買い物。
『では、契約にシェアシステムで割り込みます。プレイヤー・アキラ様の賃貸契約にミク様も50%契約で上書きを実行』
『上書き処理申請を認証。これより、アキラ様はプレイヤー・ミク様と家賃を折半する契約へと移行します』
「じゃぁよろしくね」
「は、はひっ」
何時になったら俺に慣れてくれるんだろうな、この子。
『では早速、ハウジングへ向かいますか?』
「いや、まだ買い物をしたい。それと家具も……」
「あっ、あ! 家具! わらひも! だひまふ!」
「…………もしかして酔ってる? お酒飲んだ?」
「のんでまへぇん!」
どんどん呂律が怪しくなるミクちゃんは、お酒飲んでないらしい。これでシラフかよすげぇな。
しかしまぁ、家具はミクちゃんもポイント出してくれるって言うのでそうしようか。全部じゃなくて、共用で使いそうな物だけ。というかミクちゃんもあんまりポイント持ってないしな。
レベ二頭で一万くらいだろ? 初期ポイントは鎧作った時に半分は飛んでるだろうし、一万と二千くらいかな。
「じゃぁ自分で使うベッドとかは自腹で買おう。四畳の部屋はそれぞれの寝室にでもして、六畳の部屋をリビングにしようか」
「はひっ」
「それで、リビングはどうする? 俺としてはラグを敷いて靴脱げる様にしたいんだけど、ミクちゃんは土足のままテーブルと椅子で過ごす方が良かったりする?」
「はひっ、……あっ、いぇ、えと、ラグでっ」
「……ホントに酔って無い?」
「よってまふん!」
…………まふん? 「ません」なのか「ますん」なのかで答えが変わるんだが。
とりあえず、ミクちゃんはラグ式で良いと言うからラグを選ぶ。あとクッションとローテーブル買って、靴を脱いでラグに上がる時、普通の靴なら良いけどブーツだと腰を床まで下ろさなきゃならないから、ブーツを脱ぐ時に使う椅子も欲しいな。
そうすると下駄箱みたいなのも欲しいからラグの近くに置いて……。
「あ、風呂場も鉄砲風呂みたいな奴からアップデート出来るな。賃貸契約切れる時は無駄金になっちゃうけど」
これがトマトなら完熟だなって感じのミクちゃんと根気よくコミュニケーションして、なんとかハウジングの設備を揃えられた。
これはもう買った時点でハウジングに実装されてるらしく、此処から実物を担いで行く必要も無い。
その後、ミクちゃんには少し待っててもらって、俺は必要物資を買って行く。矢をすげぇロストしたからな。買い足さないと。
あと矢のカスタムも必要だと理解した。今のままじゃその内死ぬ。
狩猟する時に使う矢は大まかに分けて二種類ある。発想としては銃の弾と変わらない。
要は貫通力を求めるか、破壊力を求めるか。この二点だ。
貫通力を求める場合は、心臓や頭を射抜いて即死させる場合に重宝する。下手に内臓を壊すと、内容物が盛れて肉が台無しになったりするからだ。
形としては尖って硬い事だけが求められる。削った鉛筆みたいな感じを想像すれば良い。競技用の矢も大体これだ。
破壊力を求める場合は、アローヘッドと呼ばれる
例えば大きな十字型だったり三叉だったり、アローヘッドに細工がされてて獲物に刺さると内部で刃が展開したり、色々ある。
共通してるのは、矢が刺さった場所を広く損壊させること。
利点は殺傷確率を上げられるところだ。例えば貫通力特化の矢ならば、心臓を掠める射角で射った場合にそのまま掠めて終わる。しかし破壊力特化のアローヘッドなら十字だったり展開式だったりで刃が広いので、掠めるだけでも心臓を斬り裂いてくれる。
まぁ本当に掠めた場合はアローヘッドが当たらなくても、貫通する時にウィングが心臓に引っ掛かって損傷させる事も有るだろうけど。要はアローヘッドがデカいと主要臓器を壊せる範囲も広いから、ちょっと狙いがズレても殺せるのだ。
例え殺せなくても、ただ棒が貫通しただけの場合と大きな十字型のアローヘッドが通過した場合じゃやっぱりダメージが違う。
そのせいで逆に、腸や膀胱なんて壊しちゃうと大変なんだけどな。腹を開けたら糞や尿が中からドバーっと出て来て、その時点で肉がダメになって食えなかったりする。
しかし、此処なら目的が狩猟までだから、食べれなくても良い。少なくとも、今の段階では。
「使い道無かったけど買っといて良かったぜ」
日本では弓猟が全面的に禁止されてる。だから狩猟用のアローヘッドなんて1ミリも必要無い。だけど俺は買った。何故かって欲しかったから。
そのお陰でこのゲームでも使えるのだから有難いことだ。
俺が買ったのは三叉タイプのブレード付きで、これは貫通力を保ちつつ、ブレードが内部を余計に斬り裂いてくれる物だ。カラーバリエーションは緑を選んだ。
俺が普段使う矢は狩猟用で
「アロー十二本入り3200ポイントと、アローヘッド十二個入り1800ポイントをそれぞれ十セット……、ジャスト五万か」
スッカラカンだ。賃貸契約と家具選びも合わせて八万使ってる。辛い。稼がねば。
せめて、このクソダサい防具は卒業したかったんだが…………。
このままじゃダメだ。そう思った俺は、その場で少し荷物を整理する。
要らなくなったアイテムはレティに言えばゴミとしてデリートしてくれるらしいので、俺はハンティングバッグをポーチから出して、もう使わないだろうラップとかダンボールの切れ端とか片っ端からデリートする。
「あの、アキラさん………?」
そこで、俺が変な事をし始めて困惑してるミクちゃんが声を掛けてきた。ああ、また放置してしまったな。
「ミクちゃん、悪いけど先に帰っててくれる? 俺はもう少し狩りに行きたい」
「あ、えと、一緒に……」
ごめん。それはちょっと遠慮したい。さっきは正直助かったけど、今度は最初から一緒だ。歩幅を合わせるの辛い。
「いや、出来ればミクちゃんには家の確認とかしてて欲しいんだ。キッチンとか使える状態なのか、風呂場はどうか、そう言うの見なきゃでしょ? それに、男の俺が居ると困る事とかあるかも知れないし。これから一緒に暮らすんだし、そう言う地味に溜まりそうな
トイレに生理用品とか起きたい派だった場合、一緒に内見(契約済み)すると嫌でしょ。他にも俺に見られたくない物とかあるかもだし。
そんな尤もらしい事を言うと、ミクちゃん「一緒……、暮らし……」とか呟いて赤くなったあと、凄い勢いで何回も頷いて走り去った。
…………あ、治安の話し的に、家まで送るくらいはした方が良かったかも?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます