第5話 I just want to stay with you in this moment forever

□Side-A4

 2シーターは大通りの交差点を右折し、しばらく前進した。道路がやや入り組んでくる。この辺は、いわゆる高級住宅街だ。彼女は見た目通り、セレブリティなのか。

 次の瞬間、ハッとした。2シーターが、いきなり停車したのだった。尾行に気付いたのか!ぼくは慌ててアクセルを踏み、2シーターを追い抜いた。全身に緊張が走る。閑静な住宅が立ち並ぶ交差点を曲がった所で、ぼくも車を止めた。

 彼女は自宅に着いたのだろうか。彼女の自宅はこの辺なのか。車を降り、そっと様子を見てみる。次の瞬間、ぼくは慌てて自車に戻り、エンジンを作動させた。

 2シーターは、何と住宅街でUターンし、来た道を逆走し始めたのだ。想定外の事態に混乱しつつも、ストーカー化した自分を止めることは出来なかった。恐らく彼女は、ぼくの尾行に気付いたのだ。Uターンしてぼくをまいたつもりか、あるいは変な車に尾行されていることを伝えるために警察に行くのか。正直どうだって良かった。彼女の顔を、姿を、どうしてももう一度、見てみたかったのだ。 ストーカーの心理ってこういうものなのか。初めて知った。


 ■Side-B4

 彼女を失いたくない。僕の気持ちはぶれることなく、昔も今も変わりはない。心配なのは、彼女があれほど美人であるということ。2人で街を歩いていると、すれ違う男は必ず彼女をチラ見する。彼女はまったく気にしていないようだが、僕は、彼女がどこかに行ってしまう夢をよく見る。

 今も帰りが遅い。彼女が出発してから、もう50分以上経っている。彼女に何か起こったのか。事故でも起こしたのか、またはエンジントラブル…。それとも、誰かに声を掛けられて、拉致らちされたとか…。

 頼む、無事に、僕のもとに早く帰ってきてほしい。

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