ツナマヨ。



 クエストは受けたので、ショップに行くのは予定通りと言えば予定通りだった。


 しかし、なんだ。高校生、中学生ときて、今度は小学生か。次は園児とでも遭遇するのか?


「おじちゃん、ありがとっ」


「おう、いっぱい食えな」


 ショップ内部に散乱…………、散乱? まぁ散乱で良いか。バラバラに置いてあるし。そう、散乱してるベンチを確保して、俺は少年と座ってる。


 俺は進化させた矢と、少し必要な物をショップメニューから選びつつ、先に購入して出したペットボトルとコンビニおにぎりを十個ほど、少年の膝に乗せて置いた。


 やっぱ腹は減ってたんだろう。貪るようにバクバク食べる少年を微笑ましく思いながら、俺は購入を済ませた品物をアイテムポーチに閉まっていく。


 アイテムポーチには現在、ハイアローと呼ぶ事にした高額な方の進化矢が20本。

 普段使いしてるノーマル矢が200本。

 タバコ40箱。縄束20本。

 500m巻きハリガネワイヤー20束。ラジオペンチ二つ。

 500mlペットボトルの水20本。

 ブロック栄養食50箱。

 ポーション10本。


 この九枠になってる。採集物も狩猟物も収納出来ないから枠を一つ空けてる意味無いんだけど、今のところは九枠だ。採集物はボックスに仕舞えるしな。


 と言うかこれだけ揃えるのに結構ポイント注ぎ込んでて余裕無かったって理由もあるが。


 レイヴンとナイフはウェポンラックに。ナイフはこれ、最初に買った安い奴から三万くらいしたガチガチのサバイバルナイフ風コンバットナイフに買い替えて、レベ素材で強化済み。


「美味いか?」


「うんっ! ぼくね、ツナマヨ好き!」


「そっかそっか。俺もツナマヨ大好きだぜ」


 脂とフケが浮く汚れた髪をクシャクシャ撫でる。俺は準備終わったし、そろそろ狩りに行きたいのだけど、この子を置いて行くのは少し心配だ。


 俺だって誰彼構わず助ける気は無いけど、偶然知り合った無垢な子供くらいならこの手を差し伸べもする。


「そう言えば、名前も聞いてないな。俺はアキラ、君は?」


「タケル! 田中タケル!」


「なるほど、タケルくんだな。それでタケルくん、俺はもう、ポイントを稼ぎに外に行くんだけど、君はどうする? 行くところが無いならしばらく俺の家に来るか? 一緒に住んでる人も居るから、その人に聞かないとダメだが」


 幸い、家にはミクちゃんもシャトも居る。二人とも、こんな状態の子供を見て「嫌!」って言うような子じゃ無いだろうし、面倒を見てもらえるから安心だ。


 しかし、タケルくんは驚く事に首を横に振った。


「どうしてだ? 困ってただろ?」


「えっとね。ぼく、おかーさんに言われてるの。助けてもらったら、助けなさいって。だからこんどは、ぼくがおじちゃん助ける番なの」


 良い子過ぎない? つまり、なに、おにぎり分のお礼を果たすまでは、追加で施されてはならない。みたいな考えなのかこの子。


「そうか、なるほどな。じゃぁ分かった。俺がタケルくんにお願いしよう。俺のお家に行って、住み込みで家事の手伝いをしてくれないかな? 俺は毎日狩りに行ってるし、家に居る子も家賃を稼ぐ為に狩りをする日も有るから、手伝ってくれると凄い助かるんだ」


「そうなの? じゃぁぼくがんばるね!」


 だけどまぁ、小さな子供を言いくるめる程度なら余裕な訳でして。


「凄い助かるよ。じゃぁ、今日はタケルくんにお礼として助けてもらうけど、明日からはタケルくんに手伝って貰ったお礼に、ご飯と寝るところをあげるよ。それで俺たちはずっと助け合えるね」


「ほんとだっ、すごい! おじちゃん頭いいんだねっ!?」


 そうと決まれば早速、俺はタケルくんを連れて一旦ハウジングまで戻る。タケルくんに入場許可を与えて中に入ると、「あれ、帰ってきた?」みたいな反応をする二人にタケルくんの事を紹介した。


 事情を察してくれた二人は、「うわー、お手伝いしてくれるの? 助かるなぁ〜!」って過剰に喜んで見せて、タケルくんは「がんばるね!」と意気込んでる。


 ちなみに、タケルくんは今日まで薬草を探して生きてたんだけど、上手く行かなくて一日に二本とかしか取れず、初期ポイントで凌いでたらしい。


「じゃ、ゴメンだけど任せたよ」


「任されました!」


「行ってら」


 ミクちゃんとシャトに見送られながら、俺は再び家の外に飛び出した。


 現在、俺の防具はまだサバイバーとか言う名前の革装備だ。モンスターをハントするワールドなゲームの初期装備風な、雰囲気の良い奴。


 レティによると防具も進化可能らしいので、早いところ進化させたい。その為に今は、ドスリアストの素材を集めてたりする。今回はギルドの依頼だから提出しなきゃいけなくて素材取れないが、自然にポップするタイミングが来たら逃がさず狩りたい。


 ドスリアスト、あいつランク2なんだよね。


 これはレティからのお得情報なんだけど、武器防具をレベル2に進化する時、最初からランク2の素材を使って進化させると付与出来るスキルが一つ増えるらしい。


 最初はマジかよ俺もレイヴン作り直しかって思ったけど、良く考えると付与枠増えても剛射か追射だから要らねぇや。


 他にも対人用の装備も準備したいし、鍛冶加工場アームドスミスで魔物素材から作れる武器とか見てみると面白いサイドウェポンとかあって、「武器枠十個も要らんやろ」って思ってた過去の俺を殴りたい。


 アレだぞ、ゼル伝のフックショットみたいな装備もあったんだぞ。立体機動やりたいじゃん。弓使いとても、高所を取れるのは替えがきかないアドバンテージだ。


 防具もこれ、今は店売りのセット品を買ったけど鍛冶加工場アームドスミスで部位別に作るのも有りだし、悩む悩む。


 GAN○Z○ンツだとか○F14だとか色々と突っ込んでたけど、やっぱ此処ここは狩りゲーなんだと思ったぜ。


 この世界は、リアル寄りのモ○ハンだった。


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