第2話 過去と現状とその進行形

第2話


「うぅ、懐かしい夢だったなぁ…」


久々に見た悪夢に頭を悩ませながら、起き上がる。


「おっと、やっぱり目が片方ないとバランス取り辛いな…」


あの後、俺の眼は潰れて失明した。


その事自体は後悔…後悔……後悔はしてないが、今でも疼く事がある。


そして、何より重要なのが…


「はぁ、今日は女の人に会いません様に。」


…どうやら、俺はになってしまったらしい。


聞く人が聞けば、鼻で嗤うレベルの事かもしれない。


俺だって他人事なら笑ってたかもしれない。


でも、これは自分事。


あの日からどうしようもなく、女性が怖くなってしまったのだ。


俺の目には、全ての女性が俺に増悪を向けている様に見えるのだ。


全てが例外なく、あの時の先無と同じ眼をひている様に感じ、心が引き裂かれそうになる。


「女性専用車両ならぬ男性専用車両とか作ってくれないかなぁ…」


本当に切実に願う案件だ…


まぁ、むさ苦し過ぎて、別の意味でやられそうではあるのだが…


「そろそろ、行くか…」


本来なら先無と同じ共学の高校に行く予定だったのだが、今の俺がそんな地獄に行ける訳がない。


結局、俺は地元の男子校に行く事になった訳だ。


そして、一人暮らしにもなった。


それに関しては生活力は金以外は俺が1家ナンバーワンなので、普通にやっていけるので問題はナシナシなのだが…


「先無…」


彼女には、あの日から一度も会っていない。


いや、会える訳がない。


「ちくしょう…」


思わず頬に涙が溢れる。


くそっ、感情が落ち着かない。


俺は何を間違えたのだろうか?


俺は先無に何をしてしまったのだろうか?


ずっと考えて、ずっと答えが出ないを永遠に繰り返した。


ああ、やっぱり俺って…


「生きてる意味は無いのかな…」


ふと、そんな言葉が漏れた瞬間…


「そんな時は遊ぶのが一番です。そこで素晴らしい提案をしましょう!貴方もサボり魔になりませんか?」

「…何で此処に居るんだ?」


と、素っ頓狂な提案をしてくる奴が現れる。


俺はこの声を知っている。


この声の主は…


「それは勿論、貴方に会う為ですよ劔先輩♪」

「何で場所が理解わかるんだよ、気持ち悪いんだよ。ストーカーか、未來みらい?」


コイツの名は雨崎あめざき未來。


俺の妹の親友で、よく俺と遊んでいた子だ。


俺がこんなになってしまった後、会わない様にしていたのだが…


「えっ、それは…」

「えっ、マジでストーカーしてたの?」

「………それは兎も角、何か劔先輩にそう言われるのは釈然としません。」


コイツ、サラッと流しやがった…


「って、そんな事は良いんです!さぁ、遊びに行きましょう!劔先輩が遊びたいのは手に取る様に理解わかりますから!」

「何で理解わかるんだよ…」


いや、そりゃ学校と遊びだったら…ね?


「そりゃ理解わかりますよ。劔先輩の事ならね♪」


可愛く言っても何か気持ち悪いぞ、未來。


「辛辣だなぁ…って、また話が逸れそうじゃないですか!さぁ、善も悪も急げです!遊びに行きましょう!」


と、俺の腕に抱き着いて引っ張っていく。


そう、は…


…何故か、俺の恐怖症に引っかからないのだ。


まるで、俺がコイツを女性だと認識していないかの様に。


ぶっちゃけると、先無は絶壁…大魔境の谷みたいで、コイツは富士山みたいな感じだ。


なので、女性だと認識しない方が可笑しい。


今も現在進行形で腕をその柔らかい感触が支配している。


だが、それでも…


「何でなんだろうな、未來?」


…コイツの事はのだ。


続く

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