第5話 テンサゲフォレスト
これは4月3日の分
貴方達が扉を開けると、そこは森であった。木々が生い茂り、鳥のさえずりさえ聞こえる。
部屋にはいる前に想像していたよりも、はるかに広い空間だった。しかし、この部屋も無制限に広がっているわけではなく、1つの部屋であることがわかるだろう。
そんな光景を見て、三者三様の反応があった。
「今度は森ってか?ってか広すぎだろここ。森ってあんまり好きじゃないんだよね。じめじめむしむししてるし、虫とか存在してるし。いったいこんな森の中から何を探しだせばいいのよもう。」
「森だぁ。懐かしいな。こっちに来てからこんな自然と出会うだなんて。落ち着くなぁ、この感じ。でも、森にしては匂いが薄い、いや違うこれは...森そのものが止まっている?森の息吹が感じられない???」
「おー森か。ここの部屋は広めだな。さて、ここで隠すならやっぱ草むらか地中だな。」
明らかに森と対面してテンションが下がった者とテンションが上がった者、そして早速草むらやらを探す者に分かれた。
そこでクリムゾンはおもむろに手ごろな木を見つけ、ひょいと上り始めた。それにあっけにとられている権三。
「何よあいつ、いきなり木とか上り始めちゃって、ホントに人間なのかしら?いや、もしかして気をきかせて私と紫月君を二人きりに!?やるじゃないの。紫月君ー。」
「あ、なんだ?」
そう彼が振り返ろうとしたとき、彼女は不意に地面に生えている枝につまずいてしまった。
「うわ、ちょ。ったぁ、転んじゃった、もう、まじ最悪。服が土埃まみれ...うわーん。」
「おい、大丈夫か?」
そう、彼が心配そうに声をかけてくる。
(え、かっこよすぎるんだけども///)
「だ、大丈夫。ちょっと転んだだけだから。あはは。」
「ほんとに大丈夫か?結構服に土ついてるみたいだが。」
そんな彼女が転んでいたところには、新鮮な土があった。そのため、多くの土が彼女の服に付着したのであろう。
「これは...箱だな。」
「...うん。あけていい?」
「おう。」
箱を開けるとそこには一枚の石の板と古びた金属製の指揮棒ぐらいのサイズの棒が入っていた。そして、それに触れた彼女の脳裏にふと何かの記憶が見えた気がした。
それはある一人の少女記憶のようなものであった。その少女は突如平和な日常が壊された。親と無理やり離された、いや誘拐されたのではないか。しかしそこで場面は移る。次の場面では彼女の両手は血で濡れていた。そして前を見るとひとりの少年がこちらに笑いかけていた。しかし、その彼の姿を見ることができず少女の意識は暗転した。
いったいどうしたのだろうと、権三はおもったが、何を脳裏に見たのか、完全に思い出すことができない。まるで今見たものは夢であったのだろうか?
「おい、ぼーっとして大丈夫か、ほんとに。」
「あ、えっとその、この棒に触れたとたんなんか記憶?みたいな光景を見て。その、内容はあまりぱっとしないのだけれども。」
「そうか...おーい、クリムゾン!この部屋の石板をみつけたぞー。だから真ん中の部屋に戻るぞ。」
そうすると、どこからともなくクリムゾンが樹上から降りてきた。
「あ、あったんですね!結構天井まで高かったですよ。」
「そんな高さまでこの空間広かったんだな。」
「ちょっと、どこ行ってたのよ。」
「あ、ごめんなさい。つい、木があったので。」
「かえる。」
そういうと、彼女はむすっとしたまま、中央の部屋に戻っていった。そして、彼女を追うようにクリムゾンが紫月は彼女の機嫌を心配しながら部屋に戻っていった。
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