機能解放。
「とにかく、助けてくれてありがとな」
俺は乱入して来た女の子にお礼を言う。
ダンボールアーマーの下には紺色のブレザーを着てて、黒髪で、髪型はシャギー気味のツインハーフアップだったのかな? 今は地面をゴロゴロしたせいで台無しだから分からん。
正直なところ、本当に助かった。
まだ購入したポーションがどの程度効果が有るのか分からない現状、
そうも言ってられないから気合いを入れた訳だが、割り込んでタンク役を務めてくれた女の子が頑張ったお陰で、俺は無傷だ。
つまりまだ稼げるので、もしこの子が今の怪我でポイントを稼げなくなったって言うなら、多少の面倒だって見るくらいには感謝してる。
全く、ポーションの効き目くらいは聞いとけば良かったぜ。まぁレティが問題視して無いんだから、ポーションで治ったんだろうけどな。それでも感謝は変わらない。
「とりあえず、お互いの自己紹介やら事情の説明やらは後で良いか? まず獲物の処理をしたい」
「あ、はい。らい丈夫、れふ……」
噛み噛みやん。本当に大丈夫か?
顔を真っ赤にして俯いてる女の子は、よほどボッサボサの髪の毛やダッサいダンボールアーマー姿を見られたのが恥ずかしいのか、ずっとアワアワしてる。シャイなのかね?
『その前に、一つよろしいですか?』
女の子を心配してると、今度は女の子の手首から声が聞こえた。この子のハントレットだろう。
「どうした?」
『まず、初めまして。当機はミク様付属のハントレットでございます。今回ミク様は、当機の指示にて行動し、プレイヤー・アキラ様を付け回すような行動を取りました。決してミク様が望んでそうした訳では無いことを一つ、ご理解頂きたい』
レティやリスタちゃんと全く同じ声で喋る女の子側のハントレットは、真っ先に女の子の行動について弁護した。それらを含めて後で良いかと聞いたんだが、今話すって事は相応の理由が有るんだろう。
「大丈夫だ、気にしてない。あれだろ? ダンボールアーマーの件で、俺が他にも何か有用な事をしないか見に来たんだろ?」
『
ああ、そういう事か。なるほどね。完全に理解したわ。いや知ったかぶりじゃなくてマジで理解した。
要はあれだ、ハイエナ行為じゃなくて、ちゃんと戦闘に参加した形として、パーティメンバーの働きに相応しい報酬を寄越せと言うわけだ。
レティが言うには肉食獣を狩ると、草食獣とは違う実績解除が行われるらしい。女の子のハントレットはそれが目当てなんだろう。
確かに、女の子だけだったらレベとか狩れそうに無い。なら、狩れる奴の手伝いをして分けてもらうのが最適解だろ。
「構わん。何体欲しい? って言うか、なぁレティ? この場合は自分で仕留めなくても大丈夫なのか?」
『ダメですね。しかし、半矢の個体がまだ数体、生きてます』
「ああ、生き残りを女の子がトドメ刺せば良いのか。…………と、言うわけらしいが、ハントレットくん? 今生きてる個体をそっちが総取りって事でどうだ? 仕留め切ってるのは俺が貰う」
『ありがとうございます。とても助かります』
「トドメはこれ使えよ。貸してやる」
俺は近くでくたばってるレベの首からナイフを引き抜いて、そのまま女の子にナイフを握らせた。
いったい何が起きたのかと女の子がアワアワしてるが、その間にも生きてる個体が死ぬかもしれない。ハントレットが女の子を急かしてトドメを刺させる。ギリギリ生き残って
「じゃぁレティ、売却よろしく」
『では、獲物に触れてください』
「んぇ、そんな制限あんの?」
『間接接触でも大丈夫です』
間接って事は、刺さった矢に触れたり、手に持った何かで突くだけでも良いのか。
と言っても矢は貫通してるか、どっぷり体内に埋没してる。触れようが無いので、俺はポーチからレイヴンを取り出してその先でチョンと獲物に触れる。
【所持ポイント:39250】
・レベリアストA評価売却:5000P
・狩猟実績解除。
・ハウジングシステム解放。
・肉食獣狩猟実績解除。
・ハイウェポンシステム解放。
・狩猟物売却実績解除。
・ウェポンラックシステム解放。
………………な、なんか、いっぱい増えたな。
「レティ、説明よろ」
『畏まりました。まずハウジングシステムは、町の不動産に関わるシステムの解放です。物件の賃貸や購入、改造、改築などの機能が当機に追加されました』
「あ、これ解放しないと寝る場所すら無いのかよ」
えーと、狩猟実績と肉食獣狩猟実績が別ってことは、草食獣でも良いから、とにかく何か獲物を狩れって方針なんだな。なるほど、危険を排除して暮らすのは良いが、安寧過ぎるプレイも認めないと。せめて最低限の狩猟はしろってことか。
「で、ハイウェポンってなんぞ?」
『
「うわマジかよ男の子が喜ぶやつじゃん」
当然、俺も喜ぶ。帰ったらレイヴン強化してみよっと。
『最後のウェポンラックシステムですが、コレは武器専用のアイテムポーチです。アイテムポーチと同じく十枠有りまして、しかしスタック機能は有りません。ですが、アイテムポーチの容量を圧迫しないので重要な機能です』
「それは助かるな。矢は入る?」
『矢は消費アイテム枠なので、アイテムポーチですね。それと、現在アキラ様がお使いの武器はまだ、ウェポンラックに収納出来ません』
「それはなぜ?」
『ハンティング・リィンカーネーション製の武器に適応されるシステムだからですね。アイテムポーチはマザー、失礼。リスタ様が持ち込みを認めた生前のアイテムと、
……………………なるほど。つまりこのゲーム内で、『武器』と言う属性を持ったアイテム専用のシステムだから、外から持ち込んだ道具にはその属性に纏わる情報が無いって事か。
だって、人によってはその辺の棒だって立派な武器だもんな。フライパンだって武器に出来るし、なんなら動物の死骸だって足持って振り回せば棍棒になる。
だから「いやコレも武器だし」って言い訳してウェポンラックをアイテムポーチの増加枠として使えないように、ゲームが定めた『武器』ってカテゴリー以外は収納出来ないんだ。
じゃないと、俺もその辺にまだ転がってる獲物を「これ武器だし」って言ってウェポンラックに収納出来てしまう。
「今は、と言ったな? つまり、ハイウェポンシステムで加工すればレイヴンも『武器』判定貰えるってことか?」
『その通りでございます』
なるほどな。良く出来てるわ。
『では、解放したかった機能は確認出来ましたので、残りの獲物も売却してしまいましょう』
「これ、体内残った矢はどんな扱い?」
『ロスト扱いですね。ですが、解体して取り出すのはオススメ出来ません。ログにある通り、狩猟物の売却には評価が着きます。これは売却した獲物の損壊率などから価値を算出したものでして、売却価格に影響します』
「マジか」
『A評価で100%の売却価格となり、Bで80%、Cで50%まで下がります。逆にS評価ならば120%で販売されます』
ふむ、四段階評価か。首をぶっ刺してA評価なら、よほどクソみたいな狩り方をしなきゃB以上は硬いな。Cってどんだけ下手くそに狩ればなるんだろうか。価格半減って相当だぞ?
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