第8話 Both Sides

「爺さーん、遅くなって悪かったねやー。帰る途中で道間違えたもんだすけ、Uターンしてきたんだわ。あーっ、てぇ~そ!(くたびれた)」


 ―オラまた婆さん、事故にでも遭ったかそ思って、さっきから心配してたんだわ。ケータイ鳴らしたけも誰も出ねえさけ。



「そいが?(そうなの?)ケータイ、助手席に置いといたけもな。一度も鳴らんかったわね。間違え電話でもしたんだねかね。まあそれはいいさけ、早く昼飯にしよっさ。はい、コンビニで買ってきた握り飯」


 ―わざわざ買ってきてもらって悪かったねや。「おごっつぉ。(いただきます)」今日もばーかあっちぇ(とても暑い)さけ、また日焼けするねや。おまん(あなた=妻)の方がオラより焼けてるねや。あっ、そうそう。あれ見てみないや。ウチと同じ軽トラ、後ろに止まってんねか。中で爺さ(じさ)こっち見てるけど、誰(だん)だね?



「知らんわね。オラ運転中にバックミラーなん見たことねえさけ」

 ―危ねだねっかい!いつか事故るど。次からえっせ(もっと)気を付けてくんない。あ、どっか行ったわ、あの車。

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