第2話

 到着したの?


 ああ、見える、見えるよ。門の前に君がいるのが……。


 ここから丁度見下ろせる……。


 久々だなぁ……2年でも、なんか大人になったね……。


 そっちからは見えない?


 ……2階の右側の部屋。


 雨戸、半分開いてるでしょ。私、窓辺に立ってるよ。


 ……窓辺で……手を振ってるんだよ……。


 ……見えないの……?


 今、私と目が合ってるよ。


 ……真っ暗で何も見えない?


 ……残念だな……はははははは。


――カチッ


 きゃっ。


 ああごめん、いきなり照らすからビックリして。


 ……それでも見えてない?


 ……何も見えないか……。


 ん? ……何見てるの?


 ……その下の1階?


 何か見えるって?


 あれ? でも雨戸開いてるの?


 ええっ窓も全開になってる?


 ああっダメ、ダメダメダメダメ……。


 ……そうよダメ、それは見ちゃダメ。


 ああぁ……。


 ……うん、そこは和室 ……絶対行く必要なんてないから。


 早く目を逸らして。


 ……うん、絶対見ないでね、和室の方は絶対見ないようにして玄関から入ってきて、開くから。


――ザッザッザッ……


――ガチャリッ、ギィィィィ……


 ……。


――バタン!


 ……。


 入った?


 ……?


 ……どうしたの?


 おーい。


 勢いよく扉が閉まったからビックリしてた? ふふふ……。


 ……あと懐中電灯の光で廊下の奥に変な影ができて驚いてた?


 変な臭いもする?


 ははははは、なにそれ。


 そこは気にしなくて良いの。


 ……中は、おどろおどろしい雰囲気でしょ……。


 ……え、何?


 おーい。


 今度はどうしたの?


 ……ねぇってば。


 ふふふ……そうね、君は霊感があったね、わかるんだ、皆が。


 ……うん、そうだよ、君がここに居るのを嫌がってる。でも帰らしたがってるだけなのが大半だから、安心して。


 私の言う事を聞いて、その通りに行動してね。そうすればすぐに会えるから。


 ううん、駄目なの……寝室には鍵がかかっているの。


 ……入ったらね、すぐ左のリビングに行ってほしいの。


 何でかって言うとね、そこのどこかに寝室の鍵があるはずなの。


 ……そう、私、閉じ込められてるの。


 ……ありがとう、すぐ来て。


――ヒタヒタ……


 ……ああ……君が歩く音がするよ。


 床に耳を当てると聞こえる……キシキシって、床が軋む音が……。


 ……1階から音がしてくるよ……。


 そう、リビングは和室の襖の向かいよ。


 ……あんまり襖も見ないようにね……。


 念のため。


――ギィィィィ……


――ギィィィィ……パタン……


 中に入った?


 ……え? 家具に白い布がかけられてる?


 鍵はきっと家具の中にしまわれてるはずなの、だから全部剥がして調べていって。


 ……どうしたの?


 白い布がかけられてる中に人の形のモノがある?


 だから怖くて?


 はははははははは。


 大丈夫、剥がしてみて。


 早く。


 そう早く。


 早く。


 早く、早く、早く、早く、早く、早く……。


――バサッ……


 ……どうだった?


 ふふっ、書棚だったでしょ。


 思い出した?


 前もこの変な形の書棚で、私達怖がったよね。


――ダッダッダ、ドスドスッ、ガンガンッ


 ……何? 急に壁から音がしてきた?


 ああ、聞こえるでしょ。


 その音はね、板張りの壁の中からなの……。


 壁の中で、大きなネズミが動き回ってるのよ……。


 この音から想像してみて……凄い大きなネズミなの……。


――ドスドス、ドスドスッ、ガンガンッ


 えっ音がネズミにしては大きすぎるって?


 本当に、本当に大きいネズミなのよ……。


 はあぁぁ、早くしないと……必死で壁から抜け出そうとしているわ……こいつ……。


――カサカサカサカサカサカサカサカサ


 どうしたの?


 ……何かいるって?


 何かが壁を這ってる? 虫の這う音みたいなのがした?


 何もいないよ。それより、早く鍵を探して。


 ……影を見た?


 ハッキリ見たわけじゃないんでしょ、気のせいだよ。


――ガサガサガサガサガサガサガサガサガサ


 何? 出てきてこっちに向かってきた?


 やっぱり虫って? 大量のヤスデ?


 ……大きい……まぁ古い家だし、虫ぐらい……。


 ……床を這いまわって……虫が君の足の横すれすれを通った……?


 ああ、そこは……ね……放置されたからでるかもね。


 虫は後で何とかす……通り過ぎる時、脚を触ってきた……?


 ……もう……情けないなぁ虫なんかで……。


 こっちは大丈夫、綺麗にしてるから。


――ドタドタッ、ドンドンッ、ドタドタッ


 ふふっ、今度はどうしたの……?


 上の部屋でドタドタ歩き回る足音がする……?


――ドタドタッ、ドタドタッドンドンッ


 何か楽しそうなステップの足音だ?


 ………2階に誰かいるかって?


 君のいるリビングの上は、子供部屋ね………。


 ………。


 何、ふふっ、どうしたの?


 皆いるわよ。当たり前じゃない家族だもの。


――ドタァァンッ!!


 あ、聞こえた。


 ここにも、もちろん聞こえたよ。


 うん、重いものが倒れる音ね。


 そうね、子供部屋から……。


 ……何か倒れたみたい……。


 相当重たい、何かが倒れたね……。


――ガサガサガサガサガサガサガサガサガサ


――ドスドスドスドスッ、ガンガンガンガンッ


 何? 驚いた声を出して。


 また虫なの?


 ……ふーん、通り過ぎる度に足を触ってくるのかぁ。


 そんなにいるのかぁ……。


 ネズミも騒ぎ出した?


 さっきの音のせいね。


 それより忘れてない、鍵の事。


 そう、早く探して。


 まったくもうっ。


 むーっ。


 ……怒ってんのよ。


 ……頬を膨らませてるのっ。

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