武器進化。



 最初は獲物を解体してサソリくんを蠍屋おうちに帰したら、そのまま自分のハウジングに帰るつもりで居た。


 しかし、ミクちゃんが「自分の事は気にしないでくださいっ」と言うので、お言葉に甘えた俺は、武器の強化をやる事にした。


 その際に、レティが『矢も一緒に強化すると、次回から強化済みの物がショップで買えます』とか、『カスタムされたパーツごと強化されるので、アキラ様が思う最強カスタムで強化した方が良いですよ』とか言うもんだから、まず先にショップ行ってカスタムパーツ買う事にした。


 あと防具な。良い加減にこのダンボールアーマーとはおさらばしたい。と言うかしないと、ミクちゃんを一人で残した意味が無い。ミクちゃん殴られ損じゃないですかヤダー!


 という訳でショップに行ってささっとお買い物。


「防具はこの、サバイバーとか言うので良いか。ダンボールアーマーよりは強そうだし」


 モンスターをハントするワールドな奴で、キャラクターが最初から着てるレザー装備をもう少し革増やして鉄も少し仕込んだ感じの防具を一式買う。


 20000ポイントもするんだけど。泣きたい。


『換装しますか?』


「え、待ってそんな機能あるの?」


 やって貰った。すると、購入後の黒箱召喚を飛ばして一瞬で俺の見た目が変化する。何かエフェクトがある訳でも無く、シュンっと換装が終わった。


「わぁ、かっこいいです!」


「そう? へへ、ありがとう」


 女子高生に褒められておじさん嬉しい。


 気分が良いままに買い物を続け、レイヴンに使うカスタムパーツをごちゃごちゃとカゴに入れていく。そして、そして…………、出来れば買いたくなかった矢もカゴに入れる。ちくしょう此処で気分が落ちた。


 誰かに言いたい。コンパウンドボウに使う矢って、いくらすると思う?


 もちろん安い物は安いぞ。ダース売りで3200円とかな。


 でも、高いのはめちゃくちゃ高い。死ぬほど高い。メーカーの正気を疑うほどに高い。


 だって、スポーツ用の矢柄シャフト一本で6000円する物とか普通に有るんだぞ? 意味が分からない。矢は消耗品なのに!


 もちろん下手な使い方しなかったら長持ちするけども。少しミスって変な的にでも当ててみろよ。初めて使う一射目でシャフトが歪むことだって有るんだぞチクショー!


 でも、強化されますよとか言われたら、一番良い物を用意しなきゃじゃん。


「……強化後にラインナップ入りするなら、買うのは一本で良いのか」


 その中でも俺は、日本には売ってない海外での激ヤバ高級品を買ったことがある。良く関税通ったなって今でも思う。日本で禁止されてる弓猟用の高級品とか、ホントなんで通ったんだろ。


 そうやって震える手を抑えてなんとか画面を操作してカゴに入れたのは、高級品スポーツ用品の大御所イースドンが出すガチ狩猟用のカスタム矢。そのお値段なんと驚き、一本の矢が約二万。


 いや、実際は海外から取り寄せに要らんお金とか使ってるからもっと、本当はもっと安いんだ。でも俺の手元に届く頃にはその値段になってたから、その値段なんだよ。


 なんで俺は弓猟出来ない国で弓猟用の高級矢に一本二万円もかけたんだろうね?


 しかも、俺と俺のコンパウンドボウに適してない矢を一回間違って買っちゃって、買い直した事があるからな。もう若干トラウマだよ。


 矢ってあれ、弓を引き絞る長さとか使う弓の強さとかで結構細かく種類が分かれてるんだよね。それもアーチェリー用とコンパウンドボウ用でも違ったりする。


 その上で、的射まとうち一射目で凡ミスして一本お釈迦にした。二万円を一発でゴミに変えたのだ。あの時はマジで泣いた。


 はい、そんなフルカスタムアローをご購入です。もうコイツはボス用にしよう。雑魚は今まで通りの矢を使う。


『アキラ様、元気出して下さい。強化には一応、元になった品物の質によっても倍率掛かりますから。そこまでの高級品なら相応に強くなりますよ』


「マジかよ元気出したわ」


 つまり二万円に相応しいつよつよアローに生まれ変わるんだろ? 最高じゃん。


 そんな訳で買うもの買ってさっさと黒箱召喚。中から品物を取り出して、その場でレイヴンをカスタムしてく。


 と言っても、俺のレイヴンは元々最高級カスタムなので、ほぼそのままなんだけどな。乗せてる照準器スコープを交換したり、ハンティングバッグに入れてなかった周辺パーツをちょっと買い足しただけ。


「スコープ替えて、スタビライザーも交換して…………」


「か、かっこいい弓ですね……」


「でっしょ!? これ海外から取り寄せて買った24万円くらいのガチモデルなんだよね!」


「24万ッ!?」


 ぶっちゃけ、現代の機械弓って銃より高いんだわ。もちろんピンキリだけど。


 女子高生に褒められて気分の良い俺は、そうして買った物を全部ポーチに叩き込んで立ち上がった。カスタム終わったから次は鍛冶加工場アームドスミスだな。


 ささっと移動する途中で広場を見ると、馬鹿がまだ「信じてくれ!」とかやってて笑う。何時いつまでやってんのアイツ。


 くっくっと笑いそうになりながらも広場を歩いて突っ切り、広場を挟んでショップの真正面に有る鍛冶加工場アームドスミスへ到着。


 やっぱり此処も体育館的な箱物で、中はギルドと違い広々としてる。


 光彩窓も少なくて薄暗い部屋だが、四角いだけの作業テーブル? みたいなのがダース単位で並んでたり、奥の方には武器製作に使うだろう施設や器具が並んでた。


「もしかして、この作業台に武器を乗せたらお任せ?」


『ご明察です』


 どうやら自作する場合は奥の方で作業して、システム的な製作や強化なら四角いテーブルに物を乗せたりすれば良いらしい。その後はレティがやってくれる。


「素材から武器を作る場合はボックスの中身が消費されて、何も乗せてないテーブルに武器がポップする感じ?」


『ご明察です』


 レティがご明察ボットになっちまったが、取り敢えず強化するべ。


 俺はレイヴンと二種類の矢、あと今日は使わなかった『リリーサー』というアイテムをテーブルに置いた。これはストリングを引く時に使う器具で、なんと言うか…………、指を離すと飛んでいく仕組みの弓矢を、引き金を引く矢が飛ぶ仕組みに変えるパーツ? かな?


 使い方は手で握ったり手首に装着して使うんだけども、このリリーサーをストリングに引っ掛けてからストリングを引いて、引き切ったらリリーサーについてるレバーをクイッと押せばストリングが解放されて矢が飛ぶ。


 素手で引いて射ると、指を離す時に少しブレるんだけど、リリーサーを使うとそのブレが減るんだ。精密射撃がしたい時はコレが要る。


「さて、あとは頼んだぜレティ」


『当機にお任せでよろしいので?』


「待て待て待て待て、さっきお任せで良いのか聞いたらご明察って言ったじゃん。なに、俺が決めれる項目とか有るの?」


『有りますよ?』


「先に言ってね!?」


 レティを促すと、俺の目の前に画面がポップする。どうやら強化の方向性みたいな物をカスタム出来るらしい。


 ふむ? ああ武器の種類ごとに項目違うやつだなコレ。


 ええと、弓の場合は重量、強度、張力、効率、デザイン、スキルが選べるらしい。効率ってなんの? 分からん。


 シークバーみたいな物でパラメーターを決めて、スキルは所持してる素材の中から添加出来そうなものだけ選択肢に入る。デザインの方は良く分からんな。


『デザインは当機が引き受けましょうか? 要望はお聞きします』


「あ、良いの? じゃぁレイヴンの雰囲気とコンパウンドボウらしさは残しつつ、素材の特色も追加してみて?」


うけたまわりました』


 えーと、なんだ。まずスキルから選ぶか。選べるスキルが四種類あるな。でも武器に入れて良いのは二種類か。



 剛射:必ず矢が破損する代わりに、ドローウェイトが据え置きのまま+50ポンド分の威力になる。


 強射:ドローウェイト据え置きのまま+15ポンド分の威力になる。


 軽射:威力据え置きのまま、体感ドローウェイトが20ポンド分減る。


 追射:威力据え置きのまま、射速が半減してホーミング効果が発生する。



 いやクソ悩むけど、強射と軽射でおなしゃす。威力50ポンド+とか死ぬほど気になるけど、矢を毎回破壊されるのは勘弁してくれ。安い方ならまだ許せるけど、二万円の矢を確定で破壊されたら辛すぎる。


 それモンスターも死ぬけど俺の財布も死ぬね☆


 はい。剛射は諦めます。あと追射は最初から要らないなぁって思った。ホーミング性能がクソ強くて必中だとしても、射速半減がクソ過ぎる。そんな遅い矢を射ってたら速攻位置バレするじゃん。犠牲にする物がデカすぎる。


 しかし、この組み合わせ良いな。これ実質あれじゃん、最大ドローウェイト80のレイヴンなら60ポンド分の軽い引きで95ポンド分の威力になるって事じゃん? クソ強くて笑うわ。


 あ、パラメーター操作で張力も変えられるんだっけか。って事はもっと強く出来る? 張力ってドローウェイトの事で良いんだよな?


「じゃぁドローウェイト90にして、これで70ポンド分の引きで105ポンド分の威力? もはやライフルなのでは?」


 でもその威力だと弓壊れそうだし、強度を上げて…………、おお、必要素材と必要ポイントがゴリゴリ増えて行くわ。そう言うシステムか。


「なぁレティ、効率って何?」


『ドローウェイト据え置きのまま、張力から発生する力を矢に伝える効率が変化します。平たく言うと強射と同じ効果ですね』


「マジかよ最大にするわ」


 俺の素材と所持ポイントが許す限りパラメーターを上げる。強度も勿論上げて……、いやもうこれ楽しくて仕方ないわ。


『コチラもデザイン完成しました。よろしいですか?』


「よろしいです!」


 こうして、俺の新ウェポンが完成した。


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