Who is he or she?

@WaTtle

第1話 俺の身体

 俺が産まれる前、人間界と魔界が共存していた。

 だから、小さい頃から様々な種族と関わってきた。

 大なり小なりトラブルに巻き込まれてはいたが、それでも俺は強くなっていた。

 強くならざるを得なかった。

 なぜなら――。

『近藤蒼次、聞こえますか? 近藤蒼次?』

 俺を呼ぶ通信が聞こえた。

「なんですか? また、起こったのですか?」

『よかった。葛飾区で魔導テロ組織が動いているのが見えました。データを送ります』

 送られたデータを見た。

 それには、幾多の魔族がグループで爆弾を運んでいる映像だった。

 葛飾区までは目と鼻の先だ。

 俺ならすぐに着く。

「了解。魔導テロ組織の壊滅に急ぐ」


「よし、全員で爆弾を配置するぞ」

「わかってる。でも、いつ爆破するんだ?」

「人通りの多い――」

 おッ、いたいた。

 上から眺めてやるか。

 いや、予断を許してはおけんか。

「全員そこを動くなッ!」

 牽制をしておくか。

 火の魔法を詠唱しておくか。

「誰だッ!?」

「あ、あいつはッ!」

「なんだ、知っているのかッ!?」

 おッ、知っている奴がいたか。

 自己紹介の手間が省けたな。

「あいつは、近藤蒼次ッ! 年は18ッ! あらゆる武術を会得し、魔法の勉学も欠かさない天才児だッ! 蒼い瞳に冷たい釣り目が印象的だッ!」

「なんだとッ!?」

「それに、奴の蒼い槍がその証拠だッ! 俺たちの仲間はみんなあいつにやられちまったッ!」

「あんな女みたいな綺麗な顔した奴にッ!?」

 おい、言い過ぎだぞ。

 紹介してくれた奴は軽くいなして、けなした奴は半殺しにしよう。

 まずは爆発させておこうかな。

 あんたらの乗っている車を。

 警告しておくか。

「命が惜しかったら、その車から離れるんだな」

「な、なにをッ!?」

「フレアボムッ!」

 大きな爆発音と共に車が爆発した。

 まぁ、ただ魔法で燃料に火を点けただけなんだけどな。

 怪我人は出ても、死人は出ないだろう、多分。

 あッ、まずい。

 爆弾を積んでたの忘れてた……。

 まぁ、火力を落としてよかったよ……。

 これで、だいたいの奴が倒れたかな。

 とにかく、地面に降りて確認しておくか。

 死んで、ないよね?

「よくも、よくも、俺の計画をッ!」

 あッ、半殺ししたかった奴が生きてた。

 いや、死人を出すつもりなかったんだけどさ。

 さて、どう出るかな?

「これを喰らいやがれッ! 死ねッ!」

 AK-47か。アサルトライフル相手なら、槍術で充分だな。

 弾丸の雨をかきわけ、銃口に穂先を突き付けてぶっ壊す。

 さて、どうやって半殺しにしようか。

「ひッ! ひいッ! 化け物ッ!」

 戦意は失っているか……。

 だが、俺は半殺しにすると決めたんだ。

「さて、まずは火炙りにしてやるか……」

「寄るなッ! 寄るなぁぁぁぁぁッ!」

 あれ? どっちが悪者だっけ?

 まあいい、雷の魔法でいたぶってやる。

 さて、半殺しに――。

「喰らえッ!」

 爆弾ッ!?

 しまったッ!

 まだ意識の残ってた奴がいたのかッ!

 まずい、防御結界を張る時間が――ッ!

 大きな爆発音が轟いた。

 俺が咄嗟に出した雷の魔法は奴らに直撃した。

 相討ち……、いや、生きている。

 俺の身体が頑丈なのもあるが、なんというか、威力が弱い気がする。

 まあいい。

 意識のある奴はもう残ってないだろう。

 あとは、本部に連絡を――。

 ぷるん。

 うん?

 胸に違和感があるぞ?

 なんというか、柔らかな感触がある。

「どうなってんだ……?」

 あれ?

 俺の声がおかしい、女の声になっているぞ?

 まさか、胸を揉んでみる。

 間違いない、女の胸だ。

 男の胸にはない柔らかさがあった。

 ちょっと待ってッ!?

 俺の大事な部分はッ!?

 俺はそこへそっと触る、までもなく、反応が来た。

 さっき自分の胸を触ったせいだろうか。

 とにかく、わかったことが、いや、嘘だ、信じられない。

 鏡で見ようッ! そうすれば――ッ!

 お、女だ。

 鏡に美女が映っている。

 どう間違えても、男のあれが残っている女には見えねぇぞ。

 まさか、さっきの爆弾の影響かッ!?

 まずいッ!? さっき投げた奴を問い詰めようッ!

 俺は雷に撃たれて意識を失った爆弾を投げた奴を起こす。

 しかし、いくら揺さぶっても、叩いても、反応がない。

 もしかして……。

 脈を測る。

 脈がない。

 死んでいる……。

 殺してしまった……。

 殺さず捕える俺の流儀に反する、っていう問題はどうでもいいッ!

 中途半端な女の身体になった俺の身体を戻す方法が見つかんねぇッ!

 なんてことをしたんだッ!

 俺はどうやって生きていけばいいんだッ!!

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