少年。
家の敷地から出ると景色が変わり、大通りに出る。広場がすぐそこにある丁度良い位置だ。
外から敷地の中は見えない仕様だが、敷地の中からも外は見えなくなってる。一応、敷地の外を歩く人々をハントレットが強調表示してくれるので、外に出る時は人とぶつからない様になってる。
感覚的にはアレだ。FPSゲームで、壁の向こうに居る味方の様子とか常時把握出来るアレみたいな感じ。もしくは、レジェンドが三人組んでチャンピオンを目指すあのゲームで、カラスを連れてるあの人のスキルみたいな感じ。「主神が眼力を与え給う」ってな。
多分、もうハッキリとハウジングエリアとゲームエリアは別空間なんだろうな。外から見たら敷地の面積なんて精々が六
家から出ると、未だにハウジングを解放出来てない奴らが俺を睨んでた。あれは俺だから睨んでる訳じゃない。ハウジング持ってる奴らを例外無くあそこから睨んでる。だけど出て来たのが俺だと分かった瞬間、そいつらはサッと視線を逸らした。
うん。俺、結構ヤバい奴として有名になってるんだよな。
やっぱ時間が経てば皆ある程度は思考が落ち着くわけで、そうすると俺が人殺しって言う情報がそこに残るんだよな。一応、女の子を助けての事だし、ダンボールアーマーの件で俺を支持してる層も居るから極悪人とは思われてないけど。
そして人を殺した割りには俺のメンタルがピンピンしてる事についてだが、これは簡単だ。俺は殺した奴の事を人だと思ってないから。「そう思い込んでる」って事じゃなく、マジでそう思ってる。
俺が生きる為に、向こうも生きようと必死なレベ達をダース単位で射殺しておいて、ちょっと人型なだけの
会話が出来ない、言葉が通じない相手ってのはもう人じゃない。ソイツの口から流れ出てるのは「言葉」じゃなくて「鳴き声」だ。そんな相手を悼んでやるメンタルなんて持ち合わせてない。
『今日はどちらから?』
「まずギルドでクエスト受ける。その後にショップ行って矢の補充」
俺を睨んでたら射殺されるかもってビビる奴らを一瞥しながら歩き出すと、レティから今日の用事を聞かれる。狩りに行くのは確定だが、その前にやる事があるのだ。
『クエストは何を?』
「俺の知らないモンスターを中心に考えるかな。そうすればクエスト情報に乗ってる場所までは
レティ達ハントレットは攻略の手伝いをしてくれるけど、それには制限がある。
例えば、謎解きをクリアすれば開く扉が目の前にあって、ハントレットが『あ、その答えは○○ですよ。さぁ次に進みましょう』とかやっちゃいけない。
あくまで答えに辿り着く助けをするだけで、答えを口にしちゃダメなのだ。宿題を埋める計算式は教えても、イコールの先に数字を書くのは禁止されてるんだ。宿題は自分でやりなさいってね。
だから、此処でちょっとした裏技を見付けた。と言うかゲーム的には正攻法なんだけども。
名前の知らないモンスターの討伐クエストをギルドで受けると、その生息予想地の情報を貰える。つまり「○○が居る場所」って言う「答え」を知ったから、そこに向かうまでの「
要は、宿題に出された算数ドリルをページ裏の答えを見ちゃった訳だ。なのでもう答えを隠す必要も無いので、計算式を含めて教えてくれる様になる。
「昨日のドスリアストは強敵だったからな。矢も結構ロストしたし」
このゲームに於いて、レベリアストはモンスターをハントする例のゲームで言うと「ラ○ポス」とか「ゲ○ポス」とか「ジ○ギィ」とか「ルド○ス」みたいな存在であり、そいつら雑魚を纏めるボスも居る。
そのボスが「ドス○○」って名前だったから「モ○ハンか?」と突っ込まざるを得なかったが、此処は死後の世界だもんな。パクっても文句言ってくる奴は居ない。居ても軒並み死人だ。死人に口なし、つまり実質やっぱゼロ人だ。
広場を突っ切りギルドへ行くと、もうそこは人が居なくて寂れてた場所では無くなり、このゲームでしっかりと歩き出したプレイヤー達が居る。
まぁまだ数は少ないんだけどな。でも稼ぎがまだ少ないプレイヤーにとってギルドは必須の施設でもあるから、少なかろうと人は集まって来る。
なにせ、『薬草採取:ミルリーフ200ポイント』なんてクエストとか有るから。ミルリーフあれ、ハントレットで売却すると100ポイントだ。つまりクエストを受ければ倍で売れる。
もちろん無制限とは言わず、一日に五個納品までしか出来ない。それでも1000ポイントになるから、ある種の救済措置なんだろう。
適度に死ねってコンセプトだから救済とかゼロだと思ってたのに、意外と優しいところがあったな。
一通りギルドの中を見渡した俺は、空いてるカウンターに行って台の上に浮いてるホロ画面を操作する。
「………………ポポコス? の、肉納品? いや安いな。生息域はレベと被ってるし、受けなくて良いか。その内遭遇するやろ」
クエストを
このクエストを受ける基準だけど、ハントレットがプレイヤーの身体能力や装備、狩猟実績などから割り出してるらしい。基本的には装備を更新してけば勝手にランクアップしていくそうだ。
「ヘルヘル……? 生息地は洞窟…………」
……またこれパクリか? フ○フルか? 洞窟でフル○ルと戦うのか?
しかし、パクリだとしたらコイツも毒や電気の属性持ちである可能性がデカい。今の俺ではちょっと不安だ。と言うか洞窟の中ってアーチャーのフィールドじゃないよな。
ふむ。となると、稼ぎとして美味しいのはやっぱりドスリアストなのか。
「……うーん、今日は良いのが無いな。はぁ、新しいモンスターは止めてドスリア狩るわ」
『了解しました』
ホロ画面を操作してクエストを受けると、レティが生息予想地までの
これはレティが教えてくれた豆知識なのだが、野生のドスリアストは十日に一度ペースでポップするらしいのだが、ギルドにクエストが発生してた場合は受注者が生息予想地に入った時点で新規ポップするそうだ。
攻略の答えは教えてくれないのに、こう言うメタ情報は教えてくれるんだよな。て言うかモンスターってポップシステムなのか。繁殖もするらしいけど。
クエストを受けたらギルドから出てる。すると、その時にドンッ、と誰かとぶつかってしまった。
「ぁいてっ……」
「ああすまん、大丈夫か?」
転ばせてしまったのは、小学生くらいの男の子だった。薄汚れた病院着を着てる。此処に居るって事は、この子も死人なんだ。服から予想すると多分病死だろう。
この年齢で死んでしまったのだと思うと、優しくしてあげなきゃって義務感が湧いてくる。同情とかじゃなくて、『本当は
大人は子供に与えるのが役目だ。子供は与えられて育つのが役目だ。ならば、与えられる前に死んだこの子は、それを欲して良い権利がある。
「本当にすまん。大丈夫か? 怪我は?」
「いちち……、だいじょぅぶ……」
助け起こしてもフラフラしてて、顔色が良くない。体が弱いのか、それとも空腹なのか、最悪はどっちも正解の可能性もある。
「悪かった。お詫びに何か、食い物でも奢ろうか? 腹減ってないか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます