飛び込んで来た美しい鳥①

流石に

樹齢が百年を越える桜の木は

珍しく、段々と花も小さく

数も少なくなって来たかな…


と、桜の木の下で

そんな事を考えながら

色とりどりの枯葉を集めている

日課の庭掃除です


落葉樹も数々ありますが

桜の葉は特別

味わい深い風情です

虫食いや色のグラデーション

自然の技とは思えない景色です


広い池を囲む様に拡がる

すり鉢状の庭

桜の花は時間差で

愛でる事が出来る様3種類

入れています

寒緋桜、ソメイヨシノ、鬱金桜


各地の桜並木の土手には

菜の花との競演で

楽しげに咲いていますね

コントラストが、明るくて

スキップしたくなります


宿内の桜の木の下は

花ニラを入れています


白い、星の絨毯の上に

はらはらと

桜の花びらが舞落ち

それはそれは

悲しいやら、美しいやら…


私、完璧な凡人ですが

西行法師の御心が、ほんの少し

理解出来る気がします

「願わくは花の下にて…以下略」


春には

次々と花が咲き乱れ

ふわふわ、ぽとり、パラパラ

と、落ちてもなお、花は花


秋も深くなりますと

ハラハラ落ちるのは

色付き、朽ちた葉達です

そそくさと

越冬の準備と、世代交代

とばかりに

潔いものです


早朝の張りつめた静けさと

研ぎ澄まされた川のせせらぎが

潔い落ち葉を集めながら

音を立てて震えています


今夜のメニューに添える

俳句を考えるには

やはり早朝です


おっちょこちょいの私でも

多少は、詩的に物事を

考える事の出来る貴重な一時です


そんな朝寒の静けさの中

訪いを報せる※魚鼓(ぎょく)が

鳴り響きました

少し遠慮気味な乾いた音で


※魚板とも言われ、本来なら禅寺等で、時を報せるのに用いられます。木で魚の形を彫ったもので、お寺の食堂(じきどう)の入口にかけてあることが多い。



敷地は広く、声で呼ぶのも

ベルを鳴らすのも

憚られる様な、風情ですので

ご来客様の訪い用として

門に掲げています

少し盆地になっている敷地内に

現実から離れた音で

神聖に且つ、鋭く響き渡ります


備え付けの木槌で

木の魚を

遠慮気味に鳴らしたのは


真っ白な老人、お二人だった


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