射殺した。
レティから驚きの情報を貰ったあと、キッチリとレベも狩って町に帰って来た。
いや、まさか異世界転生フラグが立つとは思わなかった。ちょっと楽しみになった。
レティによると、チートを持って異世界転生する場合と、チート無しの場合では選べる世界に差があるらしい。
チート有りの場合はまぁ、ファンタジーラノベみたいな世界だそうだ。数種類の中から好きな世界を選べる。チート無しの場合は無制限で好きな世界へ行ける。SFチックな世界もありだそうだ。
で、貰えるチートはボス討伐時に使ってた武器防具や所持してたアイテムごと、アイテムポーチとウェポンラック機能が残ったハントレットを持って行けるらしい。つまりレティと一緒に転生出来るのだ。
その場合レティは転生先の世界について一定の権限を持って一緒に転生し、転生先でも俺を助けてくれる。
例えばその世界のアカシックレコード的な物に接続してアイテム鑑定能力とかが使えたりする。流石に何でもかんでも教えてくれたりはしないけど。
「いやぁ、モチベーション爆上がりしたわ」
しかも、その世界で死んだ場合にも、装備とかはロストするが今俺がこのゲームを遊んでいるのと同じ条件で戻って来れるらしいぞ。勿論レティも一緒だ。
『末永くご一緒させて頂きますね』
「頼むよ相棒」
『最初にバディやフレンズはボツになったかと記憶しておりますが?』
「呼び方が違うだけさ。奥さんや恋人を名前で呼んだって、関係性まで変わりはしないだろ?」
ところで、と俺は振り返る。
町の門を潜ってすぐなのだが、やはり後ろが気になってしまう。
『ワークスティンガーがどうかしましたか?』
「いや、大きいサソリちゃんが後ろに居ると落ち着かないからさ」
『追従設定ですから』
そう。俺はレイヴンの進化をするのに必要な素材を欲して、狩ったレベを早速運搬してもらってるんだ。
視線の先に居るのはクソでかいサソリ。いやサソリって言って良いのか? 尻尾の先にあるの、針じゃなくて
まぁ
農灰色でゴツゴツとした装甲を持った軽トラックくらいの大きさで、背中が平たく、そこにアームとテールを使って獲物を乗せて運んでくれるサソリくんだ。よく見ると愛嬌のある顔をしてるかも知れない。
デカ過ぎて怖いけど。
今はレティの言う通り、先を行く俺の後ろを着いてくる設定らしく、俺が立ち止まってる今はサソリくんも止まってる。
ちなみにサソリくんコレ有料だったんだよな。一時間2000ポイント。しかも値段はサイズ別らしく、もっと小さい奴とヤバいデカさのも居るらしい。
大物を狩った時用とか、ショップで大きな買い物をした時に運んで貰う用だと言う。
「で、何処に行けば?」
『
「ペナルティとか有るのかよ……」
治安は自助努力の癖に。
イノシシとかなら解体も学んだけど、流石にほぼ恐竜の解体方法とか知らないなぁ。素直にプロへ任せるか。
「でも、自分でも解体出来ると言うことは……?」
『ええ、お察しの通り。ギルドの解体は有料サービスです』
「世知辛ぇ世の中だぜ!」
その代わりミスが無く完璧な仕上がりだと言うので、素直にギルドへ向かう。なんなら
変なとこゲームチックだよなこの世界。
システムとリアルの曖昧さを噛み締めながら大通りを進むこと少し、何やら緩い人集りが前方に見える。大通りから広場に繋がる入口付近だ。
「なんだ、トラブルか?」
『そのようです。そして、現場にプレイヤー・ミク様の反応もあります』
「あ?」
聞き捨てならない事を聞いたので、俺はちょっと早足になった。
後ろに恐竜を二頭ほど乗せたクソデカいサソリを引き連れた、ダンボールアーマーの俺。そんな存在に気が付いた人々は控え目な悲鳴を上げながら道を開けてくれる。俺はモーゼか?
そして騒ぎの中心に辿り着くと、本当にミクちゃんが渦中に居て頭を抱える。俺が狩りに行ってる間に何があったよ。
「良いから寄越せってんだよ!」
「はなっ、離して……」
何やら太り気味の中年男性がミクちゃんの腕を掴んで、もう一方の手でミクちゃんが持ってるエコバックみたいな物を奪おうとしてる。
なんか大根とか刺さってるから料理の材料でも買いに来てたのかな? それで、男はミクちゃんからそれを奪おうとしてる。
ふむ? 人から奪う程に大根が好きな異常者なのか? それとも、初期ポイントを無為に使い過ぎてもう飯すら買えない?
………………後者っぽいな。というか前者だったらちょっと名前聞いてみたいわ。きっと
「てめっ、逆らうんじゃねぇ!」
そんな馬鹿な事を考えてる間に、埒が明かないと思った男は空いた手でミクちゃんの顔をぶん殴りやがった。
おっけ分かった。こうならない為にルームシェア契約をしたのに、彼女を一人にした俺の落ち度だ。責任は俺が取る。
射角を考えると貫通した時の二次被害が怖いので、俺はサソリに手招きすると、ちゃんと近寄って来てくれたサソリ君によじ登った。
サソリくんの背中は地上から1メートル半くらいのところにあり、そこにたった俺は自分の身長も加味して充分な射角を得られた。これで良し。
ポーチからレイヴンと矢を一本取り出し、無造作に番えて引き絞る。俺を見た周囲の人間からザワザワと何か聞こえるが全部無視して狙いを付ける。この高さから射れば、貫通しても矢は地面に当たる。
ああ、勿論矢は貫通力じゃなくて殺傷力の高い方を番えてる。殺す気だからな。さて、何処を狙うか。
頭は事故ると怖い。矢が滑って弾かれた結果ミクちゃんに刺さったら俺は誰に謝れば良いんだ。
悩んだ結果、順当に胸を選んでストリングを解放した。
ドローウェイトが80ポンド近く、更にガチガチに実用的な作りをしてるレイヴンから放たれる矢は獲物の身体を容易に貫通する威力だ。しかも、これだけ近いなら矢速も音速に近い。
バリュッと変な音がして、男は胸から血を吹いて倒れる。出血量を見れば心臓は確実に抜いたと分かる。それで、俺は更にもう一本矢を出して、番えて射った。
胸を穿ち、次は肺に刺さったか。三本目を出してもう一度射る。倒れて射られ、変に仰け反った男の顎下から入ってしまった矢は、脳までぶち抜いて殺したようだ。
ふぅ、害獣駆除完了。
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