第43話 夏の海を満喫するよ!
皆でワイワイと水着を選んでから数日後、学院は夏季休暇を迎えた。
夏季休暇に入った初日、ウォルフォード家にはデビーとレティが家族を連れて訪れていた。
デビーのところはお母さんと、レティは両親と弟と一緒だった。
皆、初めて来る家だからか緊張していたけど、リッテンハイムリゾートに行けば緊張も解れるだろう。
最初は家族と一緒に行くことをデビーもレティも拒否していた。
ただでさえ旅費等を全額負担してもらうのに、家族まで同行させるなって図々しくてできないと言われたのだ。
でも、他は皆家族同伴なので、デビーとレティだけ家族を呼ばないのは可哀想だとなんとか説得し、同行してもらうことができた。
ラティナさんは、お兄さんが同じ使節団にいるんだけど、残念ながら仕事を抜けられなくて一緒に来ていない。
なので、唯一単独での参加だ。
ここに、私たちの親戚であるクロード伯爵家の面々が揃った時点でリッテンハイムリゾートにゲートで向かう。
実は、アリス叔母さんもゲートは使えるんだけど「親戚は一緒に行動しなくちゃ!」という謎の行動原理によって、いつも親戚一同が揃ってからの移動となっている。
従兄弟のスコールなんて「なんで一回ゲートでここに来て、またゲートでリッテンハイムリゾートに行かなきゃいけないのか意味が分からない」って本気で悩んでいた。というか現在進行形で悩んでいる。
だって、直接行けるものね。
まあ、多分叔母さんのこだわりかなんかなんでしょ?
答えなんてないから悩むだけ無駄だって言ってるのに、いつも首を傾げている。
こうしてリッテンハイムリゾートに到着した私たちは、まず毎年私たちを招待してくれるリッテンハイム侯爵に挨拶をする。
今の侯爵様はパパの仲間のユリウスさんで、彼も英雄の一人。
本当に魔法使い? っていうムキムキマッチョな人。
ユリウスさんを見るたび「魔法使いって一体……」っていう謎の葛藤に苛まれる。
そして、侯爵様に挨拶をしたあとは、各家族に割り振られたコテージに向かう。
途中でクロード家とウォルフォード家で別れるのでアリス叔母さんたちと別れた私たちは、ウォルフォード家に割り振られたコテージに向かう。
すると、そのコテージの前に人がいた。
「……なにしてんの? ヴィアちゃん」
「なにって、シャルが来るのを待っていたのですわ」
なぜかコテージの前で待っていたヴィアちゃんは、そう言ったあとキョロキョロと周りを見回した。
「……お兄ちゃんならいないよ」
「はあっ!?」
ここには、私とショーンとママしかいない。
パパとお兄ちゃんは、今日同行しなかったのだ。
「ど、どういうことですのっ!?」
「どうもこうも、仕事だよ」
お兄ちゃんも、去年までは学生だったから初日から参加していたけど、今年はもう社会人。
仕事の都合で初日から参加できないことだってありえるでしょ。
っていうか、それが起きてる。
「そもそも、そっちもオーグおじさんとエリーおばさんは?」
「お母様は一緒に来ていますが、お父様はお仕事です。夜に来るそうですわ」
「ヴィアちゃんとこも一緒じゃん。諦めなよ」
「ぐぬぬぬ……折角、シルバーお兄様に私の水着姿を見せて悩殺しようと思っていましたのに!」
「あぁ……結構際どいの選んでたもんなあ……」
「あ、ぼ、僕、着替えて皆のところに行くね!」
私がヴィアちゃんとしょうもない話をしていたら、水着の話の辺りで恥ずかしくなったのかショーンがさっさとコテージに入ってしまった。
中等学院生には、ちょっと刺激が強すぎたかな?
「……シャル? ヴィアちゃん?」
ショーンのことを微笑ましいものを見る目で見ていたら、後ろから底冷えする声が聞こえてきた。
「「はい!!」」
「ショーンは、まだ中等学院一年生ですよ? 揶揄うのもいい加減にしなさい」
「「はい! 分かりました! すみません!」」
「まったく、水着で相手を悩殺なんて、本当にエリーさんに似ていますね、ヴィアちゃんは」
「え? お母さま?」
「ええ、エリーさんも、高等学院時代に陛下と海に来たときは、それは際どい水着を着られまして、陛下を悩殺しようと……」
「あ、あれは!! アリスさんとリンさんに着せられたんですわよ!!」
「わっ! ビックリした!」
ママがエリーおばさんの過去の話をしだしたら、どこから現れたのかエリーおばさんが話に割り込んできた。
「ちょっとシシリーさん! 少し目を話した隙に、ヴィアになんてことを吹き込んでいますの!?」
「ええ? だって、事実……」
「シシリーさん! もしそれ以上仰るようなら、シシリーさんの恥ずかしい話をシャルにしますわよ!?」
「……」
「……」
ママとエリーおばさんの母二人は、しばらく見つめ合ったあと、なぜかガッチリと握手をした。
私たちは、一体なにを見せられているんだろう……?
「そうですね。夏は開放的になって、ちょっぴり羽目を外してしまうものですものね」
「ええ、そうですわ」
ニコニコ笑ってそう言うママとエリーおばさん。
一体、過去の夏になにが……。
気になるけど、教えてくれないんだろうなあ。
「まあいいや、ヴィアちゃん、着替えて海行こうよ」
「そうですわね。シルバーお兄様がいないのなら、普通の水着にしますわ」
「そうして」
今日は中等学院一年生も一杯いるし、同級生の男子もいるんだから是非そうして下さい。
ということで、水着に着替えた私たちはビーチに集合した。
こうして見ると……子供だけで凄い人数だな。
まず、私たち高等魔法学院生の十人。
ショーンやスコールたち中等学院一年生組の八人。
あと、さらにその下の弟妹たち。レティの弟もここに入る。
総勢二十人以上。
お兄ちゃんは、これを全部面倒みていたのか……。
「こうして見ると、シルバーさんがいかに偉大だったのか分かりますね……」
集まった子供たちを見て、レティがしみじみとそう言った。
「だから言ったじゃん。シルバー兄は凄いって」
マックスが改めてそう言うと、デビーも同意した。
「言葉だけじゃ想像できてなかったというか、実際見ると凄い人数なのが分かるから、余計に尊敬するわ」
「ふふん」
デビーの賛辞に、なぜか胸を張るヴィアちゃん。
「まあ、今日はそのお兄ちゃんは仕事でいないんだけどね」
私がそう言うと『ええぇ~っ!!』と弟妹たちから文句を言われた。
「お兄ちゃんはもう仕事してんの! もう学生じゃないんだから、いつでも遊んでもらえるなんて思ったら大間違いなんだからね!」
それでもブーブー言うチビッ子たちを私たち年長組で構い倒してやった。
具体的には、マジカルバレーでけちょんけちょんにした。
「シャル姉、大人げない!」
「おーほっほっほ! 負け犬の言葉なんて聞こえませんことよ!」
負けて涙目になっている従兄弟のスコールに、わざと悪女ぶって煽ってやったら、全員からスパイクされた。
全員同時攻撃はズルイ!
っていうか、レインとデビーも混じってなかった!?
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