第19話

「気を取り直して生活指導の時間だ」


「昨日の続きになるが……」


「階段を使おう」


「それが昨日の話だったな」


「それに1つ条件を加えようと思う」


「それは……」


「足早に登ろう、だ」


「イメージで言うとだな」


「右足が沈む前に左足を出す」


「そんな感じだ」


「……」


「わかりにくいかな?」


「よく見てくれ」


「重心を前に置き」


「お腹に力をいれて」


「素早く腿をあげる」


「こんな感じだ」


バタバタ


「ベッドの上で足踏みをしてすまないな」


「でもこれで見えただろう?」


「……」


「とにかくだ」


「これだけで大分違うぞ」


「明日から是非やってみてくれ」


「……」


「とはいえ疲れている時もあるだろう」


「やりたくない日もあるだろう」


「だから少しずつ」


「出来るときだけでも意識してくれ」


「そうすれば慣れてくるはずだ」


「……」


「私も一緒に歩ければいいんだがな……」


「なにせ私はここから出られない」


「いつか君と一緒に外を歩いてみたいよ……」


「二人で買い物をしたり、とかな」


「……」


「余計なことを言った」


「忘れてくれ」


「幽霊の独り言だ」


「……」


「今日はここまでにしようか」


「また明日だ」


「君の運動報告を楽しみにしてるよ」


「おやすみ」


「……」

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