青年藩主編 人物紹介 第三十話まで

◆松平頼方(徳川新之助、加納源六、のちの徳川吉宗)1684年生まれ

 本作の主人公

 現時点で14歳、予定外の将軍綱吉へのお目見えにより葛野藩主となる。

 親藩 紀州藩 藩主 徳川光貞の四男。

 母親は於由利の方。

 加納源六の時には、自分の生い立ちにトラウマを持ち、人との関係性において素直になれなず距離をとってしまうことが多かった。反面、人の愛情を求める傾向にある。

 徳川新之助となり、実の親(特に母親)と対面を果たした事から、その性質は落ち着きをみせる。

 

 幼き頃に比べ、幾分肩の力が抜けてきた。出来る事、出来ない事など現実が見え始めつつも理想を諦めきれていない。

 目下、信用できる部下探しと理想の藩統治方法を模索している。


◆徳川光貞

 紀州藩 第二代藩主。徳川家康の十男 頼宣の子

 英邁誉れ高く、政務にも熱心。法令を整備し、治水にも心血を注いでいるため民にも人気を博す。

 一六九八年に嫡男の綱教に家督を譲り隠居する。

 頼方が思い違いをしていた捨て子騒動だが、真相は正しくもあり誤りでもあった。高齢を理由に健康を願って捨て子としたわけではなく、将軍位を巡る権力闘争から守るため、徳川の家から離れさせていた。



◆於由利の方 (侍女 お秀のみ一名)

 新之助の生母。出生は定かでないほど身分の低い出自のため、側室筆頭のお萩の方に目の敵にされている。

 本人の性質は気弱で争いを好まず、自ら主体的に動くことはない。

 光貞との関係も湯女として世話をしている際に、言い寄られ身分差もあったこともあり、流されるまま関係を持った。その時に新之助を身籠ったため、側室となる。

 湯女上がりでは外聞が悪いので、藩士 巨勢こせ氏の娘となっているが、藩内で知らぬものはいない。


◆加納政直

 紀州藩 家老。とある事情により於由利の方が生んだ新之助(当時は加納源六)を育てる事になった。

 新之助は実の親に捨てられたと思い、心に傷を負っていたため、養父のまさとしと深く交わることは無かった。藩主の子という遠慮もあったが、次第に反抗期も重なり手がつけられない状態になってしまった。何も手を打たず静観することにした為、更に溝を深めてしまった。その影響により、新之助の住まいでもある加納屋敷の使用人は、新之助に積極的に関わるものがほぼ皆無となった。これが新之助が屋敷に寄り付かなくなる要因となる。

 政治的には中庸。派閥は組まぬが敢えて言うなら藩主派。家老の家柄としては中位である。

 先の藩主 光貞が隠居したため本人も隠居するつもりでいる。



◆水野知成 1680年生まれ

 紀州藩 家老 水野太郎作家 水野忠知の庶子。

 光貞の小姓として仕えていたが、四男 新之助が光貞の子と認知され、城勤めをする事になった際に側付きに任命される。

 新之助が城内の職務に従事している時以外は、常に側にいる。ちなみに新之助といない時は、木刀を振っている。流派は田宮流。

 田宮流の源流は、神夢想林崎流で始祖は林崎甚助である事から、新之助の師である黒川甚助に勝手に親近感を抱いている。

 山波さくらの誘拐騒動では八人いた浪人を一人で六人打ち倒すほどの腕前。会話などで前に出る事は少ないが剣の腕は一流。


◆黒川甚助

 海部あま郡 加茂村の代官。出世レースとは無縁で、長いこと現場にいる叩き上げのベテラン。視察の旅で加茂村に訪れた新之助に、租税法についての講釈を行い、人柄、見識に優れる彼は師と仰がれる。昔は新之助に似て熱血漢であった事を述べている。元来の性質は清廉で慈悲深いため、新之助の信条に近い。

 初老の武士で戦国の気風覚めやらぬ時代の生まれのため古風な喋り方をする。

 彼の人生において水害で家族を失っていた。家を残すことを諦めていたが、歳の若い頼方や水野知成、巳之助などと触れ合ううちに黒川家を残す事を決心した。

 頼方の推挙により、武家の血筋の河原者、巳之助を養子に迎え、一人前の代官にするべく厳しく指導をしている。



◆黒川巳之助

 海部あま郡 加茂村の代官 黒川甚助の養子。捨て子で河原者として暮らしていたが、頼方が新之助時代に河原の視察をしている際に出会う。捨てられた時に武家の出身である証を有していたそうだが、現在は紛失。

 生まれ持った利発さと臆病さを持ち合わせている。それが慎重さと思慮深さを生み新之助や黒川甚助に気に入られる。



◆宮地六右衛門

 紀州藩士。庭番の家柄。宮地家の当主、24歳。宮地日葵の兄。

 宮地家の特殊技能は手裏剣術、印地打ち。

 性格は生真面目で世話焼き。頼方が部下探しの一環で出会った宮地日葵に紹介され出会う。

 紀州藩の庭番は過酷なお役目柄、特殊技能を有することを知った頼方がスカウトに動いた。しかし、当時父親の紀州藩主 光貞の直臣であったため断る。残念がる頼方の様子を見た六右衛門は友人を紹介する。


◆宮地日葵

 紀州藩士 宮地六右衛門の妹。11歳。印地打ちの名手。

 日ごろは半刻ほど駆けて山へ花を摘みに行く。その花を城下で道売りして生計を助ける。団子をこよなく愛し、花の売上が良いと通いなれた団子屋で団子を食べて帰る日々。

 当初、頼方が街の視察をしている時に知り合い、庭番の特殊技能や最下級の武士の生活について話す。興味を持った頼方に兄の六右衛門を紹介したり、友人の山波さくらを引き合わせたりした。

 頼方の印象では猫のような子。元気で天真爛漫。太陽のようでもあり台風のようでもある。


 印地打ちの腕は飛びぬけており、山では印地打ち(石投げ)で鹿を仕留めるほど。本人は、女のため石扱わせてもらえないことに不満を持っている。鉄球や手裏剣なら猪も仕留められるらしい。


 その腕で、頼方の窮地も救い、敵の忍者を仕留めた。気をよくした彼女は自らの印地打ちの流派、日葵流印地打ち(自称)を起こす。


◆山波政信

 紀州藩士 山波隆信の次子。24歳。鉄砲の名手。

 普段は屋敷の物置小屋を改造し、一人で暮らす。本人曰く離れらしい。

 冷静沈着、皮肉屋。本の虫で離れの壁を埋め尽くすほど本を集める。しかしお金がないため、日葵と同じように山へ入り竹を取り竹簡を作成して写本するほど。

 妹であるさくらを溺愛し、妹が絡むと思考も喋り方も阿呆になってしまう残念さ。

 妹を大切にしている事には違いなく、頼方との関係を不安視している。そのため、頼方と関係が進展しないよう妨害工作をしている。最近は少しずつ認めるような雰囲気が出始めている。



◆山波さくら

 紀州藩士 山波隆信の子。手習いの師匠。13歳。

 宮地家と同じように生活が苦しいため、歳のわりに早く、手習いの師匠となる。

 宮地日葵が団子をご馳走される際に、何故か連れてこられ頼方と出会う。

 その際、彼女の見識に気が付いた頼方は男でないのが惜しいほどと洩らす。それ以降、顔を合わせる機会が増え少しずつ二人の距離が縮まる。誘拐事件以降は、積極さが増え、距離の縮まり方が進んだ。


◆徳川綱教(第三代 紀州藩主)

 先の藩主、光貞の長子で嫡男。英邁な父と同様、優秀さが内外に知れ渡り、将軍位候補に名が上がるほど。この事により尾張藩の妨害を誘因する事となる。本人は気が付いていないが、暗殺計画は度々計画、実施されているが今のところ被害は出ていない。


◆徳川頼職

 先の藩主、光貞の三男。紀州を本拠とする湯浅の血筋の母を持つ。綱教のお控えであったが、無事に成人したため、五代将軍 綱吉にお目見えし、高森藩を立藩する。

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