第10話
思えばこの小国同士の小競り合いも、ボディの取り扱いの相違から起きているのだ。
モノのように扱うか、尊重するか。
魂、量子情報については、唯一無比なり、で共通解が出ているのだが、失われてしまうと、限られた回数しかバックアップ出来ないので、むべなるかな、だ。
回数は増やせるらしいが、どうやら承認認可によるものらしく、より大きい、より良い、多くからの、のを取り付けると、自ずから、というのだが、そういうのは見た事がないし、都市伝説におさまっている。
失った先は完全な消滅なので、一時は直接魂を傷つける手段を封じようと画策したものがいたぐらい、魂は重要視されている。
ボディを取っ替え引っ替えしているものも、少しは魂の徳には思い致す。
いったん堕ちてしまえば、ボディのように取り替えは効かない。
快楽主義者も、一線を越えるのはタブーとしているのだ。そこはなんでもアリ、でないのがこのカオスフルな世界においての救いなのかもしれなかった。
立ち入ってみれば、事情はやや複雑だった。
どちらも奴隷制を取り入れている、中央から外れた独立した共和国だ。
隣国同士、交流もある。
互いの、奴隷に対する認識が違っているのだ。
もしもの時のためのスペアとしてか、愛玩するペットとしてか。
この世界、力あるものは約定を結び、限定された範囲内で行動するので、大きく世界を変えることはできない。
例外が一定数の、閾値を超えた承認認可が起きた場合だ。
選ばれしから、力を振るう行使ができる状態となる。
見られているから、知られるから、ズルはできない。
それも力あるものの、大抵はパラゴンと呼ばれる存在たちの責任なのだ。
大体においてパワーバランスからまずそういうことはないから、ちょっとはマシなものたちが自発的に、あるいは雇われて、命令されて動くことになる。
それが俺たちのような連中ってわけだ。
主義主張も違えば、性癖も好悪も違う。
どうやってまとまるのかというと、ボディのランク、経験の差だ。
永いほど、一目置かれ、その言を聞き入れ、同意してくれる。
幸い、俺には古いボディがひとつある。
幼女女仙だ。
力のあるパラゴンだったらしいのだが、どういう経緯かは不明だが弱体化し、俺の主ボディとなった、付き合いの長い契約体だ。
契約体ってのは説明すると長くなるが、端的に言って仕舞えば魂に一番近いボディってこと。
このボディを足がかりに他のを増やしていくって寸法だ。
ボディの増やし方は人それぞれ、同意のあるものもあれば、託されもするし、強奪だってあり得る。もらうものと渡すものになんらかのつながりが結ばれれば、紐づけられれば、過程はなんでもアリ、なのだ。
もちろん、多くのものが正規の手順を踏んでのものだろう。
中には、コレクター、ハーベスター、ロバーと呼ばれるよろしくない、闇に手を染めた悪魔、怪物、犯罪者もいるということだ。
俺はそこんとこはドライな方で、ちゃんと約束を守れるヤツならある程度は付き合ってやる。
たとえそいつが、シリアルだったとしてもな。
馴染みの酒場にたどり着いたのはこのファンタジア世界に潜ってから3日目の朝だった。
いない間に、戦況は大きく変わっていた。
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