37話 蝶よ花よ、テントウよ
「は!? な、なんで居るの……彪ちゃん」
「あー、蝶野さん、久しぶり……でもないか、クラスは一緒だもんね。天道くんは本当に久しぶりだ。もう私が押したくらいじゃ倒せなそうだなぁ」
「笛吹、その冗談は天道くん反応に困るでしょ」
顧問に委員会の仕事があると適当な嘘をついて遅れることを伝えてから天道と一緒に昨日と同じ部室棟裏の倉庫前に向かう。部室棟の外壁に沿って歩いていき角を曲がると、蜂谷は先に着いて待っていた。そして何故か、その陰に隠れるようにしている笛吹彪香まで居る。
私の頭はすっかり混乱してしまって、これは昨日見た夢の続きなんじゃないかと錯覚してしまう程だった。それは天道も同じなようで目を擦ったりなんかしている。多分こいつがしてなかったら私が同じようにしていたと思う。
自分の目の前に彪ちゃんが居て、また私に話しかけてくれている事実に思わず口角が上がりそうになるが、それと同時に罪悪感の波が押し寄せてそれを抑え込んでいく。
「二人を騙してごめん。事前に言ったら来てくれないだろうから、笛吹が話す場を作るにはこんな形にするしかなかった。文句は後で俺に、今は笛吹の話を聞いてくれないか?」
一瞬、本当にこれが昨日のおどおどした男と同一人物なのか疑った。麻美の時もそうだったが、こいつは彪ちゃんが絡むと人が変わるのか。そして肝心の目的は話を聞くこと——正直、どんな経緯や狙いがあってこの場が設けられたのか分からない限りどんなに怖くても私に逃げ出す選択肢はない。それに、また彪ちゃんの期待を裏切る真似はしたくなかった。
隣の天道の方を見ると、ちょうど天道も似たようなことを考えていたのだろう。覚悟が決まったという顔をしている。目と目を合わせてお互いに小さく頷く。
「聞かせて欲しい。どんな言葉でも受け入れる覚悟は出来てる」
ここに来て初めてまっすぐに、彪ちゃんを見た。ただ五日くらい見ていなかっただけなのに、彪ちゃんは子どもから大人になったように纏っている雰囲気が全く変わっていた。なんというか、凄く柔らかくなった。
彪ちゃんは一度深呼吸をするとあの可愛い笑顔になった。
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