第3話 ヴォルフ
オレの名前はヴォルフ。
この町の衛兵であり、町に入る砦の門番を務めている。
「平和が何よりだ」
何もなければ立っているだけ良い。
なんとも良い仕事だ。
それとは別に朝と夜に鍛錬の時間があるが、
門番として勤務している間は基本的にただ突っ立っているだけだ。
本当に良い仕事だよ。
「今日は何も問題が無いと良いな。」
そう言った後、フラグというものが立ったのだろうか。
「何か来るぞ!!」
目の前にはビッグボアに追いかけられて逃げている少年がいた。
ドドドドドドー‼︎
体長5メートルもある大きな猪がけたたましく走ってきており、少しずつ少年の近づいている。
ひぃぃぃ!
少年の方は全力で走りながら逃げているが、どうもそろそろ追いつかれそうだ。
「マズい」
こっちに来る。
町に入ってこられるとこちらに被害が出る。慌てて人を集めて槍と盾、剣を持った兵士たちが列になり武器を構えて前に出た。
ヴォルフも盾と剣を構えて襲ってくる魔物を待ち構えた。
すると、走っていた少年が
「うぐわぁぁー」
少年は激しく吹き飛ばされ、地面を転がりながら8mほど先で倒れてそのま気絶してしまった。
ビッグボアは止まらずこちらに突っ込んでくる。
「二手に分かれて挟み撃ちにするぞ‼︎」
門番たちは二手に分かれてビッグボアの両脇に移動すると、速攻で前脚の腿に槍を突き、さらに短剣でビッグボアの目を突いた。
ブギィィィィ‼︎
ビッグボアは激しく泣き喚く。
「ウォォォ‼︎」
ヴォルフは雄叫びをあげながら、正面から飛び出してビッグボアの眉間に剣を突き刺した。
「危ない!」
仲間の兵士が叫んだ。
ヴォルフは暴れるビッグボアに5メートル先まで突き飛ばされたあと、よろめきながらもすぐに態勢を整えて再びビッグボアと対峙する。
ビッグボアは動けずに苦しみながら呻き声を上げ威嚇している。
その間に両サイドに分かれた兵士たちは投石と弓で援護射撃をした。
弓がビッグボアの横腹に刺さり、さらにはビッグボアの後ろ脚に石を当てる
そして二人ほどビッグボアの腹部に剣を差し込んだ。
兵士たちの猛攻にたまらず顔を上げて苦しみ喚くビッグボア。
その喉元に目がけてヴォルフがトドメの剣を突き刺した。
ヴギィィィイ‼︎
ドスン!‼︎
大きな体躯をしたビッグボアの喉元から大量の血が吹き出して力なく横に倒れる。
「はぁぁ、終わった」
転んだ少年はよほど強く衝撃を受けたのか、走り疲れたのか、気絶したまま動かない。
「おい!救護班を呼べ‼︎」
砦から救護班が出てきて少年を診察する。そのあと担架で砦の中へ運ばれていった。
「あー、疲れた」
平和なんて言うんじゃなかった。
油断した自分を責めながらヴォルフは持ち場にもどる。
武器と防具の具合を確認し、どこにも破損の箇所はないかと点検しながら門番の仕事を継続し、夜には夜番の兵士と交代した。
「いやー、終わった終わった!!」
武器は返却。
防具を外して革靴を履き替え、身軽になったヴォルフはもう気楽になって帰る準備をしていた。
これからいつも通り、仲間と一緒に酒場に行く話をしている途中でヴォルフたちの上官がやってきた。
「おい!今日のビッグボアを退治した者たちはしばらくここに残れ!」
えーーー!?
嫌そうな顔をする者。
何か褒賞があるのかと期待する者。
めんどくさそうに何も言わず座る者。
門番の兵士達はぞろぞろと上官の前に並び、一応は姿勢を正して上官から指示がでるのを待った。
「今回のビッグボアの征伐、ご苦労だった!保護した少年は救護室で休んでいる。しかし、事情を聞きたいがまだ意識はもどっておらん!そこでお前たちにことの顛末を聞きたい!」
そう言った上官に、
ならもっと早く聞きに来いよ。とつぶやきながら兵士達はビッグボアに追われながら走ってくる少年を発見後、素早く討伐した。それ以上は自分たちは何も知らない。という内容で答えを合わせた。
むぅ。と唸る上官に何か褒美があるのか尋ねる同僚の兵士。
そんなもんあるかと激昂する上官からやれやれと逃げるようにヴォルフたち兵士は散り散りに去って行った。
「時間の無駄だったなぁ」
酒を飲み、よく焼けた肉、茹でた芋を食べながら仲間と語ちるヴォルフ。
「あら、なんかあったの?」
この酒場で働く女性がやってきた。
名前はマンサ。
小さい頃から共にこの町で育ち、大人になってもまだ結婚もせず安い酒場で働いている。
美人だが気が強く、屈強な男たちも彼女との口喧嘩には敵わない。
酒場では長らく憧れの存在だ。
「いやあ、ビッグボアと戦って討伐したんだよ。ほら少し腕の皮が擦り剥けてるだろ?」
腕をめくって少し赤くなったところを見せるヴォルフ。
呆れたようにマンサは答える。
「また無茶したの?自分の弱さをそろそろ思い知った方が良いんじゃない?」
「いや、オレの活躍で討伐したようなもんだぞ?とどめを刺したのもオレなんだからさ!」
力強く反論するヴォルフを軽くあしらうようにマンサは笑って答えた。
「あんた昔から体力しかないんだから、あと周りのサポートがあったからたまたまとどめを刺せたんでしょう?あんまり自慢してると笑われちゃうわよ?」
「そんなことねぇよ!」
「はいはい、すぐにムキになるんだから、昔から成長してないわね」
そういいながらマンサは調理場に戻っていった。
「せっかくの酒が不味くなっちまった」
渋い顔をしてヴォルフは悔しそうに酒を煽る。
同僚たちは苦笑いしかしない。
しかも温い目でヴォルフを見ている。
なんせ、二人のやりとりは昔からこうだった。
また、マンサがヴォルフを好きだということはここにいる仲間たちには周知の事実だった。
既に何人かはマンサに振られている。
なぜこんな奴を好きになったのか。
マンサ本人もそう言っていた。
知らないのは本人だけだ。
悔しいがヴォルフは良い奴だ。
面倒見も良く、戦闘も強くはないが仲間思いで危険があればすぐに前に出て仲間を庇ってくれる。
こんな小さな町に狭い人間関係でお互いが長い付き合いなのだ。
ただ恋愛などにはことのほか鈍いヴォルフ。
いつか天罰が下れば良いとみんながその場で頷き合った。
「今日も無事一日が終わったなあ」
たらふく食べ、酒を飲んで満足したヴォルフはそうつぶやきながら家に帰った。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢
・主人公 ヴォルフ
年齢23歳
金髪で短髪。
身長175cm
体重78kg
太ってはいない、筋肉質。
毎日鍛錬をしており町の治安に貢献している。
砦で門番をしている。
今後、色んな事件に巻き込まれる。
・マンサ
ヴォルフの幼なじみ
年齢は21歳
町一番の美人、綺麗で大人びた女性。赤髪。気が強い。
身長168cm
体重53kg
酒場のウエイトレス
小さい頃から主人公の事は好きだが素直に言えない。
ずっと片思い。
主人公は鈍い。
だからいつも口喧嘩ばかり。
「……でもやっぱり好き♡」っていう人。
舞台:王国から離れた辺境の地。
カルタゴという小規模の町には毎日色んな人たちが出入りしている。
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