第三十八話 「斜陽」

【ほら、ここ――――...】


"ジィィイイイイイイイイイ――――"


【やっぱり、この時も鮎人だけ一人で


俺達の周りから姿を消してるな...】


【嘘でしょ―――....?】


"ガタッ! ガタタッ!"


「(だ、ダメか――――っ!)」


【て事は、やっぱ三人目の伊坂の時も・・・】


【ええ...鮎人の仕業ですね...】


「(あ、あいつっ...!)」


"ガタッ! ガタタッ!"


外から、おそらく


自分を犯人に仕立て上げるための


イの逆再生によるVR映像を見ながらの、


事件現場の検証の様な声を聞きながら


鮎人は横に倒れたまま、必死に


自分の体を縛り上げている縄を解こうと試みるが


縄によって完全に自分の体が


締め上げられているのかいくら縄を解こうとしても


体が全く動かない


「っ―――...だ、ダメか! 


・・・ッ、ハァー....!」


"ガタッ!"


数分程の間、縄を何とか外そうと鮎人は


倒れたまま激しく体を動かすが


「(・・・・!)」


その事に意味が無い事を悟ると、


外から聞こえて来る声に耳を澄ましながら


薄暗い部屋の中を見渡す


「(っ――――た、たぶんっ....)」


先程誰かに殴られた時の傷なのか


頭に鈍い痛みが残る中、鮎人はあまり広くは無い


今自分が閉じ込められている


カードルームの隅の方に目を向ける


「(お、俺をここに閉じ込めて...


は、犯人に....っ)」


【あんな奴を信用してたなんて―――】


【そうでしょう――― 孫さん...


 孫さんは何かとあいつに目を掛けて


かなり事務所の仕事を任せてたみたいだが、


あいつは異常者――――...


 "殺人犯"なんですよ――――!】


【・・・殺人犯...!】


「(イ――――!)」

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