ジャゴミン召喚。



 ふぅっと紫煙を吐き出しながら草原にたち、しばらくボケっと歩いて獲物を探す。


 風下から風上に向かって歩く事で多少の匂いは誤魔化すが、見付けるだけならそこまで苦労しないのがポポポって生き物だ。


 なにせ、草原には巣穴がボコボコ空いてるから。巣穴を探せば大体居る。


「ふぅ、居た」


 タバコの残りが1センチ程まで吸ったものを、携帯灰皿に入れて揉み消す。パックタイプの携帯灰皿は揉み消しに対応はしてないんだが、まぁ大体の人がやってるはずだと俺は思う。


 見付けたポポポを見据え、俺はレイヴンを左腕に召喚。右手にも矢を召喚し、ブラシ型狩猟用アローレストに番えてストリングを引く。


 前にも確認したが、アローレストとはアーチェリーやコンパウンドボウ等の現代弓を射る時、矢を置く為のパーツである。


 基本的にはグリップライザーの上辺りに取り付けて、そこに矢を置いてから矢筈ノックと呼ばれる矢のお尻をストリングにハメる。


 そのパーツの形は様々であるが、俺が使ってるのは狩猟用で矢を素早く番えるのに特化した物だ。


 その形を口頭で描写するなら、2、3切れ食べたピザみたいな形とでも呼ぼうか。一部だけ欠けた円形で、円の内側にはプラ製のブラシが中心に向かってワッサァと生えてる。


 此処に矢を乗せると、円の欠けたところにスっと矢を入れたら円に生えてるブラシが矢を真ん中で保持してくれる。そして、射る時は羽がブラシに当たってもブラシだから問題無いのだ。


「シッ…………!」


 短く息を吐いてポポポを射る。当たり前に胴を貫通して地面に磔刑となったポポポ。幸いなのは即死してて苦しまなかった事だけだ。


「ふぅ……。これで死体を五分以上も放置してたら、死肉を漁りにジャゴミンが現れるんだっけ?」


『焼き鳥屋の主はそう言ってましたね。ちなみに答え合わせは現象を確認してからじゃ無いと無理ですよ』


「直接の攻略法は言えないもんな。クエストとかで確定情報を貰ったわけでも無いし」


 俺は射られて死んだポポポを眺めながら、仕留めた獲物をこんな扱いし申し訳ないと思いつつも茂みにしゃがんで身を隠した。


 また新しくタバコに火を付けてプカァっと煙を吐くが、ジャゴミンは確定で出現するらしいので気にしない。登場時に俺の姿が見えなくて不意打ちを出来なければそれで良い。登場後に位置バレしても構いやしない。


 流石に空の上からやって来て、即座に匂いで俺の位置は分からんだろ。


「ああ、忘れてた。上から見られてだから緑の布を被んなきゃ。匂い以前に丸見えじゃ意味ねぇや」


 準備した布を頭から被って茂みに潜伏。下手したら他のプレイヤーからモンスターと間違われて襲われるかも知れないが、その時は返り討ちにして殺そうと思う。


 そうやって待つこと五分。ちょうどロングケースのタバコか一本吸い終わった頃だった


 バサッバサッと音はせず、代わりにシャファッシャファッと控え目な羽音が聞こえて布をめくる。おお、真っ黒いオオワシみたいな鳥が優雅に舞い降りて来た。


 情報だとイーグルダイブして来るって聞いてたんだが、生きてる敵が確認出来ないと普通に降りてくるのかな。


 まぁ、取り敢えず射るか。死ね。


「ゲキャッ……!?」


 弓は貫通して半矢はんやだが、それでもジャゴミンはもう飛べないらしい。仕留めたポポポの傍に落下してバサバサと藻掻もがいてる。


 大きさ的に内臓はほぼ全部ズタズタの筈なんだけど、随分と丈夫な鳥だな。


 まぁ良い。俺はジャゴミンを回収せずに放置した。売却実績と解体実績、どちらも欲しいので二羽以上狩りたいのだ。このまま次のジャゴミンを待つ。


 売却と解体、どちらでコンプしたらフラグになるのかなんて俺には分からないからな。


「……にしても、シャトの服に似てる鳥だな」


 思えば、シャトの暗殺者ルックの装備って羽っぽいパーツ着いてたよな。色もジャゴミンと似てるし。もしかしてコイツが元素材か?


「レティ、コイツの素材を集めてシャトの服を作ろうとした場合は安くなる?」


『なりますよ。素材全て揃えて鍛冶加工場アームドスミスに行けば、恐らくは5000ポイント程で』


「マジかよ全員分集めようか」


 チビッ子達はまだマトモな防具持ってないのだ。流石に全員にライトモデルのコンパウンドボウを都合してたら余裕が無かった。ポイント使い過ぎても奴らは気にするだろうしな。


『……これは裏技ですが、今の装備に隠密性も加えたいのでしたら、プレイヤー・シャト様の着用する防具アサシネイトをレベル2まで育てまして、サバイバーをレベル2へと進化させる時にレベル2アサシネイトをランク2素材扱いで使えば良いのですよ』


「…………え、待ってなになに? ワンモアお願いしていい?」


 死肉を餌にジャゴミンを待ちつつ、訪れる羽音に向かって矢を放ちながらレティに聞き返す。


 えと、なに? 装備をレベル2へ進化させたら、それをランク2の素材扱いしてサバイバーに添加する的な? 何それ楽しそう。


「それ、俺に伝えて良かったやつ?」


『ギリセーフかと』


「ギリなの? 良いの?」


『末永く共に居るのです。レティが怒られたら一蓮托生ですよ?』


「そりゃもちろん、俺もリスタちゃんに頭を下げるけどさ」


 夕方までジャゴミン釣りを続けた結果、40羽近いジャゴミンを手に入れた。コイツ、最初の一羽は確定だが、その後の登場はマチマチだった。この情報は焼き鳥屋のマスターにバックしておこうか。


 さて、売り払うとA判定で1000ポイントか。そんなに美味しく無いので、サソリくんを短時間だけ雇用して殆どギルドに運んでもらう。全部素材にバラしてもらおう。


「さて、次はポポコスか、ヘルヘルか。どっちにするかな?」


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