第3話 龍太適正を確かめる

俺の理想の転移像が脆くも崩れ去り、それに合わせるように崩れそうになった俺を支えて抱きかかえたのは、屈曲な騎士のひとりだった。


そのまま抱きかかえられて到着したのは、これまた豪華な扉のある部屋。


途中にあった調度品も目を引いたけど、この扉とその両横に飾ってある壺は、骨董品に全く造詣のない俺にもひと目で高そうだと分かる一品。


この部屋の中にいる領主様の金持ち具合がよく分かるってもんだ。


「領主様、達彦です。入っても構いませんでしょうか?」


「ああ、大丈夫だ。」


「失礼します。」


達彦に続き、騎士に抱きかかえられたままの俺も入室する。


いい加減下ろして欲しいのだが。


「達彦君、倒れたと聞いたのだが、もう大丈夫かい?」


「ええ、魔力を使い過ぎたみたいです。


お騒がせして申し訳ありませんでした。」


「いや、無事で良かったよ。


ところで、カルロスに抱きかかえられているのが、達彦君が呼んでしまった、同郷の方だね。」


チラッとコチラを見た領主様が、バツが悪そうに目を背ける。


その目が、カルロスをチョイ見した後、哀れみの目で俺を見たのを俺は見逃さなかった。


あかんやん、カルロスあっちの人ちやうの。


俺、貞操の危機かも。



「それで君は、えーと「龍太、山下龍太です」…そう、龍太君だったね。失礼。


改めて、龍太君、君には大変申し訳無いことをしてしまった。


ここにいる責任者として謝らせて欲しい。


聞いているとは思うのだが、残念ながら君が戻る方法はないのだよ。


こちらで生活してもらうしか無いのだが……………、本当に申し訳無い。」


「ええーっと、まぁしょうがないですねぇ。


出来れば、こちらでしっかりとした生活基盤が出来るまで、援助して頂けたら有り難いのですが。」


「もちろんだとも。いくらでも援助させてもらうことにしよう。

落ち着いたら君の好きなように動いてくれて構わないよ。


なんなら、勇者達彦君と一緒に魔王復活を阻止する旅に出てもらっても構わない。」


「いえ、それは無いかと。素質もスキルも無さそうですし。」


無茶を言われても困るってもんだ。


「うーん、素質、スキルか...そうだ、適正検査を受けてみないかね。旅に出ないにしても、こちらで生活するためには知っていて損はないと思うのだが。」


「ええ、どんなスキルがあるかは知っておきたいものです。是非お願いします。」


「よし、そうと決まればすぐに確認しよう。セバス!教会に行って適性検査をするように伝えてきてくれ!」




1時間後、領主や達彦、そして護衛としてしっかり寄り添っているカルロスに連れられた俺は、教会で適性検査を受けている。


「龍太殿、これより神の御前にてスキル適正検査を受けて頂きますぞ。よろしいかな?」


「はい、よろしくお願いします。」


教会の一室、神父の目の前に置いてあるのは、大きな水晶と白紙の紙のみ。


俺の返答を確認した神父は水晶に手を当て呪文を唱える。


白かった水晶は呪文が唱えられ始めると淡く光り出し、神父の詠唱の声が次第に大きくなっていくと水晶の輝きも最高潮を迎える。


「ピカッ!」


プリントゴッコのような音がしたかと思うと、水晶は一気に輝きを失い、白紙の紙に何やら文字が映し出されていた。






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新作いかがでしょうか?


何かコメント頂ければ嬉しいです。1ページ当たりの文字数を減らしたり、文調を変えてみたりと少し変化を加えていますので、その辺りの評価も頂ければ幸いです。

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