第三十二話 「敵対」

「犯人はお前しかいない。


....そうだろ、"鮎人"―――?」


「・・・・え...」


"ガターーーーーーーーー-ンッ!"


「あ、鮎人さん!」


「―――――"!"」


「う、うわっ....!」


「あ―――――


「(・・・・!)」


イの言葉が予測できなかったのか


鮎人はイから体を後ずらさせると、


そのままステージの端から足を踏み外し、


2m程の高さのステージから転げ落ちる


「あっ あっ――――!」


"ドサッ!"


「あ、鮎人さん――――!」


「なあ、鮎人―――――....」


地面に倒れた鮎人を見て、ステージの下にいた澪が


鮎人の無事を確かめるため側まで駆け寄るが、


鮎人は澪の手を振り払うと、


自分を見下ろしているイを見上げる


「なッ―――... お、俺が、犯人・・・?」


「・・・・」


"スッ"


倒れたままの状態で自分を見上げている鮎人を、


ステージ上のイは見下した様な目つきで


見下ろす


「(お、俺が犯人―――――....)」


「そうだ、鮎人―――――」


「・・・・!」


動転した鮎人がステージ上の


イに視線を向けると、そのイの顔が


今まで自分に見せた事も無い様な


蔑(さげす)んだ、軽蔑的な表情に変わっている


「あ、鮎人くんが"犯人"??」


「ま、まさか―――――!」


「・・・・!」


ザワ


  ザワ


ザワ


「(・・・・!)」


「お、おい、どう言う事だ...


イ―――?」


「・・・・」


イは何かを考えているのか周りの言葉に


特に態度も変えず、しばらく棒の様にただ


ステージ上で立ち尽くすが、


鮎人が周りのRS事務所のメンバーに視線を向けると


皆、まるで完全に殺人を犯した


犯人を見る様な目付きで自分を見ている


「(・・・・)」


"自分が犯人じゃ無いか"


「(いや、そんな筈は無い――――)」


一瞬、気が動転していたせいかイの言葉に鮎人は


"自分が犯人"


そう思いかけるが、すぐに地面に敷かれた


シアターホールの厚手の絨毯の上から


立ち上がると、ステージ上に立っているイを


見上げる


「イ――――....


 どう言うつもりだ――――」


「どう言うつもり....」

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