第4話
着いた?
――ギッギッ、ギッギッギッ……
開けにくい?
そこの引き戸は開きづらいからね……。
――ギッギッ、ギギギギギギギッ……
……中の様子はどう?
……そんなにひどいの……。
……そこはね……しかたないわ、臭いは我慢して。
脱衣所はまだ良いよ、これから風呂場に入るから、鼻は塞いだ方が良いかもね。
戸は閉めないようにしたら?
さっ早く、風呂場に行って。
……嫌?
どうして……。
……すりガラス越しに……居るの?
……人の体?
……でも風呂場に入って行かないと、鍵はその中だもの。
行って。
……大丈夫だから。
……ダメってどうして?
……。
もしかして、何かやってる?
蹲ってるんでしょ。苦しそうに悶えているんでしょ。
……その人は今もお腹を切ってるの。
気にしなくて良いわ。
貰うのはそっちじゃなくて、浴槽に沈んでいる方だから。
早く。
早く早く早く。
……大丈夫、ははははは。
……うん。
……そこも開けにくいからね……。
――ギッギッ、ギギギッギッギギッ……
――グサッ……グチャグチャ、グサッ……」
蹲った人は、すごく苦しそうな声を、ちゃんと上げてる?
包丁で腹を何度も突き刺してるだけ?
腹を切り裂く、内臓の音が気持ち悪い……?
良かった……ちゃんとやってるのね……。
――グサッ……グチャグチャ、グサッ……
うぅおぉぉおって声、出してないの?
いないの……?
……足元でうずくまってるだけ? ははははは。
そんなに怖がらない。それより、浴槽はどう?
早く中を探して。中で沈んでる人が持ってるから。
……。
水が張ってるか……。
……底の方に何もない?
中に手を突っ込んで、探してみて。
……大丈夫、汚くないから。
……ホントよ。
――チャプン……
……。
……指? 何本もあるの? 他には?
……。
指しかない? もっと水を掬って探して。
――チャプン、ピチャピチャ……
……鼻もあるって……そんなのどうでも良いわ。
……くだらない物しかないね。
ふふふ、腸?
……内臓掬っちゃったんだ。
……どういう事?
えっその中を調べる?
――ネチャネチャ、グチャグチャ……
ははははははは。
カンが良いね。普通、柔らかいはずの腸に固いところあったからって、中を調べないよ。
そう、その中にあったのね。
……やりすぎって? そんな事ないわよ。
もう、後で良いから、早く鍵だけ取って捨てて、続けるわよ。
……そうか食べてたんだぁ……。
……うん、早く戻って子供部屋だよ。
うん?
笑い声が聞こえる?
私じゃないよ、誰?
……うずくまってる人が笑ってる?
そいつはほっといて。
よし、風呂場から出て、前と同じよ、階段ではちゃんと目を瞑ってね。
――ヒタヒタ、ヒタヒタ……
……。
――ギッギッ、ギギギギギギギッ……
……えっ廊下の先に誰かいる?
どんな人?
……赤髭の、太ったおじさんと……太った長髪のおばさん……。
うぅぅぅ、殺してやるぅぅぅ……。
……へ? どこ見てるって?
……2人が揃って……君を……じっと見てる……。
……無視して進んで……。
そう、その人達に向かって歩いていって。
無視しろ。
気にしないで。
良いから、早く。
――ヒタヒタ……
……。
……え、2人して階段を登って行った……?
……君と一緒にここまで来るつもりかも……。
階段は目を瞑ってよ。
……大事な事なの。
――ドスドスッ、ガンガンッ、タタタタタタタタッ……
……小動物が激しく暴れるような音の後に走り回る音?
……リビングの方ね。ついにネズミが壁を蹴破ったのかな。
――カサッ……カサカサカサカサカサカサカサカサッ……
……また虫? そいつらもネズミのせいで暴れているのかも……。
めんどくさい事をしなくちゃならないわ……。
君は早く上って来て。
私の所へ来て。
――キシッ……キシッ……キシッ……
――タタタタタッ……ダダダダダダタダッ
……こっちに向かって走ってくる?
――ギシッ、ギシッギシッギシッギシッギシッ
誰か階段を降りてきた?
――ハァハァ、ハァハァ……
前から苦しそうな息が?
……吐息がかかるの?
……でも、そのまま歩き続けて2階に来て。良いわね。
――ギシッギシッギシッギシッギシッ
――ハァハァ、ゴホッゴホッ……ウェッ……
……。
……上から来た人は、どうなった?
横を通りすぎて、下へ行った?
……あの人、下のネズミ駆除に行ったのね……。
さっ、君は早く階段を上りきって。
目を開ないでよ。
向かいの部屋が開いてる可能性が高いんだから、目を瞑ったまま、そのまま廊下を歩いてきて。
――キシッキシッ……キシッ……
……。
――ヒタヒタ……ヒタ……ヒタ……
やっと戻ってこれたね。
私、寝室のドアの前にまたいるよ。君もドアの前に居るよね。
……あとは子供部屋に入って探すだけ。
絶対あるから心配しないで。
――ガチャッ、ギィィィィィ……
……中はどんな感じ?
人?
影だけ?
壁にいっぱい人の影が……ははははは。
そこはね……誰もないのに人影だけ大量に映るの……変なところなの……。
……タンスだって?
倒れているの?
……そう倒れているの……。
……そうね、音を立てたのはそれかも……まったく、何をやってんだか……。
鍵がどこかにあるはずよ。
家具を覆う白い布を剥がして、調べて、早く。
……。
――パシッ、ピシッ
……激しい家鳴り……私、なんか怖い……。
だって、ボロ家なんだもの……。
――ガタガタガタガタガタガタガタガタ……
……どうしたの。
――ガタガタガタガタガタガタガタガタ……
窓が急に振動しだした?
――ドタドタドタドタッ
子供? 部屋の中を走り回る足音が聞こえる?
子供が部屋の中を駆け回ってるの?
――ドタドタドタドタッ、タタタタタタタッ
無視して。
話なんかしちゃダメッ。
そんなことしてる場合じゃないでしょ。
……。
――ドタドタドタドタッ、ドタドタッタタタタタタ……
……。
見つけた?
……。
……まだ?
……。
……あっ見つけた?
子供が手渡してきた……?
……怒るよ、こんな時に……。
はあぁぁ……。
ため息も出るわよ。
……うん、すぐ寝室に来て。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます