幼馴染に振られた上に女性恐怖症になってしまった件

クロスディアⅡ

第1話 プロローグ

第1話


俺の名前は十六夜いざよい つるぎ


普通の高校生だ。


えっ?そんな事を言ってる奴が普通だった試しが無い?


安心しろ、俺はちゃんと普通だ。


世界を染める純愛な闇ですらない、普通の男子高校生だ。


…まぁ、これから話すのは、そんな俺のちょっとした笑い話だ。


俺が間違え、後悔し、それでも答えを見つけて前を向いて歩ける様になるまでの群像劇と言ってもいい。


…少し厨ニ臭いか?


さて、これから先は俺達の物語世界だ。


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俺には幼馴染が居る。


名前を檻崎おりざき 先無すえ


俺達は仲がよく、ずっと一緒だった。


ずっと、それが続くと思っていた。


だが、現実はそう甘くなかった。


「先無、俺と付き合ってくれ!」

「えっと、劔君…」


最初は戸惑っている様だった。


だが、少しずつ陰りがある様な顔を見せ…


「劔君もそうなの?」

「えっ?」

「劔君も私の事をそういう目で見てるの?」

「そういう目?」


後で理解わかる事だが、俺はこの時は何も知らなかった。


ずっと隣に居る幼馴染の事を理解わかったつもりで居たのだ。


本当に嗤える位に傲慢だったなぁ…


「嫌!嫌、そんな訳がない!でも…でも……でも………!!!」

「だ、大丈夫か、先無?」


俺が駆け寄ろうとした瞬間…


バシッ!!!


「えっ…」

「ち、近付かないで!!!」


と、手を思い切り撥ねられた。


今まで見た事のない様な怯え顔を、俺に向けながら…


…その後は覚えていない。


気が付いたら家に帰っていて、気が付けば次の日の朝を迎えていた。


そして、何時もは一緒に登校する通学路を一人で歩いた。


ああ、世界が変わっているかの様だ。


モノクロの様に無味乾燥に映り、色が無くなったみたいだ。


教室に行くと、先無が居た。


だが、俺へと向ける視線が違った。


その目はまるで…


…まるで、心の底から憎悪している相手を見る様な目をしていた。


ああ、知らない!


そんな眼は識らない!!


先無がそんな眼を俺に向ける訳がない!


でも、現実はどう俺が言い聞かせても変わらない。


「あ、ああ…」


俺は震えが止まらず、後退りしか出来なくなっていた。


彼女の視線に耐えられず、目を背けようとする。


だが、それが不味かった。


ふと、そんな俺の事を不思議そうに見ている少数のクラスメイトが俺の視界に映る。


そのクラスメイトの一部、女子だけが…


…俺を睨んでいた。


先無の様な憎悪の眼で………


嫌だ、見るな!


俺をそんな眼で見ないでくれ!


「…帰る。」

「はぁ?何を言って…ちょ、待てよ!?」


クラスメイトが何か言っていた気がするが、俺の耳には入らなかった。


飛び出した俺は学校、その通学路の先々でを見続けた。


ずっと、ずっと俺をのだ。


「見るな!見るな!!俺を見るなぁ!!!」


俺は発狂しそうになりながら、家へと辿り着く。


この日、この時間帯なら母さんが家に…


だが…


「あら?どうしたの?学校は?」

「嘘だ、嘘だ嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ!!!」

「きゃっ、どうしたの劔!?」


俺は母さんを押し飛ばし、部屋へと急ぐ。


母さんが、母さんまでが先無と同じ眼をしていたんだ。


女が、全ての女が俺の事をそう様になってしまったのか!?


嫌だ、そんなの俺は耐えられない!


ふと、そんな時…


「アレは…」


適当に転がしていたボールペンが視界に入った。


…何だ、簡単じゃん。


「俺の目を潰せば、見なくて済むんだ♪」


俺は素早くボールペンを手に取り、構えて…


「これで助かる!!!」


思い切り、右眼に突き刺したのだった。


続く

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