目指す場所。
金は有ったのにマトモな防具を買えなかった事で、このクソダサいダンボールアーマーが段々恥ずかしくなって来た俺は、新しく買った矢のヘッドを交換してポーチに突っ込むと、そそくさと移動を始めた。
幸いなのは、俺が広めたお陰でダンボールアーマー着てる同士がそこそこ居て、俺だけが極端にダサい訳じゃ無いって事か。
だけど、あの人たちって外に出ないのに何時までダンボールアーマー着てるの? 馬鹿なの?
広めた張本人が思うのは酷いかもだけど、俺は戦闘を見越して広めたのだ。町で駄弁ってるだけなら私服でも問題無い。
さっき荷物を整理してポーチがスッキリしたからか、心做しか足が軽い。サクサク進んでもう町を出る。まぁ気の所為だな。アイテムポーチは中身がゴチャッてたからって重く感じる訳じゃないし。
今俺のポーチには新しい矢が120本、それと最初に持ってて中途半端にロストした旧式の矢が13本。これはヘッドが違うので別枠になってる。
あとレイヴン本体と、レイヴンが入ってたウェポンバッグ、ポーション、最後にナイフ。この六枠に纏まってスッキリした。タバコとライターはポケットだ。
「レティ、森には他にどんな獲物が居る?」
『申し訳ありません。直接的な攻略情報はお伝えできません』
草原を抜けて森に入り、先程の焼き増しみたいな形で森を探索する。その道すがら、レティに狙う獲物を聞こうと思ったけど初めて質問を拒否された。
「んぇ、ダメなのか?」
『はい、申し訳ありません。我々ハントレットはあくまで補助ですので、お伝え出来るギリギリが「この森に来れば獲物が居る」までだったのです。獲物の情報を伝える機能は、その獲物と遭遇して初めてアンロックされます。そして、詳細な弱点等はお教え出来ません』
ああ、そりゃそうか。リスタちゃんも「自分で調べろ」って言ってたもんな。全部レティ達に聞いてその通りに行動すれば問題ない、なんて逆にゲームとして問題だ。それつまりプレイヤーがハントレットで、俺たちはプレイアブルキャラクターって事だし。
ハントレットは攻略本では無く、あくまでチュートリアル等を手伝ってくれるナビゲーターなのだ。それを間違えちゃダメなんだな。
レティは確かに、森へ行って獲物を狩るとは言った。しかし獲物は指定して無いし、そこで何が起きるかも言わなかった。獲物の名前さえ、俺が見付けてから初めて教えてくれた。
ていうか、考えてみりゃ当たり前だよな。ゲーム始めて「さぁクリアすっぞ!」って意気込んでたら、ナビゲーターに「あ、ボスは○○って名前で○○な攻撃してくるけど、○○さえ有れば楽勝なんで○○を育てて行きましょうね!」とか言われたらブチギレるわ。
そんな、なろう系小説のタイトルみたいにゲームのネタバレしてくんじゃねぇぞって手首掻き毟るわ。
そう、此処はゲームなんだ。死後の世界って言う異世界だけど、ゲームなんだよ。
プレイヤーがプレイを望んだか否かに関わらず、この世界がハンティング・リィンカーネーションって名前のゲームであることに変わりは無い。
「…………ああ、そうだ。そう言えばこのゲームって何が目的なの?」
『……はい? いえ、リスタ様が仰ってましたよね? 適度に生きて、適度に死ぬのが目的ですが』
「いや、それはメタ的な目的だろ? ゲーム会社がゲームをリリースする理由が『お金稼ぎたい』からって、ゲーム内部の目標までそうじゃないだろ」
『ああ、そう言う事ですね。このゲームのゴール、エンディングは設定されているのか否かがお知りになりたいと』
「そうそう。流石にラスボスの名前とか種類とか居場所とかは聞かないけど、居るかどうかは教えてくれても良いんじゃないか?」
小声でコショコショと会話しつつ、早速レベの足跡を見付けて追跡を始める。
『そうですね。そう言えば、リスタ様はゲーム内での目標と特典に着いては説明されてませんね』
「…………リスタちゃん、うっかり多くない? そこも人間味あって可愛いけどさ」
ハントレットの使い方を聞いた時、忘れてた、こほんって言ったもんな。ドジっ娘属性か。ロリかショタなら推せる。お姉さんでもギリセーフ。オッサンのうっかりテヘペロだったらゴメンだけど俺リスタちゃんアンチになるわ。
『このゲームは確かに、ラスボスに相当するモンスターが居ます』
「おお、やっぱ居るんだ」
そうだよな。狩りゲーって言うんだからラスボス必要だよな。クソみたいに攻撃力インフレしてて三乙ギリギリが当たり前なつよつよドラゴンとか居るよな。そうだよな。
くぅぅう、狩りてぇ……!
『そして、そのボスを討伐された方には特典があります』
「おお、なになに。凄い強い弓とか作れちゃう素材? 逆鱗とか天鱗的な?」
いやぁ、楽しみだな。俺のレイヴンを強化していって、最後はラスボス素材で真の姿に……!
『いえ、転生権が与えられます』
なんて?
なんか今、ゲームジャンルが根底からひっくり返りそうな事言われなかった? 転生?
「なんて?」
『ですから、転生権です。ボスを討伐出来た方には、記憶を持ったまま転生する権利が与えられます』
…………う、うわぁ、要らねぇ。
「え、ヤダ。拙者ヤダ。なんでこんな天国みたいな世界から追放されなきゃいけないの? ボス倒したら罰ゲームとか聞いてないでござる」
ヤダよ! せっかく弓を自由に射れる世界で、自由に狩猟出来るのに!
「記憶を持ったまま転生って罰ゲームだろ! 弓を射りたいのに射れない国なんて帰りたく無いんじゃ!」
『あ、いえ、生まれ変わる時に出生国は選べますよ。日本以外で転生すれば大丈夫では?』
「えっ、あ、そうなの? …………でも、モンスターとか居る此処が良いなぁ。自由だしさぁ。地球って何処でも
弓猟出来る国でもさ、禁猟区とか禁猟期とか有るじゃん? 年中は射れないじゃん? それに狩猟対象もそんなに多く無いじゃん?
『でしたら、モンスターが居る世界に転生しますか? ボスをソロ討伐すると追加特典で、出身世界以外にも転生出来る権利に加え、
「何その話し詳しく」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます