第92話 学内選抜戦 決勝戦
さて、まず警戒しないといけないのは、まず増えるレイン。
レインを増やさないために、まずは速攻を仕掛ける!
そう思って身体強化全開でレインに突っ込んだ。
「「!!」」
どうやらレインは初っ端からあの魔法を使うつもりだったようで、同じように突撃してきていた。
「「わっ!!」」
危うく正面衝突しそうになって、慌てて横に避けた。
……二人同じ方向に。
「ちょおっ!」
「むおっ!
お互い避けきれずに衝突してしまった。
お互い腕でガードはしていたので、そこまで大きなダメージにはなっていない。
魔道具のダメージ判定も、魔法攻撃のみに反応するよう改良されているから、シールドについてはお互いノーダメージ。
しかし、腕でガードしたとはいえ生身の体は衝突しているので、身体的にはそこそこのダメージを負ってしまった。
「なんで同じ方向に避けんのよ!!」
「それはこっちのセリフ!」
衝突して倒れてしまっていたので、慌てて起き上がる。
……やば、倒れたときに体打ったかも。
なんか足がフラフラするんだけど……。
「……悪いけど、容赦はしないよ!」
「くっ!」
私は結構なダメージを負っているのに対して、レインの方はそこまでのダメージは負ってないっぽい。
そりゃそうか、レインは男子で私は女子。
魔法の力に差は出なくても、身体能力的には差が出てしまう。
くそっ! こんなところで男女差が出るなんて!
「一気に行くよ!」
レインはそう言うと、私に向かって三人に増えながら突っ込んできた。
「やっぱり、そうくるよね!」
私のダメージが回復し切る前に決着をつけるなら、一気に最大戦力を使って試合を決めにくると思っていた。
迫ってくる三人のレインは、どうやっているのかどれも本物に見える。
昔、おふざけでやった分身の術という名の反復横跳びじゃない。
初見だったアリーシャちゃんが混乱するのも無理はないか。
でも、私はすでに見ている。
なので、アリーシャちゃんほど混乱せずに、三体のレインに向かって魔法を放った。
三体同時に攻撃するため、魔力を絞った小さめの魔法だ。
もし本物に当たったとしても大してダメージは与えられないだろうけど、足を止めるなり牽制にはなる。
私は、魔法を連発したあと、すぐに別の魔法を準備した。
そのとき。
「残念」
私の背後から、レインの声が聞こえた。
そして、背後から私に向かって魔法が連発された。
「え!? シャル!?」
観客席からヴィアちゃんの叫び声が聞こえてくる。
本当に、準決勝でアリーシャちゃんがレインを追い詰めてくれなかったら、もしかしたら負けていたかもしれない。
「……え?」
魔法の余波が晴れたとき、レインは勝ち誇った顔から一転し、驚愕した顔になった。
「しょ、障壁?」
そう。
三体のレインに魔法を放ったあとに準備した魔法というのは『魔法障壁』
さっき、アリーシャちゃんは背後からレインの攻撃を受けた。
それはすなわち、突っ込んでくる三体は囮で、本体はその間に後ろに回っていたということだ。
それに気付いた私は、囮に向かって魔法を放ったあと、レインからの攻撃を予測して障壁を張っていたのだ。
そして、障壁に魔法が着弾したあと、すぐに魔力を集め始めていた。
魔法を放ったあとは魔力が混乱する。
私が魔力を集めていることに、レインが気付けるはずもない。
「しまっ……」
「遅いっ!!」
不意を突いて魔法が私に着弾したと思っていたレインは、すっかり油断して戦闘体勢を解いてしまっていた。
慌てて逃げようとするレインだったけど、私の魔法が放たれる方が早い!
「いけえっ!!」
「くっ、そおっ!!」
咄嗟に魔法障壁を張っていたけど、十分に魔力を込めた私の魔法を、咄嗟に張った障壁では防ぐことはできず、レインにダメージが入った。
「そりゃっ! うおりゃっ!!」
「ちょっ! 待っ!」
「待つか! オラあっ!!」
私はこの機を逃さず、一気にレインに向かって魔法を連発した。
直近二試合のように一撃必殺の魔力は込められなかったが、連発することでレインは徐々に防ぎきれなくなっていった。
そして……。
『ビー』
「あー、やられたー」
レインの魔道具から、試合終了を告げるブザーが鳴った。
『勝者、シャルロット=ウォルフォード!!』
「はあっ……はあっ……」
や、やった……。
勝った!
「や、やった……」
勝利の宣言を受けたところでようやく息を吐いた私は、体から力が抜けていくのを感じた。
「あ、ありゃ?」
「! シャルッ!!」
あぁ、そういえば、最初の衝突のダメージ、回復させてなかったわ……。
そんな状態で魔法を受けたり放ったりしたから、ダメージが上乗せされたのかも……。
でも、まあ、これで最後の試合だし、勝ったからいいか。
こうして私の視界は、ゆっくり暗くなっていった。
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