先輩、戻りますよ

たかみ真ヒロ

☆☆☆

せんぱーい。どうしてこんなところにいるんですか?気づいたらいなくなって、もう、皆探してますよ。


もう。先輩はどーしてそんな自覚ないこと簡単に言うんですか。私だって怒りますよ。皆探してるって言ってるじゃないですか。いつまでこんなところにいるつもりですか?


気が向いたら行くなんて、そんなこと冗談でも言わないでくださいよ。


うーん。多分、誰かを呼びに行こうとしたら先輩きっとそのまま逃げるでしょう?


そんなこと無いって?…分かってますよ。その顔。もう。しょうがないから先輩がその気になるまで私もここにいます。


そーですね。大声で誰かを呼んでもいいんでしょうけど。それだと…なっなんでもないです。なんでも…


えっ?顔が赤いって?そんなことないですよ。先輩、疲れてるんじゃないですか?もっもう、近付きすぎですよ。他の人にもこんなことしてるんじゃないでしょうね?


よくそんなこと平気で言えますね。…もういいです。それよりもどうしてここにいるんですか?その理由が知りたいです。だって、ここって…なんにもないじゃないですか?


えっ?何かあるってどんな状況のことを言うのかですか?どんな質問ですかそれって。何かあるってのは誰かが何かしてたり、


えっ?今、私と話してる…まぁ話してますけど。それだけで、うーん。分かりました。いや、ほんとは全然分からないんですけど、この質問はやめときます。頭がこんがらがりそうです。私、そんな頭良くないんですよ。まったく。


もう、笑わないでぐださいよ。そんなんだから、他の人から目をつけられるんですよ。


その台詞、言うと思ってましたよ。はー、そんな風に気にしないから誤解されるんです。


そうです。誤解です。先輩ほんとは全然違うじゃないですか。誰よりも他の人に気を遣ってるし。先輩が我慢してるの分かりますもん。


いやいや、先輩が周りに気を遣ってるのに気づける人はレアですからね。ほんと私ぐらいのもんですよ。


いや、別に大した意味はないですよ。


そうです。意味はないです。てか、もう戻りませんか?皆探してるだろうし。


いやここはなかなか見つからないと思いますよ。先輩だって皆に見つけて貰おうなんて思ってなかったでしょう?



それはそうですけど…じゃあもう少しだけ。先輩はこれから先のことどう考えてます?


いや、ご飯の話じゃなくて。どうしてこの流れでご飯の話になるんですか。どんな思考回路してるんですか?


え?馬鹿にし過ぎですよ。思考回路くらい普通に出ますよ。


えーっと、一網打尽とか危機一髪とか以心伝心とか、あっ美人薄命とか。


どーしてそんなに笑うんですか。失礼ですよ。はいはい。どうせ、先輩から見た私には縁がない言葉ですよ。


えっ?またまたー、そんなこと言って。どうせ本気じゃないくせに。


いや、そんな風に言われると照れてしまうというか。じゃなくて、そんなことを聞きたかったんじゃ、ないこともなかったですけど、これからのことですよ、これからのこと。


それは分かってますけど。いや、分かってるつもりではいるんですけど、何か力になれないかな。とか考えちゃうんですよ、私。


もちろん知ってますよ。今 先輩のこと皆が探してるけどそれだってほんとは必要ないことだって、私は知ってます。…だって、先輩は本気で逃げ出すような人じゃないですから。


買い被りすぎですか?そうですか、そうですか。じゃあ一緒に逃げます?


ふふふ。やっぱりそう言うと思ってましたよ。知ってました。


さっき私を小馬鹿にした罰ですよ。ここにいるのだってほんとは私が来るのちょっと期待してたんじゃないかなーとか思ったりしたりして。


だって、ここって私たちの思い出の場所じゃないですか。


なんですか。その素っ気ない反応は。まさか忘れたとか?



なら良いです。そう言えばなかなか無いタイミングなのでお礼を言ってもいいですか?


あの時独りぼっちだった私を救ってくれてありがとうございました。


なんです?その顔。いいって言ったじゃないですか。


予想してたのと違うって何を想像してたんです?


は?なんでそれだと思ったんですか?流れがあるじゃないですか流れが。


あーそういうの読むの先輩苦手ですもんねー。まー慣れましたけど。…独りがいいなんて独りになったことないから言えますよねー。


急ですか?確かに急でしたね。なんか大昔のこと思い出しちゃって。本当に独りになるまで独りになりたいってずっと思ってましたから、私は。それなのに独りになったら不安でたまらなくなって、周りが全部敵に見えだして。本当に先輩には感謝してるんですよ。


なんです?照れたんですか?珍しい。


クシュン。



あっ大丈夫ですよ。寒いとかじゃないですから…あっこうしません?半分こです。



先輩…なんか喋ってくださいよ。勢いでしたこととはいえこの沈黙は少しと言うかだいぶ恥ずかしいです。


あっやめるのは無しですよ。勇気出したんですから。このままでいましょう。


私のこれからですか。そうですねー。多分、先輩と一緒にいるんじゃないですか?


えー居てくれないんですか?


なら良いです。今日はやけに素直じゃないですか。いつもこうだったら良いんですけどねー。


またそんなこと言って。先輩はこういうの興味ないでしょうから知らないでしょうけど私のファンって結構いるんですよ。…もちろん断ってますけど。


へー知ってたんですか。


なんです?物好きって。失礼ですよ。




そういえばお腹空きません?


あっありがとうございます。…しぇんぱ


ゴクン 先輩いつもこんなの用意してるんですか?


女子力高い?でも、ポケットの中か。食い意地が張ってる?


ごめんなさい。そういうつもりではなくてですね。


あー確かに。食べ物持ってたら女子力高いって発想がおかしいかもですね。あっそもそも女子力って言葉自体が時代に合ってないのか。じゃあ、この場合だと飯力にします?


いやだって、ご飯作るとかだったら炊事?でしたっけ?


あー調理でも良いかもですねー。炊事力とか調理力でもいい気がしますけど、先輩、ポケットに入れてただけじゃないですか。


ポケット力?ポッケ力にします?


いやー可愛いかなって思って。


感謝してますよ、もちろん。ご馳走様でした。


そういえば先輩の小さい頃ってどんな感じだったんですか?


いや、せっかくだし。先輩しばらくここから動かないつもりみたいなんで。


つまらないですか?それは聞いてみなくちゃ分からないじゃないですか。それにどんな話でも私は話してくれたら嬉しいですよ。


もうそこまで勿体振ったらもっと気になるじゃないですか。




大変でしたね。


絶対にそんなこと思ってません。聞けて良かったです。今の先輩がこんなに優しいのはそんな昔の経験のおかげだったんですね。


優しいですよ。少なくとも私にとっては。


照れてますねー。今日はデレの日ってやつですかね。


私の昔の恥ずかしい話ですか?てか、今の先輩の話は恥ずかしい話だったんですか。そうですか。うーん。恥ずかしい話、恥ずかしい話。


いや、その話は最近ですし、恥ずかしくもないですからね。ホントに恥ずかしくないです。うーん。そうですねー。自分には他人と違う特殊能力があるって思ってましたよ。


いや、そんな個性とかの話ではなくて。てか、さっきから結構、失礼なこと言ってますからね先輩。気をつけてくださいよ。私じゃなかったら冗談じゃすみませんよ。


うーんと、こう、なんだろうな、世界の指導者的な感じですかね?


私って結構気がつく方じゃないですか?


えっ?違います?


そうでしょう。そうでしょうとも。それでですね、他の人が考えるよりも私が考えた方が絶対上手く行くって思ってたんですよ。


それで昔、やらかしまして…まぁ単純な話なんですけど、私の考えは出来る人の考え方で独りよがりだったんですよねー。面と向かって、あなたには私の気持ちは分からないって言われました。正直辛かったなー。多分、私はあの時、自分に酔ってたんだろうなって、相手の為とか思いながら相手のこと考えてなかったんですよねー。


えっ?今の状況ですか?全然違いますよ。だって、先輩の為なんて少しも思ってませんし、私自身の為ですもん。


分かりませんか?…そういうところですよ。


自分が話したせいなんですけど、なんか気分が落ちたんでなんかゲームしましょう。


うーん。21ゲームは?1から順番に21までの数字を言っていって最後の人が負けっていう、一回に言える数字は3つまで、


あっ知ってたんですか。ちぇ、下がったテンションを回復する良い手段だと思ったのに。


えーやるんですか?二人っきりでどっちもタネ知っててどう楽しむんですか。うーんと、じゃあ、2、3。


えっ?そっちもそういうつもりですか?はいはい。分かりました。6、7、8。


そうくるでしょうね。10、11、12。


ん?16、17、18。あー待ってください。騙しましたね?


21。もうてっきり負けてくれるって思うじゃないですか。


そういう意地悪するの良くないです。もう。


上着ですか?これはしばらく没収です。気が向いたらまた半分こしてあげます。


誰のものかは重要じゃないんです。今は私が使ってるんです。


そうです。反省してくださいね?



そういえばどのくらい時間経ったんでしょうか?時計くらい持ってくれば良かったなー。


えっ先輩持ってるんですか?見せてくださいよ。


えー。もうこんなに時間経ってたんですか?ホントに?


いや、まぁ別に構わないんですけど。私も探されてるのかなーって。


私はちゃんと先輩を探すっていう目的を持ってここに来ましたもん。他の人にも一応声かけて来ましたし。


この場所ですか?もちろん、言ってないですよ。


安心しました?


言う訳ないじゃないですかー。てか、いてくれたらいいなって思ってここには来ましたけど。


いや、まだ先輩戻る気ないでしょ?


居ますよ。一緒に。


どうしてそんなめんどくさそうな顔してるんですか。嬉しいくせに。


そういえばホント、なんでここなんですか?ホントの理由を教えてくださいよ。


えっ?何て言いました?


えーもう一回言ってくださいよー。もう。


いいじゃないですか。減るもんじゃないし。


もう。



連想ゲームでもします?


そうです。そうです。お題はどっちが先に出します?


私からですか?分かりました。うーんと。はい。決めました。質問どうぞ。


はい。生き物ですよ。


いや、当てるの早くないですか?もう少し悩むかなって。ベタですか。そーですか。悔しいなー。てか、もう少し照れる姿が見れると思ったのに。


もう。じゃあ先輩の番ですね。決まりました。


じゃあ、それは生き物ですか?


えっなんですか、その答え。うーん、生き物じゃなくても当てはまる?うーん。てことは、私ではないと。


いやいや。先輩そういう意地悪フツーにやるじゃないですか。


そういうのってのは、散々、人に文句言っといて自分もするってことです。えーと、物ですか?


そうです。そうです。概念的なものとかなのかなって。宗教とかそういうものかなって。あーそれだと生き物じゃなくてもが引っ掛かるなー。


そうじゃないけど考え方は合ってる?うーん。それは先輩にとって好きなものですか?


それって好きな時もあれば、そうじゃない時もあるってことですか?うーん?じゃあ、時間帯とかは関係ないですか?


え?夜中はあんまり?


寝てるから?うーん?ヒントが難しい?あーー、分かりましたよ。ちなみに私のはどうですか?


えっ?今なんて?なんて言いました?


もう。そういう感想じゃなくて。まー私も正解したってことでいいですよね。じゃあ次は私ですね。


えーいいじゃないですか。時間はたっぷりあるんだし。


いいんですよ。先輩が戻る気になったんだったらそれでも。


でしょ。じゃあ次は私が考えますね。うーんと、




さっきから先輩のお題は引っ掛けがすぎるんですよ。そんなんじゃダメですよ。


なんですか、その言いぐさ。戻りませんよ。戻るとしたら先輩と一緒にです。


えっ?私がここにいる理由ですか?いきなりですね。居たいからじゃダメですか?


なんですか?顔を背けたりして。今日の先輩はホントに弱ってますね。そうですねー。さっきも言いましたけど、先輩は独りの私を救ってくれましたし。うーん、でもそれだけだとちょっと違うかなー。別にお礼がしたくてここにいる訳ではないしなー。うーん。先輩は失礼だなとか思うかもしれないですけど、似てるんですよねー。私と。


えっ、似てないって?ホントにそう思ってます?


でしょう。多分、私たち心の底の方は似た者同士なんですよ。きっと。ホントは臆病で弱っちくて、だけど温もりを誰よりも求めてて。


またそんなこと言って。二人っきりなんだからいいじゃないですか。素直になっても。いいじゃないですか。ここには他に誰もいませんよ。


よいしょ。少し素直になったので半分こしてあげます。なんですか?そういえばさっきからあんまりこっち見ませんね?照れてるんですかー?可愛いですねー。


先輩、そういうところ古いですよねー。別に今の時代、そんなの誰も気にしませんよ。それに先輩が可愛いことを知ってるのはきっと私だけですよ。だって、他の人の前じゃこんな風にならないでしょう?


それって私が特別だからってことですよね?ですよね?


まーたそうやって。まー今のは私が悪のりし過ぎた気がしますけど。私がここに来た時のノリはどこへ行ったのやら。先輩、軽いノリの時とそうじゃない時のノリだいぶ違いますよねー。素に戻るというか。まーそこが分かりやすくていいんですけど。


馬鹿にはしてませんよ。


失礼ですよ、もう。私がこんなことするのって先輩だけですよ。


そうですよ。…多分、私って理想が高いんですよねー。


えーっと、恋愛に関してですよ。


この流れで先輩にとっていきなりになるんですか?その思考回路ちょっとバグってますって。絶対。じゃあもういいです。


はい。ちょっと怒ってますよ。半分こ無しなのは当然です。


てか、先輩って恋愛したことあります?


そうですね。流石に失礼過ぎですね、流石に。反省します。けど、先に失礼過ぎることしたのそっちが先ですからね。


えっ?本当に分からないんですか?もう。



探してるんじゃないんですか。そりゃ。先輩が見つからないと話にならないし。


おっ戻る気になりましたか?


なんですかそれ。私が戻る気無くさせたんですか?そうですか、そうですか。嘘つき。まーいいんじゃないですか、まだ。実際まだまだ時間はありますし。


いや、それはそうなんですけど、最近先輩と二人っきりなんてなかなか無かったじゃないですか。正直、今の時間、好きですよ、私。


そんな顔真っ赤にして意地悪なこと言っても無駄ですよ。


素直じゃないですねー。…もうしばらくはこのままでいましょう。…半分こ再開してあげてもいいですよ?



そういえば先輩っていつから今のポジションになったんですか?


そうですねー、噂程度なら聞いたりしますけど私、自分が見たものしか信じれないんですよねー。


あー、それは大丈夫ですよ。だって、先輩、嘘ついたり思ってもないこと言う時ひどいですもん。


ひどいはそのままの意味ですよ。まー他の人がそれに気付いてるかは分かりませんけど、少なくとも私に先輩は一生嘘つけないと思いますよ。


えー試すんですか?別にいいですけど。うーん。なんか適当に言われてもなー。お題、私が決めてもいいですか?


いや、ドラゴンとこないだ戦ってーとか言われても反応に困るじゃないですか。先輩、そういうところあるんで。


うーんと、じゃあ今一番ハマっていることは?


ホントですね。


そーですね、普通に私、知ってましたね、それ。ちょっと、てか、普通にお題として間違ってましたね。うーんと、じゃあ、家族の名前は?


いや、そういえば、私、先輩の家族のこと知らないなーって思って。


ホントですね。へー。覚えときます。


まーそうですねー。


いや、私の家族?先輩知ってるじゃないですか。じゃあ今度から私も答えることにします。


えーっと、自分も答えるとなると悩みますねー。それじゃあ最近あった嬉しかったことは?


いや、そんな悩みます?


そんな悩まれると逆に不安になってくるですけど。


あー確かに。逆ではないですね。いいじゃないですか別に。言葉はフィーリングですよ、フィーリング。


ホントに悩みすぎですよ。


ホントですね。てか、ささやかー。


えっ?私ですか?そりゃ、今に決まってるじゃないですか。


ズルくはないでしょう。


ほらほら。どっちだと思います?


照れてるんですか?


正解です。まー簡単すぎましたね。じゃあ、次はー。


だって、言い出したの先輩じゃないですか。あれ?私でしたっけ?てか、先輩、嘘つかないんですか?


お題がですか?うーん。じゃあいいですよ。自由に言ってもらって。


だって、私は当てられるって言ってるのに、先輩が信じてないだけじゃないですか。


えっーと、ホントですね。


あっウソ。


ホント。


いやいや、知ってたとかそんなんじゃないんですって。普通に分かるんですよ。ホントに。


ぷふっ。どうしたんですか。顔を手でぐしゃっとして。


えっ?なんて言いました?


あーはいはい。それで行くんですね。いいですよ。どうぞ。


あーウソですねー。


それもウソ。


あっそれはホント。


なんでそんな驚いてるんですか?


今まで誰も信じなかったんですか?へー。確かにそうですね。他の人が聞いたら、とても信じられない内容ですもんね。でも、ホントでしょ?


いやいやどんな能力ですか、それって。ホントに分かるんですって。てか、何の話してたんでしたっけ?


あっ覚えてますね。


だから、分かるって言ってるじゃないですか。


へー。そうだったんですか。最初から。凄いですね。


いや、だって普通だったら最初からなんてあり得ないですよ。


そういうもんです。よっぽどだったんですね。


えっ?誉めてますよ、普通に。凄いです。


あっまた照れましたね?今日はホントに普段なかなか見れない先輩が見れて、楽しいなー。


えっ?だから、最初から言ってるじゃないですか。私は自分のためにここに来たって。


まー確かに、ウジウジしやがってと思わなくはないですけどねー。


でも、先輩に頼りっきりな周りの人たちもどーかと思うんでそこは、おあいこじゃないですかー?


えーここで周りの人たち庇うんですか?ホントにお人好しですね。まーそこが先輩の良いところで欠点なんですけど。


そりゃ欠点ですよ。誰にでも手を差し伸べて。…だからいまいち自信がなくなるんだよなー。


えっ?別に何も言ってないですよ。


悪口?悪口なのかもしれないですねー。


いやいや。そんな気にしなくていいですよ。大したことじゃないんで。


それより文句とか周りに無いんですか?


無い?


そりゃ誰にも言いませんけど。


どんな答えですかそれ。


なるほど。先輩は周りの人たちをそんな風に見てるんですね。


うーん。そうだなー。じゃあ先輩はどーやって生きてるつもりですか?


誰も一人でなんて生きてないんですよ。


関係大ありですよ。今さっきの先輩の言葉はあんまりです。だって、だって、そうしたら、先輩ずっと独りぼっちじゃないですか。それはとっても悲しいことですよ。


すいません。言い過ぎました。そうですねー。どうせ理解されないとかどうせ分からないとかそんな風に相手を決めつけないで話してみてください。相手は自分とは違うって分かってるなら先輩の決めつけだって正しいとは限らないじゃないですか。


うーん。そりゃそうですけど。だったら、私には話してください。みんなには無理かもですけど、私には。


そりゃ理解できるかは分からないですけど、伝えるって大事だと思うんです。だから約束ですよ。いいですね。


よろしい。それじゃあ、今、なんか私に伝えたいことってあります?


えっ?なんもないんですか?なんかないんですか?聞きますよー?


そうですか。まぁすぐに出来るようになるとは思ってないんで、少しずつやっていきましょう。


いや、だって、先輩は抱え込むタイプの人ってことは知ってるつもりでしたけど、そうですよね。今の先輩の立場だったら当然か。


うーん。私が先輩のことで悩む理由ですか?うーん。先輩、言っても理解してもらえなさそーだしなー。


そう。それ、それですよ。今まで先輩はそれを周りの人にしてきたんですよ。


分かりました?


納得はしてないみたいですけど、理解はしてくれましたね。


けど、先輩はここからがややこしいんだよなー。


そう、ややこしいんです。ちなみに先輩の願いってなんです?


そう言うと思いました。多分、先輩、昔から何でもそつなくこなせてたでしょ?


だからなんだよなー。先輩はもっとわがままになっていいんですよ。


周りなんか関係なくて、もっと自由に生きていいんですよ。


きっと先輩は昔からみんなのやりたいこと、したいことを聞く立場にいすぎたんですよ。若しくは、誰か他の人の正解の中でしか生きて来なかったか。


えっと、何かをするって時に先輩は頭が良いから周りの人がどう思うかも考えちゃうんですよ。だから、やることが小さく纏まっちゃうんですよね。それを先輩が意識してやってることなのかは分かんないですけど。


ほら、今だってそう。普通だったら何言ってるんだって怒ってもおかしくないのに、受け入れちゃったでしょ。


いや、怒らせたい訳じゃないんですけど。そうだなー。うーん。先輩は本当にしたいことを精一杯やれていますか?



ふふふ。したいことないって言いながらイライラしましたね。それですよ。良かった。もちろん願いを叶えるためには周りの人の協力も必要です。じゃあ、どんな人に周りの人は協力してくれるんでしょうね?


それだったら先輩は十分夢を叶えられるはずじゃないですか。出来ること、能力が高いことが重要じゃないですよ。


ホントは先輩だって気付いてるでしょ?


人当たりが良いかは、うーん、そりゃ人望がある方が良いとは思いますけど、それも能力の一つかなー、あればいい的な。…ズバリ言いますよ、それは先輩が無理だって思ってるうちは何もかも無理ですよ。



おー、さっきまでの先輩はどうしたんですか?さっきまで落ち着いて話聞いてたのに。


はいはい。確かに、周りのこと考えたらそうなりますよね。だから、最初に言ったじゃないですか。もっと先輩はわがままになっていいって。今先輩が言ってることって全部周りのことじゃないですか。先輩自身のことは一つも無いでしょ?


先輩だから話してるんです。先輩だったら分かってくれるって私は信じてますから。周りのことをホントに考えられる先輩だから言ってるんです。もっと先輩には、わがままで、自由でいてほしいんです。




難しいですか。そうですよね。今までそんな風に生きて来なかったからですか。けど、先輩ですよ。私にこの考え方を教えてくれたのって。


自覚なかったんですねー。不思議。先輩は周りに対して自由を与えてくれるじゃないですか。先輩自身にもそれをすればいいだけなんだけどなー。


大丈夫ですよ。私がそれを受け止めてあげます。


どうしてそんなこと言うんですか、まったく。嘘つきですねー。


私のことなんだかんだ言って信じてくれてるくせに。


そんなぶっきらぼうに言わなくてもいいじゃないですか。照れてるんですね?


ふふふ。いいじゃないですか。



そう言えば、てか、何がそう言えばなのか分かんないですけど、この際だから先輩に伝えときたいことがあるんですけどいいですか?


うーん、今日、先輩と話してて思ったんですけど、先輩って色々めんどくさいじゃないですか。


悪口?いやまー悪口とも言えなくはないですかね。けど、事実ですし。


別に喧嘩したい訳ではなくてですね。そんな先輩のことを理解してくれる人は私以外いないと思うんですよね。


はいはい。私も拗らせてますよ。真面目モードは相手のことの時だけ。いざ自分のこととなると勇気が出ない。ホントに似た者同士なのかもしれませんね。


どうしたんですか?急に立ち上がって。えっ?私も立つんですか?


ちょっ、ちょっと待ってくださいよ。……いいですよ、どうぞ。


えー、このタイミングで私のことディスり始めます?普通?


はいはい。確かに、空気も読まずに先輩のことからかったりしてますね。別に馬鹿にはしてませんよ。


えっ?今、なんて言いました?


もう一回言ってください。


返事ですか?……チュッ


ふふふ、もちろんOKに決まってるじゃないですか。ひねくれててどうしようもない先輩ですけど。


いいじゃないですか。似た者同士。私たちに歯の浮くような良いセリフなんて似合わないですよ。


乙女ですか?先輩?まー先輩が勇気出して言ってくれたのに私が言わないのはルール違反な気がしますね。…大好きですよ、先輩。



そうですね。戻りましょうか。もう先輩、大丈夫ですもんね?


最初からですか?ホントかなー?


先輩が辛いときはいつでも言ってくださいね。私、全力出しますから。


そこまでは期待してないってどんな答えですか。頼んだぞ。くらいでいいのに。まだまだ甘え下手ですねー。


先輩はきっと、うんうん。絶対大丈夫ですよ。だから、先輩がやりたいように思いっきりやってください。私がついてますから。

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先輩、戻りますよ たかみ真ヒロ @takamimahiro

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