リビルド・アーチャー 〜死後の世界で遊び抜く。生き返れなくて良いから、ひたすら此処に居させてくれよ。〜
ももるる。【樹法の勇者は煽り厨。】書籍化
輪廻の部屋。
『突然ですが、皆様はお亡くなりになりました。ざんねん』
…………………………
意識が覚醒した瞬間、俺は突っ込まざるを得なかった。寝起きから突っ込ませるの止めてくれ。
そこは白い部屋で、ただ、ただ白い部屋で、もう巨大な白い部屋だった。他に感想が思い付かないくらいに豆腐ハウス。
……で? 俺は、その、なんだ? どうして、なんで此処に居るんだ?
身体を確認すると、特に怪我とかはしてない。白いティーシャツの上に黒いシャツを着て、下はベージュのチノパンだ。
うん、ファッションに興味が無い男の典型ファッションみたいな格好だな。間違い無くコレは俺だ。
こうして自分が自分だと分かるのに、でも俺は自分が今まで何をしていたのか、それを全く、微塵、ほんのちょっとも思い出せない。
たった今目覚めたのだから、つまり気を失ってたはず。なのに気を失うまでの記憶すら無い。俺は何処で何をしてた? なんで此処に居る?
一応、この白い部屋に先程響いた声を信じるならば、思い出せない記憶の時間に、自分は死んだって事なのだろうか。
つまり、此処は死後の世界か? 天国?
状況を確認する為に、部屋を見渡す。見ると俺以外にも人が居て、巨大な部屋の中央には何かが有る。
あれは、…………なに? 巨大なクリスタル? それが何やら床から浮いて、ゆっくりと回転してる。
近寄りながら観察すると、そのクリスタルは某ゲームでひたすら「聞いて感じて考えろ」と訴えかけてくる光の何かに似た結晶体だった。
その、なんだ? 俺はこれから光の戦士にでもされるのか?
そうか。
『皆様にも、文句や疑問もあるでしょう。ですが、皆様が現世で亡くなって居る事実は動きませんので、あしからず。…………では、状況の説明を致します』
中心部には、ざっと目測で200人程か。大人だったり子供だったり、そのくらいの人数がクリスタルの前に集まって、全員がクリスタルを見ている。
どうやら、先程から聞こえる声はこのクリスタルから発生してるらしい。ならばクリスタルと呼び捨てにするのは失礼か。仮称クリスタルさんとでも呼ぼう。
親切なクリスタルさんは、これから俺達に状況の説明をしてくれるらしい。優しいな。俺はマジで何も分かってないから助かる。混乱し過ぎて逆に冷静になってるまであるぞ。
『皆様は死んで、次の生に向けて魂の再利用をするため浄化が施されます。しかし、一度に大量の処理を行うとシステムに負荷がかかります。なので皆様には、こちらで用意した命の危険が伴うゲームを遊んで頂いて、適度に生き延び、適度に死んで頂きます。そうやって処理の負担を軽減する仕組みになっております。』
ふむ、クリスタルさんも面白いことを言うな。
適度に生きて、敵度に死ぬ。……ってなんだよ。生きる事も死ぬ事も、普通はどうやったって劇的だぞ。適度な死なんて有るもんかよ。
しかし、そうか。これは俗に言う異世界転生って奴? いや若干違う?
死後の世界に来てるし、「死ね」って言うからには今を「生きてる」とも言えるし? 死後の世界って言うの異世界に転生したようなモンだよな、これ。
『さて、皆様にプレイして頂く当ゲームは、ハンティング・リィンカーネーションと言います。皆様の文化で言うと狩りゲーと呼ばれるジャンルのゲームに相当します』
クリスタルさんの説明が、周りが騒がしくて集中出来ない。クリスタルさんの声は脳に直接響く感じなので周りが煩くても聞こえるが、単純に気が散る。
既に死んでるとか、この後も適度に死ねとか、ゲームで遊べとか、クリスタルさんから一方的に流し込まれる情報に怒りを覚える人も居るらしく、そう言う人が暴れてるようだ。
騒いでクリスタルさんを罵倒したり攻撃したり、他にもただ呆然としたり泣き出したり、とにかく周りが騒がしいな。黙ってクリスタルさんの説明を聞くくらい出来ないのかよ。
そんなんだから死んだんじゃないのか。んん〜、どうなんだいキミィ?
…………いやこれ盛大なブーメランだな。俺も死んだから此処に居るんだし。
まぁ良い。要するに、死んだ魂を再利用するけど、その処理を一度にやるとシステムがダウンするかもしれないので、順番に少しずつ処理するから一列に並べオラァって言いたいわけだろ。並ぶ順番はゲームで死んだ順でご招待だ。
………………やっぱり
『当ゲーム、ハンティング・リィンカーネーションのプレイヤーは当然ながらリスポーンもコンテニューも出来ません。残機ゼロでプレイして頂きます』
ふむふむ。つまり、狩りゲーと称してるけど、要は生身で狩猟生活をしろって事ね。その狩猟の対象はモンスターをハンティングする某ゲームみたいなバケモノなんだろうけども。
んー、良いな。狩猟にはとても興味ある。正直なところ、俺の夢の一つだった。とある理由で叶わなかったが、死後に叶うのなら死んで良かったとさえ言える。
ああ、俺、これからガチ狩猟させて貰えるのか。…………嬉しいなぁ。
『ゲームの中でモンスターを狩猟し、それを売却するとポイントを得られるシステムです。ポイントは買い物をしたり、武装の強化をしたり、様々な利用方法が御座います。…………ですが、詳しくはゲーム開始後にご自分でお調べ下さい。調査、試行錯誤もゲームの一部でございます』
んん、説明を投げられてしまったな。まぁでも、運営が俺達に死んで欲しいのだからしょうがないだろう。簡単にでも説明があるだけまだ有情だ。
此処までで分かったのは、俺達は死んでいて、
参加するゲームのジャンルは狩りゲー。モンスターを倒すとポイントが手に入る。ポイントはお金に相当する財産だと予想される。
あと欲しい情報は、フィールドとモンスター、そしてゲームで使える武器だろうか。
狩りゲーと言われたが、クラフト要素が絶無とは言わないだろうし、最悪石と木の棒を組み合わせて自分で作れなんて言われる可能性もある。
それはそれで楽しそうだが、
まぁそれも、始まれば分かる事か。今考えても仕方ない。
『ちなみに、ゲームをプレイするにあたり不必要な情報として、皆様のトラウマとなりうる
なるほど、
確かに死ぬ寸前の記憶なんて、無いなら無いで良いかも知れない。人によってはトラウマ確定だったり、心を病む要素だったりするもんな。
『…………さて、次にゲームをプレイする皆様に初回特典と初期アイテムの配布を行います』
はははっ、死ぬ危険があるデスゲームなのはそうだが、初回特典と初期アイテムとか、いよいよ本当にゲームじみてきたな。
『特典は、皆様が生前に所有していたアイテムを一つ選んでゲームに持ち込む権利となります。アイテムはこの場所で選んでいただきます。なお、箱などの入れ物にまとめてある物でしたら、それで一つとカウントします。良く考えてお選びください。選べるアイテムはプレイヤーの身の丈以下、総質量以下の物に限定されますので、車や家を選ぶ事は出来ません。あしからず』
やらされるゲームが狩りゲーで、生前のアイテムを一つ持っていける。
この時点で俺は選ぶアイテムを決めた。
むしろもう、早くゲームを始めたくてワクワクしてすら居る。
最初はふざけた状況に呆れ、憤りも多少はあった。だが話しが進むにつれて、此処は天国かと感動し始めてる。
まぁ死んで此処に居るらしいので、実質本当に天国みたいな場所なのだが。洒落が洒落になって無いのが洒落てる状況だなコレ。
そんな風に喜ぶ俺をよそに、仮称クリスタルさんの説明はまだ続く。
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