●tRICK bAG(00/11/15・高円寺・JIROKICHI)
二度目のtRICK bAGライブである。前回同様、8時スタート。打合せをしているふうなリラックス状態から、そのまま音出しをして始まったのが、このバンドのテーマともいうべき、アール・キングの「トリック・バッグ」。ジャズィーなアレンジを交えつつ、心地よいグルーヴで聴衆を包み込む。
ウォーミング・アップが済んだところで、一気入魂、ぶちかましたのが、「悪い星の下に生まれて」。アルバート・キングの熱演で知られる、ブッカー・T・ジョーンズとウィリアム・ベルの佳曲だ。モリのファイヤーバードVもへヴィーなリフを繰り出し、ソロでは泣きまくる。
3曲めはドリフターズ(もちろん本家本元、米国のR&Bグループ)のカヴァーで「ドリフティン・ブルース」。この曲からはモリはテレキャスター・タイプのオリジナル・ギターに持ち替える。このメイプル・ネックのギターが実にクリアーな音色で、幅の広いサウンドを生み出してくれる。
続いてB・B・キングの「ビューティシャン・ブルース」。ビューティシャンとは美容師のことで、いわばアメリカ版「髪結いの亭主」の歌ですとホトケのMC。
お次は、アルバム「LAST EXIT」にも所収の「ビッグ・レッグ・ウーマン」。ファンキーなビートにからむ、コジ氏のシンセ・アレンジが冴える。その他、「セイム・オールド・ブルース」などディープなソウル・バラードと、ビート・ナンバーを交えて約1時間、あっというまに1stセットが終わってしまった。
その間、やはり目立っていたのが、モリ氏のこれぞヴォーカル・バッキングのお手本!と褒めたくなるような堅実なプレイと、終始笑顔を絶やさないにもかかわらず、猛烈なスピードで鍵盤上をかけめぐったコジ氏のプレイだった。このふたりのスーパー・テクニシャンを両翼に従えると、ホトケ氏のヴォーカルの渋さが、いよいよ際立ってくるのである。
約30分余りの休憩をはさんで、2ndセットが始まる。
まずはホワイト・ブルースの雄、バターフィールド・ブルース・バンドのナンバー「イフ・ユー・リヴ」から。モリはフェンダー・テリー(メイプル・ネック)に持ち替え、泣きのスライド・ギターを聴かせる。そしてシャッフル・メドレー。こういう、レパートリーの引き出しの多さでは、tbは並ぶものがない。
またオリジナル・ギターに戻しての曲は、ベン・E・キングの「ヤング・ボーイ・ブルース」という、大向こうをうならせるような選曲。モリの余裕綽々のソロのカッコよかったこと!
この晩の聞きものといえば、次に森園がソロで歌った「アフター・ミッドナイト」だろう。「コケイン」の作曲で知られるJ・J・ケールの作品。というより、同じクラプトンのカバー・ヒットのほうが有名かも。どちらかといえばケールに近いスタイルで、静かに燃え上るような歌、そしてギター・ソロを聴かせてくれた。シブいぜ、モリ!
お次はミッドナイトつながりで(?)「ミッドナイト・スペシャル」。CCRのカバー(「ロカビリー・リバイバル」あたりに入ってたんではないかのう)でも知られるこのR&Bの名曲を、歯切れのいいtb味にさらりとアレンジして聴かせてくれた。もう、「うんうん」と聴き手を唸らせっぱなしの絶妙な選曲じゃ。おっさんファンには、こたえられんっす。
かと思えば、「スモール・タウン・トーク」のような、まったりした味の小曲をはさんでくるし、その次にはハードにドライブする、ステイタス・クオー顔負けのブギーで攻めてきたりする。ストレート、カーブ、シュート、フォーク、なんでもござれの万能投手状態なんである。
2ndセットは一時間を超え、1stをさらに上回る、激しいピアノソロ、ギターソロの連続。モリのスライドも天空を飛び回るがごとき、フリー・フォームで泣き喚く。
すでに時間は11時をまわろうとしていたが、ステージからメンバーが消えてもだれも帰ろうとしない。拍手で5人が呼び戻される。
アンコールは2曲。ことにラストの「ストーミー・マンデー」の素晴らしさといったら! モリにB・Bの生き霊が憑依したかのようだ。決めのフレーズひとつひとつに聴衆の溜め息がわきおこる。本当に、総毛立ちそうなプレイだ。ギター弾きなら、このありさまを観て、嫉妬しない奴はいないはずだ。
すべてが終わった。モリはまるでアマチュア・バンド時代みたいに、おどけて「終わり、終わり」と叫んだ。さっきまでの「二の線」の自分に照れたかのように。
でも、やはり、すげえ。その一言しかなかった。
この最強のライブ・バンドとの数時間を共有できたことに、その夜、その場の誰もが酔いしれているのだった。
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