第11話 ツアールからのステップ


 バーローの滝を遡上した俺たちは、そしらぬ顔でイススマンス砦の横を抜ける。

 突如として砦の敷地内に現れた俺達に対して、モブ兵士たちが騒ぎ立てていたが、知ったことではない。 


 レーザリア王国への入国。

 それさえを果たすことさえできれば、密入国であっても何の問題もない。

 

 なんせ、この世界はマロサガだ。


 マロサガでは……徒歩で国境線を幾万回と越えた。

 だが、一度たりとも問題となったことなどなかった。


 だからきっと、セーフのはずだ。

 たぶん。


 ……セーフだよね?



 さっきから、砦をダッシュで走り去る俺達。


 だが、そんな俺達に向かって、銅鑼や法螺貝の音が異常なほどに鳴り響いている気がするが……。


 ……逃げきれれば、おそらくは大丈夫なはずだ。



 そのまま全力で北上した俺たちは、レーザリア王国の首都レーザンヌシティではなく……王国街道沿いの宿場町ツアールに向かう。

 ここには作中最強の攻撃力を誇る、両手剣を入手するためだ。

 


「ここは……武器屋ですね」

 ツアールの武器屋の前に立つ俺に対して、クローネが言った。


「この宿場町で用があるのは、ここだけです」

「そうなのですか? 他の国の宿場町を訪れたのは初めてですが、ここは随分と栄えているようです。他にも、もう1件武器屋もあるようですが……」


 俺は諭すように、クローネに語る。

「"ギャラリア"装備が優秀なので、突出した装備以外を買う必要はありません。この店には……戦闘回数が475回になる前に時間経過ポイントを通過していない場合に限って最強の両手剣が販売されているのです」

「?!?!」


 困惑する彼女を横に、俺は話を進める。

「476回を超えてしまいますと、とある人物の手にわたります。その場合には、殺してでも奪い取るしか方法がなくなってしまうのです……」

「なんということでしょう。そこまで貴方がおっしゃるのでしたら、その通りなのでしょう。この武器屋で、武器を購入するのですか?」

「そうなります」

 クローネと話しながら武器屋に入ると、俺は店の親父に声をかけた。


「すまんが、"アイスブレード"を売ってくれ」

「おいおい、3万Gだぜ。金もってんのかよ? 上半身裸で胸にポーションつけてる男が金をもってるわけないか」

 値踏みするような親父の視線に、俺は言い返す。

「ああ。たしかにキャッシュはないが、この"ギャラリア・アーマー"を6領と交換という話ならば、どうする?」


 俺が懐から突如として"ギャラリア・アーマー"を取り出すと、親父は唖然とする。

「すげえ。一体、どこから出したんだ」

「細かいことは気にするな」

「いや、誰でも気にするだろ……。まあいい。……すげえ! この"ギャラリア・アーマー"は全部本物じゃねえか!」

「ああ。この俺が偽物など持ってくるわけがないだろ。ちゃんと装備して使用可能だからこそ、売値がつくということは理解している」

「すげえ自信だな……。まあいい、未使用の新品の"ギャラリア・アーマー"6領との交換なら、こっちにとっては御の字だ。バルフォア帝国から外に出てくることなんて、なかなか無いからな」

「ああ。お互いがウィンウィンの取引になって何よりだ」


 そうして、俺と店の親父は固い握手を交わしたのだった。





 俺は、"アイスブレード"を片手に意気揚々と店をでた。


 その刀身を見ながらクローネが言った。

「しかし、凄まじい業物ですね……。見るものの心までも凍り付かせそうな凄みを感じます」

「ええ。熟練度が上がると、強烈な全体攻撃を放てるようになります。さすが、古代民族が作っただけのことはあります」

「古代民族ですか……。実在するかどうかも定かではないとか」

「いえ。ローザリアの東部に位置する山脈に集落をつくって、普通に生活しています」

「?!?!」

「さて、次は……移動手段の確保になります」

「いきなり話を変えますね……。ですが、たしかに移動手段の確保は重要ですね」

「次は、


 そうして、俺たちは草原地帯にある遊牧民の村に向かった。




 ローザリア王国の首都ローザンヌシティからローザンヌ北部に向かう途中、草原地帯に入ってほどない地域に遊牧民の村はある。

 

 俺は遊牧民の村を訪れると、一目散に村の中心にある石柱の近くに位置する美少女に声をかけた。

「お、お嬢ちゃん……。その馬を譲ってくれないかい……ハァハァ」

「それは流石に最低です……」

 クローネと少女が若干引きぎみだが、俺にとっては、この子から馬を入手できるかどうかが今後のターニングポイントなのだ。


 それに、ただ単に少女に声をかけているだけだ。

 若干、事案に発展しかねない気がするが、何の問題もない……はずだ。


「失礼。ここまでの旅で、だいぶ息が切れてしまっていたようです。お嬢さん、今一度、落ち着いて話を聞いてもらっていいですか?」


 俺は、目の前の少女に改めて話しかけた。





------



???「おやっ? この"ギャラリア・アーマー"……。シリアルナンバーが同じような……。まさか……!!?」





■■あとがき■■

2022.11.20

 すみません。ちょっとリアル仕事やばすぎて、体力が……。

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泥から生まれたという男は、バグと仕様を駆使して世界を救う!! テリードリーム @Terrydream

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