カレー。



 暗闇の森はマジでヤバいので、今回は森に入らないで草原を探す。最低でもポポポとか言う奴が居るはずだから。


「ふふ、任せて欲しい。シャトはもう、ポポポマスター」


「そのコミカルな称号で本当に良いのか?」


 俺はポポポを狩りすぎて、なんとなく巣穴とかが分かるようになった少女シャトの案内で、 町を出てすぐの草原をコソコソ歩いてる。


「……ほら、そこ、居る」


「へぇ、この距離で逃げないんだな。不用心極まりねぇ」


 ふと、シャトが止まって俺へ獲物を知らせてくれる。暗くてハッキリ見えないが、距離20ちょいの所に毛玉が居る。


 すぐレイヴンを出して、強化しなかったどころかヘッドも変えてない矢を番える。


 ギリッと引き絞ると、ぼぼ無音で動作が終わる。信じられないくらいスムーズに、軽くストリングが引けた。


 これでも体感でドローウェイト70ポンド相当はある筈なのに、実質40~50くらいに感じる。なんでだろうか?


 あれか、効率ってパラメーターを上げすぎた弊害か? いや弊害とは言えないよな。軽く引けるって良い事だし。


 もしかしたら、今回はリリーサー使って引いてるのも関係あるのだろうか。分からないが、とにかく使いやすい。


 隣でキラキラした目を俺に向けるシャトの存在を一旦忘れてた、俺はリリーサーのレバーを押す。


「ぃぎ--」


「……ふぁぁあ」


 進化した『感覚型スコープ』とでも呼ぶべき照準能力のお陰もあって、暗くても20メートルなら頭を抜いて即死させられた。なんかもう別次元なんだが。


 俺、これ使って良いならモンスターをハントするゲームで赤い飛竜くらいなら即死させられる気がするぞ。


「しゅごぃ……」


「シャトはこう言う武器とか好きなのか?」


「うん。シャト、厨二ファションとか厨二武器大好き」


 おおう、自分でソレを肯定して行くのは中々に強者だな、


「シャトもそれ、欲しい。どうすれば、手に入る?」


「んー、俺が中抜きしない前提でも、諸々合わせて30万ポイントくらい掛かるぞ?」


「…………ポイント、ためる!」


 凄いやる気に満ちてるシャトは、もっと矢を射る所が見たいと言って、どんどんポポポ見付けてくれた。超助かる。


 俺が狩ると軒並みA判定で売れるから、結構ポイントの足しになるな。雑魚とは言え侮れない。


 さっさと狩ってさっさと売る。この繰り返しを30くらい繰り返したら、15000ポイントも手に入った。家賃楽勝だし焼肉食えるぜ。


「シャト、ありがとうな。お礼と言っちゃなんだが、コレやるよ」


 狩りを終わらせ、シャトと一緒に町へ帰る。その時、俺は別れ際に矢を数本、シャトへ渡した。初期型の矢だけど。


「石で殴るよりは良いはずだ。握って刺せ」


「…………あり、がと!」


「コチラこそだぜ。それと、シャトがポイント貯めたら、俺のマージンはゼロでレイヴンクローが作れるようにしてやるよ」


 マジで助かったので、固く約束をする。それで、その渡した矢を直接ポポポにぶっ刺してポイント稼げよな!


 上機嫌で自分のハウジングへ帰って行くシャトを見送ったあと、俺も自分のハウジングへと帰る。何気に初帰宅だ。


「アキラさん、おかえりなさい!」


「ああ、ただいま」


 敷地を潜ると、外で見たよりもちょっと大きい建物に変わった我が家。中は全面土間であり、玄関入って右手に竈が、左手にはトイレがある。風呂場は竈場の後ろにあり、竈の火を利用して湯を沸かすらしい。


「ほうほう、良い家じゃん。俺こう言う田舎臭いの結構好きなんだよな」


「あ、分かります。私もこう言うの、お母さんの実家に帰ったみたいで安心します」


 そうそう、分かる分かる。田舎のばーちゃんの家とか行くとさ、いやに古い設備とかも新鮮に感じちゃったりして、ちょっとした手間でも楽しくなったりするんだよな。


 最初の内だけなんだろうが、それでも最初は楽しめるんだから良い事だ。だって現代の家って最初すら別に楽しくないしな。


「そして、飯はカレーなのか?」


 ご飯はすぐ食べれると言って、俺をリビングのラグに案内するミクちゃん。促されるままにラグの前で靴を脱いで上がる。


 その間、俺は家の中に漂うカレーの匂いにやられて、もう既に俺の胃袋は降伏宣言をしてた。


「…………えっ、も、もしかして、お嫌いでしたかっ」


「いや、めっちゃ好きだが」


 しかし、カレーを作るならば、あの時にエコバッグから見えてた大根は…………?


 解けそうに無い謎が俺の中に生まれてしまったが、ともかくカレーだ。


 なんとお米から炊いてくれたらしくて、ほかほかの炊きたてご飯でカレーが食える。パックのご飯をボイルした奴でも文句言わないのに。


 ラグの上にローテーブル、と言うかほぼ卓袱台ちゃぶだいだな。その前でクッションに座って待つこと数分、竈の方からミクちゃんがカレーを持ってラグまで来た。


 器用に靴を脱いでラグに上がったミクちゃんは、お皿を二つテーブルに乗せて、ニコニコ笑顔でクッションに座った。


「さぁ、召し上がれっ」


 頂きます。


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