第5話 光魔法
全身を"ギャラリア・シリーズ"で固めた俺は、悠然と帝都の街路を歩く。
防御も固めたので序盤の雑魚モンスターぐらいだったら、ノーダメで戦える。
それに、"ギャラリア・ソード"というバグ技の申し子を擁しているため、火力の面でも不安はなくなった。
ひとまず装備は整った。
だが、まだまだやるべきことはある。
「次に……、序盤に帝都でしておきたいことといえば……。光魔法の習得だな」
帝都には、マロサガで唯一光魔法を習得できる神殿が存在する(ただし、最終局面で訪れるとある場所は除く)。
幾つかの有用な魔法があるので、この機会にぜひ覚えておきたいところだ。
なぜなら……。
なんと!
帝都の神殿は……中盤のイベント以降、魔法書の販売をしなくなってしまうのだ……。
「いつまで販売されているか分からんからな……。いまのうちに買っておこう」
そうして、俺は、光魔法を習得するために神殿へと向かったのだった。
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「ここか……」
市街の喧騒から少し外れた、静謐な西部地区。
そこに、木々に囲まれた神殿があった。
マロサガと全く同じ位置にあるから、まったくもって道に迷わなかった。
脳みそ溶けるぐらいやりこんだだけあって、地理が頭のなかに入っている。
本当に助かる。
そんなことを思いながら、俺は、重厚な石造りの神殿に足を踏み入れた。
神殿に入ると、正面奥に設置されている祭壇が目に入った。
俺は、祭壇に向かった。
祭壇に近づくと、女性の司祭が立っているのが分かった。
やはり、マロサガと一緒だな。
ここの神殿の司祭は、女性だ。
そして、中盤のイベントで悲惨な目にあうのだ。
……。
実際に目の前にいる柔和な表情を浮かべる人が、そんな可哀そうなことになるとは……。
妙齢の女性が、悪の教団の手にかかるなど、不憫な話だ……。
「ようこそ。光魔法の習得をしたいのですか」
俺が物思いに耽っていると、司祭が声をかけてきた。
「ええ。よろしくお願いします」
「それでは、習得を望む光魔法に合わせた寄付をお願いいたします」
やはりか……。
マロサガ同様、魔法の習得にあたっては相当額の寄付をしなければならないようだ。
地獄の沙汰も金次第。
神を崇めるにも資本が必要。
宗教家も霞を食っているわけではないので、やむをえないのかもしれないが……。
何の役にも立たない壺や多宝塔を売りつけられたり、選挙活動に協力させられるのにくらべたらマシか……。
閑話休題。
悩んだ末に、俺は、司祭に次の4つの魔法書をオーダーした。
"回復光":1500G
"光学迷彩":1500G
"サンビーム":5800G
"サンブレード":9200G
数ある光魔法の中から、この4つを俺が選んだ理由。
それは、いずれもが、他の属性魔法で代替できない強みをもっているからだ。
回復魔法、全体バフ、全体攻撃魔法、光属性単体固定ダメージ。
……これだけ利便性の強い魔法が揃っていたら、そりゃ悪の勢力は潰しにくるよね……。
司祭に代金を払うと、財布がだいぶ軽くなった。
これで残金は3421Gか……。
だが、これだけあれば、船代や宿代ぐらいなら苦も無く出せる。
"ギャラリア・アーマー"や"サンブレード"を255個に増やして適宜売却すれば、いつでも
何の問題もない。
……だが、やはり司祭の行く末は気になる。
俺にできることなど何もないのだが、せめて忠告だけはしておいた方がいいだろう。
俺は、魔法習得の礼を終えた後、去り際に司祭に一言だけ申し添えた。
「どうか、ゆめゆめ身の周りの安全にご配意ください」
ハッとした表情の司祭に対して、俺は無言でうなずいた。
どうやら、無事に伝わったようだ。
これで、少しでも彼女に救われると良いが……。
そうして、俺は、次のステップに移ることにした。
いよいよ帝都を出発し、帝都近郊の森に向かうことにしたのだ。
そこに隠れ住んでいるキャラクターを仲間にするために。
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「大変。あの方、ストーカーかしら……。ガードマンを雇わないと……」
去り行く俺の背中を見ながら、司祭が呟いていたことを俺は知らなかった。
■■あとがき■■
2022.07.31
更新遅くてごめんなさい!
仕事が忙しいだけじゃなく、"LIVE A LIVE"のリメイクにかかりっきりだったんです!
これから中世編に突入です!
引き続きご指導よろしくお願いします!
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