第15話 魔族

魔族たちは恐れていた。


200年ぶりに人間たちを滅ぼすための体勢が整った。


そして意気揚々と出兵したものの、予想外の存在である勇者の出現により前線では数多くの魔族の同胞を失うことになってしまった。


こんなはずでは……


魔族の将である者は頭を抱えた後、作戦を変更する。


進軍をやめて一旦退却した後に急遽、作戦会議を開いて勇者の対策を取ることにしたのだ。


急に開かれた魔族軍の作戦会議。


会議では魔族の将は部下たちと一緒に腕を組んでウンウンと無い知恵を絞るように考えていた。


その中で1人手を挙げて立ち上がる者がいた。


「……何か良い策があるのか?」


「はい、良いかどうかわかりませんが、勇者よりも周辺に張り巡らせられている結界の方を先に解除してはどうでしょうか」


「なんだと?」


「人間共は小賢しくも結界を張り巡らせているために我々も攻め込む場所を限定せざるを得ない状況です。しかし先に結界を解除してしまえばどこからでも攻めることができます」


「なるほど!それは良い策だ!」


「どのようにして結界を解除するのですか?」


「ちょっと捕虜にしている人間に聞いてみろ。少し痛い目にあえば素直に話すだろう」


「そうですな」


こうして魔族たちは情報を得るために捕虜になった人間たちを呼び出して拷問部屋へと連れていった。


その結果、


「人間たちの中でも結界の存在すら知らぬ者が多かったようですな。やたらと偉そうな人間のひとりが唯一知っておったぐらいで、まあ、最初は偉そうな態度をしておりましたが、ちょっと痛い目に合わせてやったら素直にベラベラと喋っておりましたわ」


側近が報告する。


「それで、結界の解除の方法はわかったのか」


「どうやら王国のどこかに結界を張るための塔があるそうです。そこを潰せば結界が解かれるはずですな」


「それは、何処にあるのだ?」


「それはわかりませんな。ただあれだけの結界をはれるだけの魔力が必要な所は限られているはずです」


「ふうむ……龍脈、か」


「はい、龍脈の近くに塔があると推測されますな」


「ならば龍脈を視る者はおるか」


「はい、魔力を可視できる者がおりますので、その者を出しましょう」


「よし!」


こうして魔族たちも次の策に打って出るのであった。


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