第12話

 攻略本についての、今までの検証結果をノートにまとめてみる。


『攻略本はおそらく本物』『未来予知をしている』『選択肢以外の行動をすることも可能』『ヒロインは雪月風花の4人』『主人公は僕?』『初期好感度』


 さて、1つ1つ考えていこう。


 まず、攻略本は本物だ。イタズラでは説明できないことが、多数起きている。バスケットボールの飛んでくるタイミングを、あそこまで完璧に合わせることは不可能だろう。


 そして、未来予知。風音かざねふうから電話がかかってくることも、この攻略本は予言していた。だから、この攻略本に書いてあることは、おそらくこれから先に起こることなのだろう。


 そして、割と重要なこと。『選択肢以外の行動を取ることも可能』というもの。


 例えば『花咲はなさきはなと出会ったときの行動』である。

 あの時の僕は、無言という行動を選択した。しかし無言などという選択肢は、攻略本には書かれていなかった。そのことから、選択肢以外の行動を選ぶことも可能であることがわかっている。

 さらに補足すると『選択肢を選んだつもりでも、その行動ができるかどうかはわからない』ということだ。


 月影つきかげさんと出会ったとき、僕はバスケットボールを避けるという選択肢を選んだ。しかし結果は直撃。僕は無様な醜態を晒すことになった。


 選択肢を選んだからと言って、自動的にその行動をするわけではない。ちゃんと僕の意思で行動し、発言をしなければならないのだ。


 次。ヒロインは雪月風花の4人。『雪海ゆきみゆき月影つきかげつき風音かざねふう花咲はなさきはな』の4人だ。


 どうやら幼馴染である莉杏りあんは攻略対象ではないらしい。まぁ僕は莉杏りあんに対して恋愛感情を抱いていないので、問題ない。莉杏りあんも、僕を恋愛対象としては見ていないだろう。


 次。主人公は僕? ……これはどうなのだろう? わからない。だけれど、この攻略本の予言が僕の身に降り掛かっている以上、主人公は僕だと考えたほうが自然かもしれない。


 そして最後。初期好感度。


 この項目について、攻略本を読んでみる。


 ◆

 


 ヒロインの4人、雪月風花には主人公に対する初期好感度が割り振られている。それまでの主人公との関係や、性格上の相性等で数値が決められている。

 それぞれの初期好感度は以下の通りである。


雪海ゆきみゆき:7

月影つきかげつき:15

風音かざねふう:37

花咲はなさきはな:0



 ◆


 花咲はなさきさんは0か……まぁ当然だな。この中では1つ後輩だし、まったく面識がないのだから。

 雪海ゆきみさんは今年同じクラスだし……まぁ初期値は多少あるらしい。

 

 わからないのが、月影つきかげさんと風音かざねさん。


 月影つきかげさんは……僕に対して特別な気持ちを抱いている、ということではないんだろうな。誰に対しても、最初から好感度が高い人物なのだろう。攻略本でチョロいと言われるだけはある。……ってこれは悪口になるか?


 特にわからないのが……風音かざねさんである。なんで風音かざねさんだけ初期値37もあるんだ?

 ……攻略本によると、風音かざねさんは、小学校で僕と一緒のクラスだったことがあるらしい。しかし、それだけで好感度37も行くのか? 僕は完全に風音かざねさんのことを忘れているし……


 ……わからんな……まぁ攻略本を読み込んでいけばわかるか? それとも、風音かざねさんに連絡して直接聞けばわかることだろうか。

 

 とりあえず風音かざねさんの好感度問題は後回しにして、他のところを読んでみる。


 ◆



 告白可能なほど仲良くなるのは、好感度80を超えたところからです。まずは好感度80を目指しましょう。



 ◆


 ……ふむ……このあたりを読む限り、好感度100とかはあくまでもやりこみ要素であるらしい。 100にすれば壁紙が手に入るとか書いてあるけれど……本当にギャルゲーの攻略本みたいだな。


 それにしても……これは本当に良いものを手に入れた。これがあれば、僕も現実を攻略できるかもしれない。いや、ゲームであるならば、攻略できないはずがない。


 誰を攻略しようかなぁ……好みでいうと実は月影つきかげさんなのだけれど……


 そんなことを思いながら、ペラペラとページをめくっていたときだった。


「……なんだこれ……」


 見逃せない一文を、見つけてしまったのだった。


 ◆



 まさか、あのキャラクターが自殺してしまうとは、誰も思わなかっただろう。



 ◆

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