ゲームスタート。
『お配りする初期アイテムは、ポイントの管理を初めとした様々な機能を持った腕輪型デバイス【ハントレット】でございます。今皆様の両腕に転送させて頂きますので、ゲーム開始後にご活用下さい』
クリスタルさんがそう言い終わった時には、俺の両腕に突然、
デザインはシンプルに一直線の刺青だ。青銀のビニール紐を手首に巻いた様な感じになる。
あ、うわ、もうこれ銭湯に入れない奴じゃん…………。
…………ん? あ、いや、こんな刺青無くても、もう俺って死んでるんだからどっちにしろ銭湯には入れないんじゃないか?
うん、じゃぁ良いか。どうでも。
しかしアレだな。刺青にしか見えないけど、『強制的に腕輪を装着』ってシュチュエーションはまるで、バトルロワイヤル系のデスゲームでプレイヤーに装着される爆薬付きの首輪みたいで、少しゾッとするな。
『説明は以上です。…………では、特典アイテムの選択後、ゲームを開始しま--』
「--あぁ、いや、ちょっと良いかなクリスタルさん。ハントレットの操作方法も、ゲーム開始後に自分で探すのかな? 教えて貰えない感じ?」
さすがに、ゲーム進行に必須のデバイスを使えないままゲームが始まるのは辛いと思って、俺は少しクリスタルさんに近付いて質問してみた。
セリフを遮る形で声を出したのは申し訳ないけど。
『………忘れてました』
忘れてたんかーい。クリスタルさん、無機質な声なのに少し人間くさいよな。もしかして中の人が居るシステム? CVどなた様?
『--こほんっ! …………失礼しました。ハントレットは音声入力とタップ操作によって使用します。音声入力については、皆様に分かりやすく言えば補助用AIのような物が積まれていると考えて貰えれば、その認識で問題ありません。ポイントの確認やその他機能を利用する場合には、音声入力の他にハントレットからホログラムで画面表示がされますので、その画面をタップしての操作も可能です。それでも分からなければ、ハントレットに操作方法を口頭で質問していただければ、ハントレットが回答します』
「……ありがとう。よく分かったよクリスタルさん」
心做しか早口に思えるクリスタルさんの説明にお礼を言う。
要は「
『それでは、特典アイテムを順番に選択していただき、順にゲームを開始して頂きます』
「あ、じゃぁ丁度良いし、近いから俺が最初で良いかな」
『お選びください』
位置的にクリスタルさんへ質問をした俺が一番近い。このまま俺から参加で良いだろう。アイテムも決まってるし。
モブの視線が俺に刺さるが気にしない。
クリスタルさんから唯一リアクションを貰ったり、真っ先にゲームに飛び込む姿勢を見せたり、モブ達から見たら俺は結構な異常者なのだろう。
よく考えなくても、突然光る水晶から「お前は死んだ、だから危ないゲームに参加させる」なんて言われて「はいそうですか」と従順な方がおかしい。
「俺の部屋にあるバッグを一つ、クローゼットの中にある奴だ。もちろん中身ごと」
『思い浮かべてください。……--承りました』
アイテム選択は一瞬。クリスタルさんと俺の間にある僅かな隙間、俺の足元に、黒い正四角形の立方体がニョキっと生えた。見た目は普通のコンテナだな。
しゃがんで開けてみると、中身は確かに、俺が選んだ私物が入ってる。
『ゲームを開始しますが、プレイヤーネームを設定しますか?』
「……へ? あぁ、うん。そうだな」
まさかクリスタルさんから声をかけられるとは思わずビックリしたが、プレイヤーネームの設定とやらもクリスタルさんの仕事の一部なのだろう。
質問したから特別にお声がかかったとかじゃないのだろう。
「……まぁ、捻る必要も無いよな。俺の名前はアキラで頼むよクリスタルさん」
俺の名前は
『念の為に聞き返しますが、プレイヤーネーム・アキラでよろしいですね? プレイヤーネーム・アキラデタノムヨクリスタルサンではありませんね?』
「んふふッ…………! う、うん。三文字でアキラ。それで頼むよ」
『承りました』
まぁ馬鹿みたいなやり取りだったが、口頭で決めてるのだから有り得なくは無い。時たま信じられない様なふざけたクレーマーとか居るもんな。うん。
だが俺はクリスタルさんが意外とお茶目に思えて、少し楽しくなってしまった。思わず笑っちゃったもん。
『………それではプレイヤー・アキラ、良い死出の旅を』
「ああ、ありがとうクリスタルさん。良い旅にして来るよ」
邂逅してまだ十分程の相手であるが、俺はもうクリスタルさんに少なくない親しみを覚えていた。精一杯の気持ちを込めて言葉を返した。
さて、俺は今からゲームに転送されるらしい。
どんな転送方法なのか。一気にバシュッと送られるのか、霧のように薄くなってゆっくり送られのか、自分の身に何が起きるか分からなくて少々恐怖を感じる。
ただ、クリスタルさんが良い旅をと言ってるのだから、悪い事にはならないだろう。
「ひぃッ………!」
「うわぁっ」
「ん?」
身構えていると、後ろから悲鳴が聞こえる。
チラッと視線を送ると、彼ら彼女らの視線は俺の足元に向かっていて、つられて俺も自分の足を見下ろすと、……俺の足が無かった。
「そっちかー」
良く考えると、あれも確かに狩りゲーと言えるかもしれない。そっか、
そんなアホな事を考えてる内に、俺は足元から徐々に分解されていく。恐らくは転送先の何処かで消えた俺の足が再構築される様に転送されてるんだろう。だって黒い玉方式だもん。
十数秒待っていたら足から膝、腰、腹、胸と消されていき、最後に顔だ。なかなか怖いぞコレ。
うん。いや、これ実際に経験すると相当怖いぞ。ピッチリ黒スーツの戦士たちはよく毎回この転送に耐えた。慣れか? 慣れたくねぇなぁ……。
あー、転送されて行く。あ〜……………………。
--…………。
そして、転送が無事に終わり、俺はまた見知らぬ建物の中に居た
どうやら、ゲームスタートらしい。
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