第四十一話 「こころ」

「(・・・・)」


"おそらく、犯人はイ"


「(・・・実際に犯行を行っていない俺を


  犯人に仕立て上げるって事は、


まず間違いなく、イが


  犯人何だろう....)」


「・・・・」


"ガタッ"


鮎人は、カードルームの中で


部屋の隅に転がっていた先程自分を縛り付けていた


椅子を立てると、その椅子の上に座り直し


外から聞こえて来るイの言葉に耳を傾ける


【・・・だから、鮎人に


 事務所を任せるんじゃなくて


もっとそれとは"別の"信頼できる人間に


事務所を任せた方が....】


【確かに、その通りかも知れない―――...】


「(イ....)」


【孫さん、鮎人ばっかりに


 仕事を任せるんじゃなくて


他にもいい人間がいるでしょう!?】


【そうだな、イ―――――】


「(・・・・・)」


外から聞こえて来るイ、そして事務所の代表である


孫のやり取りを聞いて、鮎人は何となく、


イが何をしようとしているのか


分かってきた気がする


【・・・鮎人、俺達は年も近いし、


ある程度このRS事務所で


 孫さんの信頼も得ている....】


【まあ、そうかも知れないな....】


【言ったら、俺達は"ライバル"みたいな物だ。


二人でこの事務所をデカくしようぜっ!】


【・・・・】


よくは分からないが、今外から聞こえて来る


イの口振り。


「(多分、イは俺を犯人に仕立て上げる事で


事務所内での自分の立場みたいな物を


  上げようとしているみたいだ....)」


【でも、鮎人がいなくなったら


 他のアイドルの管理は誰がするんだ?】


【孫さん....その事なら心配ないですよ】


【イ・・・】


「(多分、イは俺を犯人に仕立て上げる事で


事務所内での俺が今やってる仕事を


  奪うつもりなんじゃないか....?)」


【事務所にいるスタッフは鮎人だけじゃない


例えば、ほら、今ここに....】


「(・・・・)」


外から聞こえて来る声を聞きながら


「("イ"が犯人――――?)」


鮎人は、今自分が何をすべきかを考えていた....

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