なんて早々出来ない。
つまり銃でさえ難しい距離を、弓ならほぼ不可能な難易度で狙撃した訳だ。逆に言うと、ゲームの先に居るモンスター達はこのくらい
近接武器はどうなんだろうか。もしかしたら斬撃が飛んだりするのか。それはそれで見てみたい。
さて、通い詰めて段々と慣れてきた森を歩けば、二時間もしない内に目的の洞窟に辿り着いた。森の中に土が盛り上がって小山になってる場所があり、そこに地下へ続く洞窟があるのだ。
苔むして
もちろん、どれだけ危険な場所なのかも分からないので一歩も踏み入れた事は無い。入った瞬間に致死毒を持った虫に噛まれて死ぬかも知れないし。
普段、森の中を歩く時だってめちゃくちゃ気にしてるのに、慣れない場所に無策で入るかよ。
まぁ、今日は入るんだけどな。
「準備はして来たからな」
俺は一個余ってたポーチの枠へ大量に詰めて来たスティック状のアイテムを取り出し、それを音を鳴らしながらペキペキとへし折った。
すると折られたスティックは折れたり割れたりしない柔らかい素材で出来ていて、手を離せば元通りの形に戻った上で、光り始める。
そう、ケミカルライトってアイテムだ。
プラスチック製か何かの筒の中にガラスが仕込まれていて、そのガラフを割るように棒を折ると使えるようになるアイテムだ。
ガラスの中には二種類の薬剤が入っていて、ガラスが割れると中で混ざって化学反応を起こして光る仕組みとなってる。
「
ケミカルライトを光らせたら、それを矢の先端に引っ掛けてからワイヤーで多少の固定を施す。そんな光る矢を何本も何本も作っておく。今思うと家でやっときゃ良かったなこれ。
作業が終わったらそのまま、光源を括り付けた矢を洞窟の中へと射る。天井や壁に突き刺してそれが光源となるように。
ケミカルライトは光量も発行時間も製品によってバラバラだ。物によっては12時間も光るが、一時間で終わるものだってある。
俺が買ったのは光量が比較的強い代わりに四時間しか光らないタイプだ。四時間もあればヘルヘルの顔を見るくらいは出来るだろうと思って光量を優先した。
『普通にランタンではダメだったのですか?』
「ダメだな。理由は三つ」
『お聞きしても?』
「理由の一つは、ランタンや懐中電灯だと光源が強過ぎる事だ。光が強いと影も濃くなって、見落としが増えそうで恐ろしい。それと二つ目に、持ってる光源一つ失ったら真っ暗闇になるだろ?」
俺はケミカルライト付きアローを洞窟の中に放ち続ける。大量に用意して来たから大盤振る舞いだ。
「最後に、ランタンとかだと光源で自分の位置を教えてるような物だろ? だったら環境その物を光らせた方が安全だと考えた」
『なるほど。環境を光らせてるならば、光によって位置が知りやすくなるのは敵も自分もお互い様だと』
「そういう事だな」
まぁヘルヘルがフル○ルのパクリモンスターだった場合、音で獲物をキャッチしてる可能性があるから無意味な準備かも知れないが。
「ああ、四つ目の理由もあったな。懐中電灯だと手が塞がるし、ランタンを吊るすにしても動きにくい。だからやっぱ、環境に光ってもらった方が身軽で良いだろ。俺はアーチャーなんだし」
充分に洞窟内を光らせたので、俺はやっと中に踏み込んだ。その時も周囲警戒は忘れない。ヤバい菌とか持ってるヒルがウヨウヨ居たりするかも知れないからな。
森の中だって不用意に植生に触れないよう気を付けたり、下手に木へと触れないようにしたり、色々と気を付けてるんだ。気を登る時だって良く確認してから登ってる。
森って人が思うよりずっと危険な場所だからな。
とある葉っぱを素手で触って、ただそれだけで死んでしまった。なんて話しもガチである。触っだけで人生丸ごと後悔するような毒草も珍しくないのだ。
日本だってトリカブトやトウゴマとか、信じられないレベルの毒草が普通に自生してる。人が思うより人の周りには危険が大量にあるのだ。
特にトウゴマはヤバいぞ。世界五大猛毒の一つと呼ばれる『解毒不能』な毒を持ってるから。致死量食らわせたら確殺出来る。そして致死量は僅かなので超危ない。
そして植物もヤバいけど、虫もヤバい。と言うかキノコもヤバいし、森は大体ヤバいのだ。日本人が安全に山登りとか出来てるのは、その為に色んな人が山を管理して安全にしてるからだ。
「…………とりあえず、目立つ虫は居ないな。ヤバそうな植物も無し。コウモリの糞も無いな。ガスは怖いが、今は確かめようが無いし」
洞窟に踏み入った俺は素早く周囲を確認しながら、新しく取り出したケミカルライトをポキポキして地面にばら撒く。光源は多い方が良い。
最初から矢で射らずにバラ撒いて進めば良かったと思う素人は居るだろうけど、冷静に考えて近場の足元しか見えない洞窟とか怖いに決まってるだろ。
不意打ちを避けたくてやってるのに少し離れたら真正面からでも不意を打たれそうな環境とか御免こうむる。
まず薄らとでも良いから遠くを確認出来るようにしつつ、更に歩いた所には光源を追加して視界確保を強める方が安全だと思う。
「さて、行くか」
安全が分かった俺はレイヴンを構えながら洞窟を進む。まだポキポキしてないケミカルライトを付けた矢もさっき用意したので、先に進んだら随時視覚範囲を更新したいと思う。
さぁて、ヘルヘル君。君のお家を光らせに来たぜ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます