第6話
そこは誰からとなく夜の村、と呼び習わされていた。
村といっても、広さはデタラメで、道の宿場のようであり、島まるまるひとつ入ってしまう、いわゆる次元の入れ子多元構造化、はたまたクラインの壺化、エッシャー化しているのだ。
どこにあるかという位置もあやふやで、量子コンピュータでも特定できず推測できるのみで、進化したネットワークのメッシュ上の電子的実在、世界の片隅、あいだとあいだの橋渡し的役割と、ポジションは定まっていなかった。
流れ者が一時的な停留地とすれば、身を隠す潜伏先となったり、中立的なのを利用しての取引場所、次へと移るための中継点と、目的は百人百様。
18禁の物語多奏世界に取り囲まれているのを差し引いても、ありあまるものだった。強すぎる刺激と暴力のサイクロンは村をたびたび撫でつけてくる。
ここに居を構える数匹の龍身が無意識にいなしているので、何もいうことはないのだが、そのどれもが歳が若すぎるというのが懸想されるのだ。
人間でいえば幼年である。
見た目が見目麗しい淑女とはいえ、日がな一日遊びに明け暮れているのはいかがなものか。
ひとり、逆の歳の取り方をしているため、思慮深い少女龍はいた。
ただ、相当変わり者で、芸を極めんとしていたのだが、当人の性格があまりにもおっとりでのんびり屋の楽天家だったため、ギリギリまでナマケモノのように動かないという、村のものからすれば困った側面はありもしたが。
この村の特徴は、村といいながら未来大都市並みの密集した、多層建築にあった。複雑に入り組み、継ぎ足し継ぎ足され、勝手に改築を施され、カラクリ屋敷、奇想建築みたいな様相を呈している。
住んでいるもので迷うものはあまりいなかった。必要性から作り込まれていったから。ただ、日の入りは取り入れを考慮されずに進められていってしまったから、極端に悪かった。
この村が夜の村、と呼ばれる所以である。
荒れ狂うエネルギーの積乱雲っぽい嵐雲もこの暗さに一役買っていた。
暗黒宇宙の次元空間に浮かんでいるので、他次元からのたまの光を当てにするほかない。
それでも覆っているのは夜のアウラ、氣であった。
引き寄せられて、誘蛾灯のように、集まってくる。
それが良きにつけ悪しきにつけ。
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