第二十九話 「犯人」
「お、おい・・・」
「あ、鮎人・・・?」
ザワ
ザワ
ザワ
「・・・・」
ホール内にいる全員が、咲茉の部屋を
隠し撮りしていた鮎人を見て
疑った様な表情を見せているが、
鮎人はまるで周りの視線を気にする事も無く、
スタッフ達を見下ろす
「(・・・何か....)」
「ちょっと! あ、鮎人、アナタ―――っ!」
「あ、鮎人さん―――?」
「(―――何だ... この感じ...?)」
「き、聞いてるの!?」
「わ、私達の部屋を勝手に撮ってたんですか!?」
「(この感じ――――、)」
何故かは、よく分からない
「そんな事―――! 大問題じゃない!?」
「あ、鮎人・・・・?」
「(――――??...)」
何故か、よく分からないが、ステージの下で
自分に向かって大声で罵声を浴びせて来ている
周りの人影を見て、鮎人の胸に何か
戸惑いの様な感覚が残る
「(・・・何なんだ――――...?)」
「鮎人~ あ、アナター!」
「おい! 勝手に人の部屋を
盗撮するなんて―――!」
「(この二人――――...)」
"何か、おかしい"
「わ、私達が犯人だなんて―――!」
「そ、そんな事ー あ、あり得る筈が
ないじゃないですか!」
「(何だ――――...?)」
今、目の前で自分の口から犯人だと告げられた
小澤、そして咲茉....
「な、何で私が犯人だって言うの!?」
「鮎人さん――――...」
「(これが、犯人の態度か――――?)」
「私達が....っ "犯人"だなんて―――っ!」
「それは、間違ってます―――!」
「(・・・・)」
何か、今までの自分の経験から来る、
"うろたえている人間"
「(こいつらが、"犯人"―――?)」
その、経験から来る予想と反した
行動を取っている二人に鮎人は
今目の前にある"証拠"より、
今自分が感じている状況による
"違和感"の方に考えが
引き寄せられていく....
「"鮎人"っ! 聞いてるのかっ!?」
「―――――"!"っ」
「・・・・!」
原の怒鳴り声に、鮎人は俯いていた顔を上に上げる
「(そうか・・・・)」
「鮎人~ 人の部屋を盗撮するなんて~
いくらなんでも、やり過ぎだよ~」
「(そうか、俺は今――――...っ!)
"推理してたんだ"
「・・・・!」
"グッ"
「な、何?」
鮎人は、今自分が感じていた
違和感を頭で打ち消すと、
ステージの下にいる二人を見下ろす
「――――咲茉の部屋は、マネージャーの
小澤さん...あなたと二部屋で
一つの部屋になっていて、
咲茉、そして小澤さんの宿泊していた一等室の
その二部屋には鍵が掛けられている――――」
「な、何の話を―――??」
「か、勝手に部屋の中に入るなんて....」
「・・・・」
「あ、鮎人?」
「(こいつらが―――...犯人...?)」
「お、おい、お前、こっちの話、
聞いてるのか!?」
「・・・・!」
"グッ"
「そして、その、俺達が入り込んだ部屋の
小澤さんの部屋のクローゼット...」
「・・・・!」
「ま、まさか―――」
「お、小澤さん――――...??」
「・・・・」
咲茉、と小澤が互いに顔を見合わせるが
鮎人はその二人の表情を見て確信する
「小澤さんの部屋に、
"これ"があったんですよ―――!」
「ぱ、パソコン―――?」
「ち、血がついてるぞ・・・」
「そ、それに、あれ、コスプレ用の
"カツラ"じゃないか...?」
"ガサッ!"
「・・・・!」
「これ、一体....どう言う事、
なんですかね――――っ?」
「・・・・!」
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