ギルド。
駆け込んだギルドの中は人が殆ど居なかった。
ポツポツと居る人は、此処がどんな場所なのかを調べに来たって感じであり、利用者を数えるならゼロである。
外から見ると体育館みたいな箱物建築だったが、中は思ったより狭い。役所みたいな受付と、丸テーブルが等間隔に置かれて酒場っぽい雰囲気も有る。
受付にも人は居ない。そこには最初から何かが書いてあるワイヤーフレームがポップしてて、多分あのホログラム使って事務的な手続きもセルフで行うんだろ?
人情が無ぇって言うか人影すらねぇぞ。
それに、入口から受付までコンビニの倍程度の広さしかなく、外から見た残りのスペースは
「あの、アキラさん……」
「ああミクちゃん、もう大丈夫?」
背後からミクちゃんに声を掛けれて振り向く。しかし、何か違和感。
「……………………あれ? サソリくんは?」
そうや、ミクちゃんはサソリくんに乗せてたはず。サソリくんどこ行った?
「それが……」
『ワークスティンガーは当施設の裏手に回りました。倉庫兼解体場、…………って設定の空間に入る入口が裏手に有るので』
俺の疑問に答えてくれたのはレティだ。しかしなんか変な事言ったな今。
「設定?」
『ゲームですから。本当に職人が解体するのでは無く、解体された
「ほうほう、身も蓋もねぇ説明ありがとよ」
『当機は
「そう言うこっちゃねぇんだわ」
とにかく、サソリくんはこの施設の裏にある謎空間に獲物を運んでくれたんだな。
「で、こっからどうするの?」
『ログをどうぞ』
・狩猟物解体実績解除。
・マテリアルボックス解放。
「これは?」
『素材の収納限定で使えるインベントリシステムです』
…………なるほど。大体理解した。
「ギルドで解体された素材や、外で採集した薬草とかを仕舞える機能だな? で、売却や加工にしか使えないと。
『いつも察しが良くて助かります。ちなみに、プレイヤーが自分でも解体した場合も収納は可能です。ですが、一度仕舞うと二度と出せなくなりますし、収納可能と判定される解体基準が厳しいので、あまりオススメはしません』
そりゃ、ポイント惜しんで獲物をダメにする方が良くないよな。でもその内、自分でもやって見たくはある。
「基本はギルドに任せるよ。でも、余裕が出来たら練習したい」
『その場合でしたらレティが教える事も可能です』
「頼むよ」
他にも、此処でパーティやクランを結成したり、討伐クエストを受けたり、プレイヤーがプレイヤーに対してクエストを出せたりする施設らしい。
『例えば、システム処理では無く自分の手で装備を作りたいと言う職人気質の方が、丸のままで素材が欲しい場合とかに依頼出来ます』
「あー、ギルド解体せずに、自分で解体するから獲物丸ごと持って来いって事か。生産職プレイも有りなん?」
『有りですね』
「早々死にそうに無いが? コンセプト的には有りなのか?」
『有りです。腕の悪い職人ならば勝手に干され、稼ぐ為に狩人へ戻って程よく死にます。そして腕の良い職人ならば、その作った武器で他のプレイヤーをより危険な場所に駆り立てるので問題ありません』
なるほどな。本人が死なずとも、その作った武器が優秀であればあるほど、それを持ったプレイヤーが危険地帯に足を運ぶって事か。
「てことは、プレイヤー間のポイント移動も有りなんだな?」
『両者の合意が必要ですが、有りです。条件付けをして、達成時に自動払いなどの設定も可能です』
「と言うと?」
『例えば、アキラ様がプレイヤー・ミク様の依頼でレベリアストの生肉を取ってきて欲しいと依頼されたとしましょう』
「……え、アレの肉って食えるん?」
『可食部位なので可能です。そして、プレイヤー・ミク様の支払い能力に不安があったアキラ様は、先払いを要求したとします』
「え、マジで食えるん!?」
『可能です。しかしプレイヤー・ミク様も、アキラ様が生きて帰って来るかも分からないのに先払いは嫌だと主張したとします。その場合に--』
「ねぇ美味いの!? 奴の肉は美味いのか!?」
『--あの、説明止めて良いですか?』
俺は自分の手首に頭を下げた。ごめんなさい。
謝って許してもらい、なんとか説明を続けてもらった。面倒かけてごめんなレティ。
それで、えーと、…………ふむふむ。
要は俺とミクちゃんが仕事の合意をして、俺が仕事を達成した場合にミクちゃんのハントレットから強制的にポイントが貰える契約を結べるって事で良いのかな?
『正しい解釈です』
つまりあれだ、その契約さえしとけば、お金のやり取りは安心って事だな。
仮に、もし、もしだけど、ミクちゃんが俺に一晩ポイントで買われたとする。
で、ヤル事ヤッた後に俺が「金は払わねぇ! 払いたくねぇから死ねぇ!」って凶事に及んだとしても、先に契約さえしとけばミクちゃんが死のうが生きようが、レティがミクちゃんにポイントを払ってくれるシステムだ。
うん。例えが最悪だな。大丈夫やらないよ。俺は風俗嬢を尊敬してるし。襲わない襲わない。
いや、だって、相手が好みか否かとか、清潔かどうかはその辺に置いといてもさ、素性の知れぬ奴と個室で、二人っきりでサービスをする仕事だよ?
めちゃくちゃ危ねぇじゃん。そりゃ高い金取られても仕方ねぇって。
もしヤベェ奴が客で、暴力振るわれても大した事出来ないんだぞ? 常時監視されてる訳じゃないし、風俗嬢の所属してる場所の人達だって、連絡貰わなきゃ迎えに行くことさえ出来ない。
仮に通報出来ても、助けが来るまではソイツと二人っきりよ? 死ぬわ。余裕で死ねるわ。
という訳で、そんなリスクを犯してまで仕事してるお嬢さん方をマジで尊敬してるよ俺。危ないのに世の中の男性を癒してんだろ? 消防士みてぇに高潔な仕事じゃんね。
……話しが逸れたな。
「なんの話してたっけ?」
『痴呆ですか? アルツハイマーですか?』
「え、待って、死後の世界でも難病って継続するの? 悪夢じゃん」
死んだこの世界に転生したなら、難病くらいは取り除いてあげてくれ。
とりあえず、訳分からん事を考えてたら此処での用事は終わってたので、解体した素材をボックスに受け取り、解体手数料を支払ってから外へ出た。中に居た数人のプレイヤーは、俺の事を奇異の目で見てた。
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