違和感

「あれ……ここどこ?」


 私は電車から降りると、馴染みのある景色に違和感を覚えた。これといって何も変わってない景色。それに私は違和感を覚えて、不思議に思う。


「ん〜? 何も変わってないよね。 なら、この違和感はなんだろう」


 私は何も変わっていないはずの景色を見ながら、首を傾げる。辺りを見回しても変わったような場所は一箇所もなかった。そもそも、短期間で何かを変えるというのは、魔法使いでもない限り無理な話だ。

 少しばかりの違和感を胸に抱えながら、私は大学には遅刻はしたくなかったので状況を整理しながら歩くことにした。


 大学に行くあって絶対に避けては通れない商店街も変わってない。いつも大きな声で明るく賑やかに呼び込みをしている、肉屋のおばちゃんも変わらずにしている。

 違和感、一体何に覚えているのだろう。背後にこうずっと違和感が付きまとっている。気持ち悪い、とも言いづらい。


 私は考え込みながらずっと歩き続ける。違和感の正体を考えていると、いつの間にか商店街を抜けていた。あそこはこれといって、変わった場所はなかった。なら、次は大学。と思い私は歩をやや早める。

 一つ公園を通り過ぎる。念の為、公園も違わないかと見てみたが何も変わってなかった。これじゃ、昼間に公園をまじまじと見ただけのただの変質者だ。


 そんなこんなを考えながら、結局道すがらに変わった場所は一つもなかった。残るは大学のみ、ここで違和感の正体を掴めなかったらお手上げ状態になってしまう。何としてでも掴まなければ、と思っていたがそれは太陽に照らされて溶ける雪のように早々と消えた。


「あっ、マジシャンの人。今から大学とは奇遇だね〜」


「マジシャンの人? あれでも君、昨日は魔法使いの人って言ってなかった?」


「魔法使いの人? いやいや、君はマジシャンだよ。僕の頭の上に猫の刺繍がされたハンカチを気付かないうちに置くことが出来るなんて、君はマジシャンだ!」


「猫の刺繍がされたハンカチ? 私は犬のハンカチを愛用してるはずだけど……あれ猫だ」


 彼は昨日私がハンカチを落とした人だ。風に乗ってたまたま頭の上に乗っただけなのに、彼は私が魔法を使ったと信じて疑っていなかった。なのに、今はケロッと意見を変えてマジシャンの人と言い張っている。明らかな違和感だ。

 それに、私は猫の刺繍のされたハンカチなど思っていない。犬の方が好きで愛用しているのは犬の刺繍がされたハンカチのはずだったが、ポケットに入っていたのは猫の刺繍がされたハンカチ。これも明らかな違和感。


 私はこのとき一つの結論を導き出した。あまりにも空想的で映画の見すぎだとも言われそうな結論。普通に生きていたら辿り着けないような結論だが、見たことも無いハンカチ、言われたことの無い言葉。それらを合算し出した結論。つまりここは並行世界、パラレルワールドではないのか、私はそう結論付ける。

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